天然? 天才? たぶん両方!

ヴィタリック『レイヴ・エイジ』
2012年10月31日発売
ALBUM
ダンス・ミュージック・ファンにとっては、01年のデビューEP以降の一連の12インチ、もしくは05年のファースト・アルバムの衝撃が忘れられないヴィタリック。仏人プロデューサー/コンポーザー、パスカル・アルベー・ニコラスによるワン・パーソン・ユニットだ。

09年に発表されたセカンドは、彼の言葉によれば「リラックスしたもの」。人目を意識せずスタジオ・ワークに凝ったものだった分、クラブ・ミュージック的なインパクトは弱かった。でも良かった! “炎上”を意味する『フラッシュモブ』というタイトル/コンセプトもジャストだったし、ストレンジ極まりない音像が、ぼくにとってはポスト・パンク期の狂ったような(当時“インダストリアル”と呼ばれた)サウンドを思いださせてくれた。

このサードでは一転、ライヴもしくはフロアを強く意識。ヴォーカル・パートが一気に減って(奇妙な味もばっちり残しつつ)パワフルに! で、タイトルは『レイヴ・エイジ』。70年代末以降の(異端)ダンス音楽史を一気にふりかえる……などという意図はたぶんないだろうが(笑)そう評したい存在感!(伊藤英嗣)