すでに世界中で大きなニュースになっているが、昨日、ザ・ローリング・ストーンズが新作『Foreign Tongues』を7月10日リリースすると発表した。同時に新曲も公開され、その直後には、NYブルックリンの歴史的建造物Weylinにて記者会見が行われた。会場に足を運んだので、そこでメンバーたちが新作について語っていた内容を以下、要約したい。
この記者会見には数百人が詰めかけ、世界各国の記者に加え、レオナルド・ディカプリオや、この日初上映された“In the Stars”のMVで、デジタル技術で60年代の姿に若返ったミック・ジャガーと共演している女優のオデッサ・アジイオン(『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』出演)らセレブも来場。さらに、今作と前作『Hackney Diamonds』を手がけたプロデューサーのアンドリュー・ワットや、アルバムジャケットを担当したNYのアーティスト、ナサニエル・メアリー・クインの姿もあり、非常に豪華なイベントとなった。また司会を務めたのは、アカデミー賞司会でも知られるコメディアン、コナン・オブライエン。極めて貴重な場でありながら、終始ジョークが飛び交う、活気に満ちた催しとなった。
バンド登場の瞬間。
個人的にもっとも胸を打たれたのは、キース・リチャーズの言葉だった。
「『まだこの先に何かあるはずだ』って思うから、こうしてやり続ける。それが俺たちのやり方なんだ。とにかく俺たちはただ“作り上げる”ことそのものが好きなんだ。心からね。いつだって“もう一歩先”があると思っている」。
60年以上のキャリアを持つバンドでありながら、その言葉には、なお新しいものを生み出そうとする純粋な衝動と、新作に向けた強い意欲が滲んでいた。
アルバム予告編。
▪️ポール・マッカートニー、ロバート・スミス(ザ・キュアー)とコラボした経緯について。
今作には、ポール・マッカートニー、ロバート・スミス(ザ・キュアー)、チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、スティーヴ・ウィンウッドが参加している。
ミック「ポールとは、前作の時にセッションをやったんだよ。その時レコーディングしたものが今回収録されている。
今回のアルバムには(全14曲中)ロンドンで録った10曲があって、残り4曲は以前のセッションから来てるんだ」
ミック「ポールは、スタジオの隣にいた時、『俺も入れてくれよ』って感じだったんだ」
ロニー「そう、彼は本当に俺たちと一緒に演奏したかったんだよ。“これで俺も、ローリング・ストーンズと演奏したって言えるぞ”ってね(笑)」
コナン「ロバート・スミスは?」
ミック「ある日ロンドンで、自分のボーカル録りをしにスタジオへ行ったら、背中を向けて立ってる男がいたんだ。長いガウンを着ててね。振り返ったら、口紅を塗りたくっていてね(笑)。
俺たち、それまで会ったことがなかったんだよ。だから俺が『君は、ザ・キュアーのロバート・スミスだよね?』って聞いたら、『そうだよ、でも会うのは初めてだね』って。
それで俺が、『せっかくここに来たんだから、何かやった方がいいだろ』って言ったんだ(笑)。
コラボって、時々そんな感じで始まるんだよ(笑)。それでバック・ボーカルで歌ってもらった」
ロニー「こうやっていろんな才能ある人たちが手伝ってくれてる話をしてるなら、スティーヴ・ウィンウッドのことも忘れちゃいけないよな」
▪️チャーリー・ワッツが参加した曲も1曲収録
ミック「(2021年に)LAでチャーリーと一緒に録ったんだ。“Hit Me in the Head”っていう、すごく速いパンクロックの曲だよ。チャーリーって、ああいう超高速の曲でも本当に素晴らしい演奏をするんだ。前のアルバムにもチャーリー参加曲(“Mess It Up”, “Live by the Sward”)があったけど、今回も1曲入ってるんだよ」
その他の曲ではスティーヴ・ジョーダンがドラムを担当。
キース「彼は、もともとチャーリーが自身が推薦したんだ」
ロニー「チャーリーがスティーヴにバトンを渡したんだよ」
キース「チャーリーはずっと、スティーヴ・ジョーダンに託してきたんだ。俺にまず最初に、The X-Pensive Winosでやる話を俺に持ってきたしね。それで一緒にやるようになったのが、たしか2020年か2021年頃、チャーリーが体調を崩した時だったんだ。
その時チャーリーが、“スティーヴ・ジョーダンだ”って言ったんだよ」
ミック「彼、本当に音がデカいんだ、スタジオでもね(笑)。(今回レコーディングした)小さい部屋でもすごかったよ。でも、だからこそ機能したんだ」
ちなみに、レッチリのチャド・スミスが参加しているということは、チャドがドラムを叩いている曲もある、ということだと思う。
▪️アルバムのレコーディングは、わずか1ヶ月でロンドンのMetropolis Studios行われた。
ミック「俺たちはそこを“緑あふれるチズウィック”って呼んでたんだ。イーストエンドのど真ん中にいたわけでもなかったしね。昔は、発電所の建物だった。前にもそのスタジオでは作業したことがあって、昔から馴染みの場所だったんだけど、実はその部屋でレコーディングしたのは初めてだったんだ。
その部屋はかなり小さかった。でも、ちゃんと十分な広さはある。ただ巨大ではないっていう感じでね。
だから全員が視界に入るんだ。目を動かせば、そこにみんながいる。スティーヴ(・ジョーダン)も、キースも、ロニーも、部屋の全員がすぐ見える。
誰が何をやってるかも、何を考えてるかも、全部すぐ分かるんだよ。“これをやりたい”“次はあれだ”っていう流れも自然に見えてくる。
だから、その部屋は本当にうまく機能したんだ。音も雰囲気もすごく良かった」
▪️幅広いスタイルのアルバムになったことについて。
ミック「今回のレコードで面白いと思うのは、ストーンズってバンドのあり方そのものなんだ。
よく“もう証明するものなんてない”って言われるけど、確かに、ストーンズってロックバンドだ。でも、同時に、バラードも、カントリーも、ダンスミュージックもできる。
つまり、あらゆるスタイルを横断できるバンドなんだよ。ひとつのスタイルに閉じこもっていない。
長い年月の中で、俺たちは本当にいろんな音楽を愛してきた。そして今でも、あらゆる音楽が好きなんだ。
その感覚が、そのままレコーディングのやり方や、書く曲に表れているんだよ」
キース「まだ自分たちの中に何かが残っている可能性は十分にあると思っている。俺たちはいつも”まだ先があるはずだ”って思いながらいつもそれを探しているんだ」
▪️“Ringing Hollow”はカントリー・ソング
ミック「キースと俺は、本当に若い頃からカントリーミュージックが大好きだったんだ。
ずっとハンク・ウィリアムスとかを聴いてたし、実際によく演奏もしてた。
でも、ああいう人たちを単純に“真似してた”わけじゃない。そのスタイルを自分たちの中に吸収していったんだよ。
だから、“Ringing Hollow”みたいな曲――ある意味、アメリカへのラブソングみたいな曲だけど――そういうものを表現したい時、ロックのやり方で表現したいとは思わなかった。
カントリーという形でやる方が、ずっと自然だったんだ」
▪️“Some of Us”はキースがメインボーカル
キース「まあ、そうだと思うよ(笑)。時々こういう作り方をするんだ。あれはかなりスローな曲だよね。そして俺たちは本当にそこを突き詰めて作業する。つまり俺たちは本当に、“まず音を置いてみる”ところから始めるんだ。俺たちがやるのは、いったん余白というか、静けさの中に入っていくことなんだ。そこから何かを外に出してみる。そしてスタジオに入ってから、それがどう育っていくかを見る。
つまり、今ここにあるものを見つめることが大事で、そこから磨いていく。
うまくいくものもあるし、いかないものもある。でも大半はうまくいく。もし最初にダメでも、2回目にはうまくいくかもしれない。
そうやって、ずっと続いていくプロセスなんだ」
コナン「うまくいかない場合はどうするのですか?全員が“これはダメだ”って思うのか、それとも1人は良いと思ってて、他の2人は違うと思ってるとか?」
キース「全部あるよ(笑)。だから“レフェリー”を呼ぶんだ。ほら、あそこに座ってる。審判役をね(笑)(プロデューサー、 アンドリュー・ワットを指す)あいつが俺たちの尻を叩いてくれるんだよ(笑)。“ロックンロールは最高だ!”ってね」
▪️“Beautiful Dalilah”はデルタ・ブルース
コナン「“Beautiful Delilah”は、本当に美しい曲で、まるでデルタ・ブルースみたいな響きがある素晴らしい曲です。すごく好きなのは、曲がフェードアウトしていくところで、あなたたちの笑い声が聞こえることです。みんな本当に楽しんでるのが伝わってきます。今回のアルバム全体から感じるのもそこです。この段階になっても、あなたたちはまだ“音楽をやる楽しさ”を本気で味わってる。そういうことですよね?」
ミック「うん、まあ、ほとんどの時間は楽しんでるよ(笑)。
でも同時に、やってることにものすごく集中しなきゃいけない時も多いんだ。特に、その5分間――つまり曲の瞬間瞬間を、本当に意味あるものにしなきゃいけない。だから、すごく楽しい。でも同時に、ものすごい集中力も必要なんだよ。もちろん、ちゃんと仕上げなきゃいけないしね。
でも本当に楽しかったよ。今回よかったのは、制作がダラダラ長引かなかったことだと思う。4週間は4週間だけど、昔に比べたら全然長くないんだよ」
キース「自然挑発的だったしね」
ミック「そう。昔は何か月も何か月もスタジオにこもって、ほとんど外にも出なかったからね(笑)。まあ、それはそれでまた別の作り方なんだけど」
▪️惜しみないギターソロ?!
ロニー「俺が言いたいのは、もっとソロが欲しかったってことなんだ」
ミック「いや、最初に完成版を聴いた時さ、ロニーがうちに来てミックスを聴きたいっていうから、14曲全部一緒に聴いたんだ。そしたら、ロニーが、『すごく気に入ったよ、このアルバム。本当に好きだ。でも……俺のソロがあんまりないな』って言ったんだ(笑)。それで俺が、『いや、お前の弾いたらソロは全部入ってるよ』って」
キース「好き放題弾いてるよ(笑)」
ロニー「俺たち惜しまず弾いているよ。そこが大好きなんだ」
▪️ミックの1968年かというボーカル、キースのリフ、ロニーのキースとの絡みについて
コナン「ミックの声が、まるで1968年みたいです。まったく衰えていないし、ものすごい力強さがある。どうやって保ってるですか?」
ミック「まあ、1968年にたくさんドラッグをやってたからね。その効果が出るまでこれだけ時間がかかったってことさ(笑)。でも秘訣は練習だと思う。ちゃんと練習し続けなきゃいけない。それくらいシンプルなことなんだ」
コナン「今回のリフも本当に印象的で最高です。ああいうリフって、考えて作るのですか? それとも自然に浮かんでくるものですか?」
キース「いろんなバンドをやってきたけど、リフっていうのは“向こうからやって来る”ものなんだよ。アイデアの断片みたいなものはいくらでも頭にあるんだけど、“リフ”そのものはないんだ。ああいうのは向こうから降ってくるものだからね。無理やり作ろうとしてもダメなんだよ。本当に奇跡みたいなものだよ」
コナン「ロニー、あなたたちの演奏は、本当に素晴らしい。キースがオープンGなのは有名ですが、あなたはオープンEですよね。あの絶妙な絡み方って、どうやって見つけていくのですか?」
ロニー「幸運だったのは、俺がオープンEを弾いて、キースがオープンGを弾く、そういう“余白”みたいな空間を作れたことだね。ちょうどその中間に、俺たちだけの居場所みたいなものがあるんだ。俺たちはそれを“古代の織物”みたいな演奏って呼んでる絡み合いがあるんだ。時々、うっかり交差しちゃうこともあるけどね!」
▪️これだけのキャリアがありながら、アルバムを通して流れる切迫感について。
キース「俺たちは何をやるにしても、どんな時でも、ただ座って“自分たちについて話してるだけ”なんてことはできないんだよ。それが俺たちのやり方なんだ。ただ座って、“前にやったこと”について話していたいわけじゃないんだよ。『まだこの先に何かあるはずだ』って思うから、こうしてやり続ける。それが俺たちのやり方なんだ。とにかく俺たちはただ“作り上げる”のが好きなんだ。心からね。それに、いつだって“もう一歩先”があると思ってる」
ロニー「もし誰かが曲を持ってきたら、俺は挑戦するのが大好きなんだよ。今回のアルバム全体の空気感も、まさにそこなんだ。“もっとハードルを上げよう”っていう挑戦の感覚だね。俺たちは昔から野心的だった」
▪️アルバムジャケットについて
ミック「これはナサニエル・メアリー・クインっていう、有名なニューヨークのアーティストが描いたんだ。たしか今日ここにも来てくれているはずだ。そう! それに彼の奥さんも」
ナサニエル「これは、バンドの旅路を融合させて表現したものなのです」
コナン「これが好きなのは、全然“ツルッと綺麗”でも、“グラマラス”でもないところなんです。むしろ真正面から掴みかかってくる感じがあります」
ミック「コンピューター生成じゃないから、本物なんだよ」
すでに公開されている音源
“Rough And Twisted”
“In the Stars”