巨人による、新たな冒険の続き
ブライアン・イーノ『ドラムス・ビトウィーン・ザ・ベルズ‐ブライアン・イーノ・アンド・ザ・ワーズ・オブ・リック・ホランド』
2011年06月22日発売
ALBUM
「エレクトロニカの可能性と自由」とその要旨をイーノが語った昨年の前作は、いわば彼が提唱した“アンビエント”以降の拡散した音響のフィールドを自身の手で再構築した作品だった。対して今作は、「詩と声の音楽的解釈」というテーマの下、10年来の知人である詩人のリック・ホランドとのコラボレーション作品。つまりイーノのサウンドに“語り”をのせた、「音響+詩」の実験である。もっとも前作と同様、イーノが奏でる音響は悠然として構えがなく、アンビエントやピアノの調べからダブステップを意識させるブロークンなトラックまで多様性に富んでいる。興味深いのは、その詩がイーノを含め様々な人種の声で吹き込まれている点だ。南アフリカ、イタリア、ウクライナなど英語を母国語としない声を織り交ぜ構成されている。そこに窺える志向は、かつてイーノがデヴィッド・バーンとの共作『ブッシュ・オブ~』で試みた文化横断的な民族音楽史のアプローチとも地続きのものだろう。非西欧文化圏と既存の音楽形式やテクノロジーの融合を意図した、イーノいわく「第四世界の音楽」という構想。そのバリエーションとも聴けて面白い。(天井潤之介)
2011.06.26 20:30