やはり天才は何歩も先を行く

アンナ・カルヴィ『ワン・ブレス』
2013年10月23日発売
ALBUM
デビュー作から2年、ホステス・クラブ・ウィークエンダーの初回にも出演し破格のパフォーマンスを繰り広げたアンナ・カルヴィ。技巧力はもちろん、短いセットで完璧に世界観を作り上げ、クラシック、ジャズ、プログレといったあらゆるサウンドの融合を、音源と対になるようなダイナミズムで描いていた。そんなわけでブライアン・イーノやニック・ケイヴを魅了するという彼女の才能が手に取るようにわかったのだが、このセカンドはすごい! なかでも“キャリー・ミー・オーヴァー”は、アフリカン・ビートとクラシックとロックがアヴァンギャルドに絡み合い、それでいてアンナ流の品性を保ったままポップ・ソングとして完結しているという凄すぎる1曲。エレクトロも導入されたりして、あえて言うならマリア・カラスやエディット・ピアフのパッションを注ぎ込んだ今様のロックと言ったところだが、よく引き合いに出されるセイント・ヴィンセントetcよりもむしろルーファス・ウェインライトやシガー・ロスなどに近いドラマティックさがある。と言いつつ、とにかくアンナ・カルヴィでしかないので聴いて衝撃を受けてもらいたい。(羽鳥麻美)