フェスに出たいバックドロップシンデレラ・豊島×フェスを主催するアルカラ・稲村 スペシャル対談(2)
![ReVision of Sence×ライブキッズあるある中の人](/contents/feat/backdropcinderella_201704/img/image01.jpg)
続けることでフェスに意味が生まれて。そういうブランド、信頼があるからこそやろ(稲村)
――フェスの魅力って何だと思います?
豊島 フェスに行ってみてカルチャーショックだったのが、お客さんがなんて楽しそうなんだってことで。エンターテインメントとしてこんなのに勝てないっていう。だからフェスばっかりに行くお客さんがいても、「そりゃそうだ、だって楽しいもん」って思うんです。もちろんライブハウスにはライブハウスの楽しみ方があって。バンドとの距離が近かったり、自分の意見がバンドに届きやすかったり、スタッフさんと人間関係ができておもしろいとか。でもやっぱりフェスにお客さんが集まるのもわかるし、実際すごくおもしろいっていうのは特にここ数年で痛感していて。だから出たいんです。みんながおもしろいと思っているところに出たい。ここに出ないと話にならないって思った、それが本音かもしれないですね。
――おもしろいから出たいと。
豊島 例えば曲を作るときとか、ライブを入れたりイベントを組むときは、10代の自分だったら何がおもしろいと思うかなって常に考えるんですよ。たぶん僕、10代だったらフェスに行ってると思うんです。ってことは、ここに出ないと俺に出会えないんだみたいな。そこに気づいた感覚ですね。当時はフェスがなかったんで。フジロックの初年度が21歳ぐらいだったのかな。その頃とは楽しみ方も変わってきてると思いますけど。
稲村 フェスにしてもライブハウスにしても、多くは今年で10何年目とかになってきてるんで、たぶんバンド10年やってますと一緒で、続ける理由だったり意味だったり、筋とかブランドみたいなものがどこにあるんだっていう。フェスも増えまくったじゃないですか。僕、すごい好きな言葉があって、「フェスティバルっていうのは祭り。祭りっていうのは神様がいて、こういう神様がいるからみんなで奉ってやんやするってもの。それが本当のフェスティバルなんだ。だからそういうのが本当にあるものはずっと残っていく」みたいな。それを聞いたときにおもしろいこと言いはるなと思って。2年目ぐらいまでは新鮮さがあるし、僕もネコフェスをやり出して5年目になるんですけど、3〜4年目のときにそういう壁があって。ただただ新鮮だからやっていこうとか、去年よりおもしろいメンツが集まったからええやんだけでやってても、やっぱり連続してやっていくものっていうのは、あいつらじゃないとあかんとか、続けることで意味が生まれて。
そういうブランド、信頼があるからこそやろうみたいな。だから今は、フェスもライブハウスも貫くことで何かを生んでる最中というか。そこをお客さんは選ぶんじゃないですか。もう同じ時期に同じようなフェスがいくつもある状況になってるけど、じゃあどっち行くってなったときに、このイベント好きやねんとか、なんか根拠のないところだと思うんですよね。ライブハウスで言ったらトイレがめっちゃきれいとか、スタッフさんがおもろいねんとか。どのバンドっていうのももちろんあるけど、このバンドがこのハコでやるときは行くのに、ちゃうハコでやるときは行かへんみたいのあるじゃないですか。それって初めて行ったときはわからないけど、毎回行ってたらそう言えばここさ、みたいな。そのちょっとした差が選ぶ選ばへんの差になってしまうぐらいになるっていうのは思いますね。
――続けることで意味が生まれるというのは本当にそう思うし、ネコフェスのようにバンド主催となると愛さえ感じられるなって。
豊島 ネコフェスは愛に溢れてますからね。
稲村 毎年ありがとうございます。さすがに毎年同じメンツでやったらお客さんも飽きるかなっていうのがあって、3年目のときに「バックドロップシンデレラは一回ちょっと待ってもらっていいすか?」みたいになったんですよ。そしたら「いつまでも待ってます!」みたいな感じやったんで、そこまで言ってくれるなら結局「じゃあやっぱりやりましょう」っつって。
豊島 去年は、ネコフェスが終わって帰ってる最中にもう「来年もお願いします」ってオファーが来た(笑)。
稲村 去年はストリートライブみたいなんを実験的にやらせていただいて。街中で無料で、普通は弾き語りじゃないですか。だからアコースティックでやってもらったんですけど、それでも煽るんですよ。「ここが中止になったら俺らのせいやから絶対動くなよー!」、そしたらお客さんが「それはフリかー?」みたいな(笑)。
豊島 「ダイブとかモッシュはダメだからなー!」って(笑)。
稲村 そういうのができ上がっていってるのがおもしろいなと思いますね。それは毎年やっていただいてるからだろうし。ただ「バックドロップシンデレラ最近調子ええから出てよ」って言ってもたぶんお互いにとって掛け算にはならなくて。積み重ねてきたものがあるし、こんなおもしろくなるんであれば「来年も絶対出てください」っていう。
――ちなみにフェスとライブハウスってところで考えると、ネコフェスは「フェス」という名ですけどサーキット形式ですよね。そこにライブハウスへのこだわりを感じるのですが。
稲村 神戸はおもしろいライブハウスが多いって思ってて。そこから出てきたキュウソネコカミみたいなバンドと、この1年ぐらいで名前が出てきた若手と、バックドロップシンデレラみたいに全国でがんばってるバンドが一緒にやったら全部にとって意味があるというか。もっと神戸が活性化したらいいなって。ライブハウスの距離感でやるからこそおもしろいっていうか、このバンドのライブをこんな小さいところで観れるのかっていう。大型フェスはどこまでも広い会場で、夕焼けを見たり雨が降ってきて逆にテンション上がるみたいな自然との掛け算があるけど、それとは違う魅力ですよね。同じ音楽ですけど距離とか温度が違う。逆に言ったらどっちも楽しいですよね。渉さんもたぶんそうやと思いますけど。
こういう客層がこんなにたくさんいるんだって思う地方はやっぱりいいフェスがある(豊島)
――集客についてなんですが、まだフェスがあまりなかった時代はバンドがツアーに来てくれるのが貴重だから地元のライブハウスに来たら絶対観に行くって感じだったのが、最近は「フェスでこの間観たから今回はいいか」みたいになっていたりするのかなと思うんですが、実感としてはどうです?
豊島 そんなんあります?
稲村 なんか8月のライブハウスはしんどいって聞いたことある。
豊島 バンドが出ないからってことですよね?
稲村 そう、バンドがいない。地上にいない、空中戦をしてるみたいな(笑)。
豊島 それはたしかに(笑)。でもむしろライブハウスって敷居が高いというか、ロックが好きだからと言ってひとりでとか女の子だけで行きやすい場所ではない。その部分をフェスが入りやすくオープンにしてる感じはします。それでもう一歩進んでライブハウスに行こうって人も増えてるのかなと。だからフェスが開催されてる地方のほうがお客さんが掘り起こされてるというか。こういう客層がこんなにたくさんいるんだって思う地方はやっぱりいいフェスがあったり。
――フェスがカルチャーを広めている。それはライブハウスやバンドにとってプラスなことだと。
豊島 そう思います。今のところ。
稲村 うん、掛け算になってる感じはある。いいフェスのある土地はみなさんやたら前のめりですね。音楽が日常の中に入ってるというか。チケット代は高いんですけどそれだけたくさんのアーティストを観れるし、その中で一生を変える運命的な出会いをするきっかけにもなるだろうし。フェスが各地の動員につながってるバンドもいっぱいいると思いますから。だからバックドロップシンデレラが大きなフェスに出て盛り上がってる画が観れたら、10年間応援してきた人も熱い気持ちになるだろうし、新しく出会った人がライブハウスにたくさん来て、これまで支えてきた人が「チケット取れへんやんけ」みたいになって。
豊島 あるあるだね(笑)。
稲村 今までメールやったやんけ、プレイガイドとか知らんがなみたいな(笑)。もう今はそんなこともないと思うけど(笑)。
豊島 そこは卒業してます(笑)。
稲村 そうやってお客さんもバンドとともに成長していくみたいな。
――そうなったら感動的ですね。最後に、バンドはフェスとどう付き合っていくべきなのかを訊きたいのですが、どう考えていますか?
豊島 僕らはまだがっつり出ているわけではないので何とも言えないですが、やっぱり2017年にロックバンドで活動していこうって思ったら、さっきも言った通り出てみないと始まらないと思っていて。まずは出てみて、いろいろ経験して、そこからどうしようっていうのはそのときに思うことだと思うんで、まず舞台に立てるように今年はがんばろうと思ってます。
稲村 1年ぐらい前まではフェスの意味とか、主催の方や観に来てる方がどう楽しんでるとか、そういうことをすごい考えてたんですけど、渉さんの話を聞いて一周回って初心に戻ってきたというか。出るなら一番デカいとこに出たい。単純に与えられた場所で与えられた時間を精一杯やるのがカッコええやつやねんみたいなところで済ましてたらダメやなっていうか、そこのトリを任せてもらえるぐらいの存在になっていかないとって思いましたね。Ken Yokoyamaになっていかないとっていう(笑)。健さんのライブとか、もうフェスだろうが何だろうが関係なくカッコよくて。なんかグチャグチャなんですよね。でもそれが芸術で。そういうことなんかなっていう。何にしろ本当に本気で付き合ってたら、僕がひとりひとりのお客さんがどうとか考えてることなんかよりもっと大きなもんがあって、そういう人やからこそみんなが支持してて、ぽろっと言った言葉に感動して生きていけるみたいなことが、音楽には本当にあんねんなってすごい思うんで。自分がどんだけ強い人間でいられるかっていう。あとはバックステージでどんだけ楽しくみんなとお酒飲めるか(笑)。
――最後のも含めて(笑)、すごくシンプルなんですね。その一周回っていろいろ経てきたからこそ思えるっていうのはバックドロップシンデレラもきっとそうで。じゃないと“フェスだして”なんてストレートに言えないですよ。
豊島 それはそうでしょうね。こんなの結成して1曲目だったら——いやそれでもおもしろいですけど(笑)。3年目とかだとダメだろうけどいきなりこれだったらすごい。
稲村 初めて作った曲ですやったらだいぶエグいっすよね。
豊島 だいぶインパクトある(笑)。
稲村 そんなバンドと対バンすんのめっちゃ嫌やわ(笑)。でも本当、この曲素晴らしいですよ。
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企画・制作:RO69編集部