【インタビュー】そのグルーヴに踊らされる人が急増中! 結成からわずか1年でメジャーデビューを果たした現役大学生バンド・luvの全貌を解き明かす

【インタビュー】そのグルーヴに踊らされる人が急増中! 結成からわずか1年でメジャーデビューを果たした現役大学生バンド・luvの全貌を解き明かす
2003年生まれの5人が集まったバンド、luv。そのグルーヴに踊らされる人の数がものすごいスピードで急増している。去年6月に結成、わずか1年でワーナーミュージック・ジャパンと契約を交わして、今年7月に配信シングル“Fuwa Fuwa”でメジャーデビュー。ネオソウルを基盤にしたサウンドや、サンプリングの使い方からは5人の音楽への深い愛が見て取れるし、日本語の発音を自由に扱いながら心地よいメロディに乗せるリリックからは、何層もの意味やメッセージ、さらには今の世代・時代らしい心情を感じさせるところが興味深い。

Hiyn(Vo・G)はソロプロジェクト・ミヤケ武器としても活動していて、すでにWEST.に“膝銀座”、三宅健に“mydoll”の楽曲を提供した実績がある。しかも、luvのOfeen(DJ)らと「ノリで始めた」というバンド・Geloomyも、1本目の動画からざわつかせた(実際、私のTikTokのおすすめにも流れてきて、何者なのか気になってディグってしまったほど)。DIYで作っている映像作品からも、アートやカルチャーを愛する真心を感じ取れる。時代に歓迎される美学を持っているのが、Hiynでありluvであると言えると思う。

luvの全貌を解き明かす、rockin’on.com初インタビューを行った。

インタビュー=矢島由佳子


Hiynに「Spotifyを契約しろ」って言われて、契約して気づいたら自分が聴いてた曲は全部消されて代わりにネオソウルとかばっかり入れられてて(笑)(Ofeen)

──バンドの基本的なところから聞かせてもらいたいんですけど、最初に、ひとりずつ自己紹介の意味も含めて、自分のルーツ──luvの演奏に影響していると自覚しているものもそうでないものも含めてと、自分の担当楽器にいつから触れていたのかを教えてもらえますか。

Rosa(Key) 僕は小学3年生くらいからクラシックピアノを習い始めて、そこからずっとクラシック音楽と馴染みの深い生活をしてきました。クラシック音楽の中でもいちばん好きで特にルーツとなっているのは近現代のクラシック音楽で、たとえばストラヴィンスキー、ドビュッシー、ラヴェルとか、ちょっと新しめのクラシックです。その頃は、クラシック音楽だけじゃなくていろんな音楽が各国で勃興している時代でもあったので、いろんな音楽性が入り乱れ始めた、音楽の過渡期で。このバンドの自分の立場としても、クラシックだけじゃなくて他のジャンルと融合したことをやっていきたいなと常々考えてます。

Ofeen(DJ) 僕のルーツとしては、小さい頃からお父さんお母さんが70年代のソウルとかを家で流していて、スティーヴィー・ワンダージャクソン5マイケル・ジャクソンとか、もう口ずさむくらい聴いてました。それが今のDJのサンプリングに影響していると思います。がっつり音楽に入り込んだのは大学に入ってからで。最初は王道のポップスばかり聴いていたんですけど、Hiynに「Spotifyを契約しろ」って言われて、契約したら「ちょっと(スマホ)貸して」ってなって、気づいたら自分が聴いてた曲は全部消されて代わりにネオソウルとかばっかり入れられてて(笑)。正直、最初はあまりいいなと思えなかったんですけど、日本人でそういう音楽をやってる人を聴いてみようと思った中でKan Sanoさんの『Ghost Notes』というアルバムを聴いたらいいなと思って。Kan Sanoさんが「僕はネオソウルが大好きだ」みたいなことを言っていたので、「Kan Sanoさんの視点でもう1回聴いてみよう」と思って聴いてみたらかっこいいなと思うようになって、という感じですね。

Hiyn (Ofeenが)僕らの前の世代の人たちがやっていた、僕らがかっこいいと思うJ-POP──SuchmosSANABAGUN.Yogee New WavesD.A.N.ceroとかも聴いてたから、これならいけると思って、僕のルーツである90’sの音楽を入れまくった(笑)。

──ちなみに、いちばん好きだった「王道のポップス」は?

Ofeen ウルフルズ。それは残してくれました(笑)。

──王道のポップスを好きであることはluvのポップ性を担保するうえでとても大事だと思うし、しかもウルフルズもソウルでありファンクですからね。Hiynさんは?

Hiyn 原体験は父親がエリック・クラプトンB.B. Kingジェームス・ブラウン(以下、JB)とか、ブラックミュージックをずっと流していたことで。僕は特にJBにハマり、J-POPとJBとか海外の音楽を並行して聴くようになって、その中でジャミロクワイに出会って90’sをディグるようになりました。ギターはずっと家にあったんですけど、がっつり始めたのは中3で。最初は父親に“スタンド・バイ・ミー”の4つのコードを教えてもらって、弾きながら歌ってました。ギターの練習としてソエジマトシキさんのYouTubeを観ていた中でトム・ミッシュを知って、そこで完全に僕のギターはトム・ミッシュの雰囲気をまとうようになりました。そこからトム・ミッシュのルーツを辿って90’sに逆戻りして、ディアンジェロエリカ・バドゥとかに出会って、ギタリストでいうとアイザイア・シャーキーとかも耳コピしてました。

Zum(B) 僕は、父親がメタル好きで家の中でスリップノットKOЯNとかがめっちゃ流れてて。「僕はこっちじゃない方向へ行こう」と思って高校で軽音部に入り、最初に東京事変にハマってベースをコピーしてました。そこからVulfpeckに出会って、ベーシストのジョー・ダートがめちゃくちゃかっこよくて、彼のルーツを辿る中でジャクソン5とかブラックミュージックのベースもコピーするようになって。音楽というよりはプレイヤーに惹かれてベースを続けてきましたね。家で父親がレッチリも流していたんですけど、大きくなってから出会った時はやっぱりベースにすごく感動しました。

Sho(Dr) 僕は小学5年生くらいの時に、マンションもクラスも一緒だった友達に「バンドやろうぜ」って言われて。親から水筒に貼られたMAN WITH A MISSIONのステッカーを見て、「知ってるやろ?」って(笑)。「お前ドラムな」ってほぼ決定事項として言われたから、電子ドラムを買ってもらって、自分の家でギターとドラムだけでセッションみたいな遊びをしてました。本格的にドラムをやりたいと思うようになってから両親がレッスンへ連れて行ってくれたんですけど、そこがすごく幅広く、ラテンとかジャズからポップスまですべて網羅している人が教えているところで。高2くらいまで通っていて、そこでいろんなジャンルを叩き込まれました。高校はとにかくドラムが叩きたかったのでビッグバンドをやってるところを目指して、3年間、部活ではビッグバンドをやってました。Hiynくんとはその高校で出会っているんです。Hiynくんからジャミロクワイとかを聴かせてもらった時に「これ、家で流れてたやつや」ってなって、昔から自分はブラックミュージックを聴いてたんやってその時に気づいて。最近はブラックミュージック、ネオソウルとかをずっと聴いていて、ディアンジェロの『Voodoo』をこよなく愛してます。ドラムのクエストラヴさんを目標に……「目標」というのもおこがましいくらいですね。研究させていただいております(笑)。

──luvはHiynさんが集めたメンバーですよね。どんなことを思ってこの5人を集めたんですか?

Hiyn 最初は4人だったんですよね。しかもベースは別の人がいたんですけど、ライブ当日にキャンセルされて、それで所属していた大学のジャズ研で上手いと思っていたZumに電話をかけて。そこから僕、Ofeen……最初、Ofeenは鍵盤で……Sho、Zumの4人で始まりました。そのあと、ガチ天才キーボーディスト(Rosa)が現れて、僕が90’sが大好きで憧れていたからこそバンドにはDJは必須だと思っていたので、センスのあるOfeenにDJをやってもらって。

──その頃、ソロとしてミヤケ武器は始めてました?

Hiyn 水面下でやってましたね。今もミヤケ武器、luv、もうひとつのバンド・Geloomyとか関係なく自分の好きなことを作ったりはしていて、そういうノリで作っていたのがluvの最初のほうの曲です。

──luvは、90’sの音楽をバンドでやりたくて組んだという感じですか? ソロプロジェクトでプレイヤーを集める形ではなく、なぜバンドだったのでしょう。

Hiyn 僕の性格上、ひとりですべてを背負って人前に立つことは向いてないというか。リーダーシップがあるタイプでもないし、それよりはバンドメンバーがいて、それぞれがフィーチャーされるほうが個人的にやりたいことですね。

【インタビュー】そのグルーヴに踊らされる人が急増中! 結成からわずか1年でメジャーデビューを果たした現役大学生バンド・luvの全貌を解き明かす

luvとしてまだライブを始めて1年くらいなので、傍からすれば「若造が出てきて、トントン拍子」みたいに見えると思うんですけど……まじでいろいろあったな(Hiyn)


──ミヤケ武器も、引き続きやっていきたいという感じではある?

Hiyn そこは自分と相談で、様子見……でも僕の気持ちとしてはもう「luvで」という感じです。

──Geloomyも登場した時からずっと気になっていたんですけど、Geloomyを始めたモチベーションはなんだったんですか?

Hiyn Geloomyは、Ofeenもメンバーですけど……マジでノリやな。

Ofeen 遊びでやろう、みたいな感じ。

Hiyn 友達とゆるく頑張っていこう、みたいな。

──映像のセンスもいいし、ショート動画も1本目からザワついていたけど……友達と遊びで曲作って、遊びで映像を撮ろう、くらいな感じ?

Hiyn そんな感じです。

──luvを始める時は、最初から志が高かったのか、それともGeloomyのようにノリみたいなテンションだったのか、そこはどうだったんですか。

Zum ノリ……徐々に方向性が見えてきたというか。

Sho こんなことになるとは思ってなくて。正直、大学生がバンドやるくらいの感覚ではありました。途中で覚悟を決めましたね。

──luvをやっていくという覚悟を決めたのはいつ頃だったんですか?

Hiyn 「段階踏み、腹括り」みたいな(笑)。

Sho そんな感じ(笑)。

Hiyn ちょうど“Fuwa Fuwa”のタイミングで、みんなガッとなった感じですね。

──luvは結成から1年でメジャーデビューもして、めちゃくちゃ順調というふうに傍から見られると思うんですけど、実際の体感としてはどうですか?

Hiyn それなりにしんどいこともあり──。

Ofeen 内容は詰まってたけど、一瞬でしたね。

Hiyn luvとしての初ライブが去年の9月で、まだライブを始めて1年くらいなので、その辺も苦労しつつ。傍からすれば「若造が出てきて、トントン拍子」みたいに見えると思うんですけど……まじでいろいろあったな。早いぶん、諸々が一気に詰まってるし、まだ粗さもあるし。それを今どうにか頑張ろうという感じではありますね。

──言ってしまえば、バンドとしてまだ粗さがある状態だと自覚しているのに、自分が思ってる器より大きなチャンスや大舞台がきてしまっている、みたいな感覚?

Hiyn 今まではチャンスがきた時にノリとかでカマせたところもあったんですけど、やっぱりそれじゃあ……安定して出せるように、っていうのが今の課題ですね。

Sho でも間違いなく、今には今の良さが俺らのライブにあると思う。もちろん技術面とか、きれいに演奏できているかという面で見たら、劣る部分はあるかもしれないですけど、ライブをしていても僕らにしか出せないパワーがあることを感じるので。そこはお客さんに見てほしいところですね。

──結果的にワーナーからメジャーデビューしましたけど、早い段階からシーンでの注目度も高くて、他からも声はかかっていたんじゃないですか。

Hiyn ……結構。ありがたいことに。

──ひとつ上の世代にはメジャーでやる人もいればインディーでやってる人もいて、いろんな参考例がある時代だと思うんですけど、luvがメジャーを選んだ理由は?

Hiyn しっかりluvで音楽をやって、音楽で食べていきたいってなった時に、自分らでは無理な範囲のところまで広がるきっかけになるのがメジャーかなと思って。「SNSはあるけれども……」という感じはありました。

──さらに訊いちゃうと、その中でワーナーの決め手はなんだったんですか?

Hiyn マジで言うと、「人」ですね。俺らが何もわかってない中、音楽でどうやっていくかということを、いちばん俺らが納得できるように説明してくれました。

Ofeen ビジョンが見えた感じでした。「どうしていったらいいんやろ」「この先どうなっていくんやろ」みたいな、本当に何もわからない状態だったんですけど、方針とか大まかな道筋をちゃんと細かく説明してくれたのがワーナーさんだったので、安心して任せられるなと思いました。

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次のページ“Fuwa Fuwa”は「スローライフ的なノリで行こう」ということを押し出したくて。「愛はあとから追いかければいい」「ゆっくり行こうよ」ということを、メンバーにこの曲で伝えたかった(Hiyn)
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