ニンジャ・チューンが誇るサウンド・クリエイター、ボノボことサイモン・グリーンの通算5作目。大雑把にいえば、コールドカットの先鋭的なトラックメイクとアモン・トビンの芸術性、さらにシネマティック・オーケストラの映像感覚に優れた音響造形を備えた才能で、3年前の前作『ブラック・サンズ』はセールス的にも世界的に高い評価を得た。それに続く本作では、エレクトロニック・ミュージックとしての深みを極め、映画的想像力も喚起させる情感豊かな世界観を作り上げている。アンビエント、エレクトロニカ、ダウンテンポ、ベース・ミュージック、バレアリックetcと多彩に構築されたサウンド・テクスチャー。そしてボノボといえばゲスト・ヴォーカルの起用であり、昨今のインディR&Bとも共振するソウルフルなバラードやサンプリング/チョップなど様々なアプローチを織り交ぜ、音像と歌の美しいマリアージュを見せている。なかでもハイライトは、敬愛するエリカ・バドゥとのコラボレーションが叶った“ヘヴン・フォー〜”だろう。2ステップとグリッチのカクテルに溶けるエリカの甘いスモーキー・ヴォイス。陶然としてしまう。(天井潤之介)