イントロが鳴り響いた瞬間に聴く者を日常から引き離してスタジアム・レベルの多幸感へ導くような〝ポンペイ〞。ハイブリッドなビート感の中を雄大に流れていく〝バッド・ブラッド〞の憂いの旋律……本国で3月にリリースされたデビュー・アルバムの今作がUKアルバム・チャート1位を獲得し、ミューズやトゥー・ドア・シネマ・クラブのツアー・サポートを務めるなど、すでに13年UK台風の目としての存在感を放ちまくっている「シネマティック・ロック・バンド」=バスティル。ロックの狂騒感とは別のところから巨大な高揚感を描き出す音の質感はコールドプレイを彷彿とさせるし、超多重コーラスで未曾有のスケール感を構築していく手法は「ミューズ以降」を強く感じさせる。が、〝ローラ・パーマー〞という曲まであるくらいのデヴィッド・リンチ映画好きであるソングライター=ダン・スミスが描く音楽は、水より透明なアンサンブル&メロディも超人的なギター・プレイ&絶唱も必要としない。街を生きる孤独な僕らの想いに、孤独なまま大きな翼を与える「人間の音楽」としてのマジックがここにはある。サマソニ来日も目前!(高橋智樹)