制作途中で生死の境をさまようような大病を患い、凄絶な闘病の末ようやく完成した前作『ソングス・インA&E』から3年半ぶりの新作。ウェールズ、LA、レイキャビクと、2年かけてレコーディングしたという力作だ。しかもレコーディング後、またも病を患い、半年間の自宅療養のあと完成させたという。
闘病がアルバムの内容に大きな影響を及ぼしたかどうかは微妙だが、本作は、なにか覚悟を決めたような、これが遺作となっても構わないというようなたたずまいがある。迂回や寄り道がなく、これぞスピリチュアライズドと言いたくなるような、そんな王道感が満載なのだ。
メロディアスであり、ゴスペルであり、サイケデリックであり、ノイズであり、そのすべてがある。生楽器中心のこぢんまりとした弾き語り曲、ノイズにまみれたケオティックな曲から、コーラスやオーケストラをまじえ壮大に盛り上がるドラマティックな極まで、さながら過去のスピリチュアライズドのいいとこどり、集大成といった観があるのだ。前作では1曲しかなかった6分超えの大作が5曲も収められ、アルバムの至るところにドラマがあり、全編がクライマックスと言っていいほど。たとえばローリング・ストーンズの"無情の世界"がそうであるように、元はシンプルでちっぽけな曲を、とんでもなくスケールの大きな感動的な楽曲に仕立ててしまう力量は、本当にすさまじいものがある。
集大成感があるぶん、これといった新味がないことも確かだが、『レット・イット・カム・ダウン』以降やや停滞感も漂っていただけに、本作での充実は嬉しい。(小野島大)