スノウフレイク・ミッドナイト『ディザーターズ・ソングス』以降のマーキュリー・レヴの作品を振り返ってみた時、個人的にどうしてもそれは下降線を辿っているとしか思えなかった。ドラッギーなギター・ファンタジスタだった彼らの表現は、いつしか諦めにも似た甘いムードだけになっていた。サイケというサウンド・フォーマットは精神の高揚と逃避に直結しているだけに、ともすると簡単に堕落していく。しかし、この新作で彼らはそんな悪循環を一旦断ち切ろうとしたのかもしれない。最初は『POINT』時代のコーネリアスみたいだなぁなんて漠然と思い、ギターが全然鳴ってないけどグラスホッパーは何をやってるんだ?なんて訝しがってみたのだが、M4辺りから彼らが「本気」だとわかってきた。アンビエントでミニマルな音響を土台に配し、なんとなく醸成される高揚のムードを拝し、慣れないエレクトロニクスと格闘しながら、もう一度最初から始めようとしている。
9月29日には本作と対を成すもう1枚の新作の無料ダウンロードが始まる。両方聴かないと彼らの真意は量れないかもしれないが、少なくとも本作はここ数年のMRとしては最も真摯な1枚だと思う。(粉川しの)