この軽やかさ! この開放感! ……至福だ。ceroから届いた初のシングル『Yellow Magus』がもう、素晴らしい。再生ボタンを押して一発でノックアウトされる、ポップスのマジックが宿っているのだ。音楽的バックグラウンドの広さ、表現の多彩さはceroの強力な武器だが、今作は簡単に言ってしまえばアース・ウインド&ファイヤーの“September”みたいなファンクのなぎ倒し力がガンガン発揮されている。髙城晶平のヴォーカルも唸ったりファルセットを使ったりして、すごくエネルギッシュ。これまでの作品と較べると、外に向かっていこう、リスナーを巻き込んでいこうとする心意気がよりくっきり表れている気がして、頼もしい。そしてceroならではの、物語性のある歌詞も研ぎ澄まされていて魅惑的。前作『My Lost City』でも多くの曲でモチーフになっている「航海」をテーマに、ファンタジックでいて、諸行無常の世を映し出すようなフィクションが紡がれる。「Magus」という単語は「魔法使い」という意味をもつ。ceroがこれから音楽シーンにどんな魔法をかけていくのか、見逃さないでほしい。(小新井知子)