ロックンロールで泣ける幸せ

黒猫チェルシー『NUDE+』
2011年05月25日発売
ALBUM
黒猫チェルシー NUDE+
びっくりした。こんなバンドだったっけ? こんなに奥行きと広がりがある音を鳴らすバンドだったっけ? いや、いいバンドなのは知っているし、個人的にもことあるごとにドキドキさせられてきたが、このファースト・フルアルバムの開けっぷりとロックンロールとしての精錬されっぷりは何だ。力強いポピュラリティと、本物だけがもつ色気や切なさ。言葉にすると陳腐だが、たとえば往時のローリング・ストーンズやRCサクセションが持っていたものに通じる眩しさだ。オールドスクール? 違う、ほかにいないからそう見えるだけだ。今の黒猫が放つ芳香は、鈍感になりがちなロックンロールの本能を刺激し呼び覚ます。“YOUNG BLUE”や“北京ベイベー”で瑞々しいセンチメントを奏でたかと思えば、“ヘビーローション”ではダムドみたいな脳天直下パンクで《ローション ローション ヘビーローション》とあらぬ方向に振り切れる。文学性と攻撃性と美しさとイタさ、すべてが生々しく放り出されている。聴いて、泣いて、笑ってほしい。この国にはこんなにかっこいいロックンロールがあるんだぜ。(小川智宏)
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