女たち、愛しうる限り愛せよ

阿部真央『貴方を好きな私』
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ALBUM
阿部真央 貴方を好きな私
シングル『貴方を好きな私』で予告されていた「愛の痛み」路線が大爆発した阿部真央の最高傑作。声のテクスチャーがもはや尋常ではないというか、熱気で輪郭が歪んで蜃気楼のようにゆらゆらしている。曲のフォーマットもバラードからディスコ、デスメタル風まで振幅が激しく、どのトラックも「内容」がスタイルを凌駕しているのが素晴らしい。

真っ先に思い出したのは椎名林檎の20代の頃の作品群。恋愛の挫折と不可能、不調和や失望を極限まで内圧された精神状態で表現する方法は、音楽のすさまじい強度と引力を引き出す。若き林檎がスタイリッシュな諦観を仄めかせていたのに対し、阿部真央はまだまだ「成仏」なんかしない生々しさでたたみかけてくる。ラブソングがここまで凄惨になるのは歌う主体が並はずれて知的でアーティスティックな女性だからで、そこまで対象との一体化を切望しない鈍い女性だってたくさんいる。対象たる男が、女との精神的な一体化を望んでいないと気付いたのは、私の場合ずいぶん年をとってからだ。高級な性であるがゆえに苦しむ女の「業」を痛感。(小田島久恵)
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