今年、戦後70年だったんで、そういうことに真摯に向き合って書いてみようと思って書き始めたんですけど。ただ真面目なだけになってしまった(笑)
――“EAST OF THE SUN”は、「太陽の東」という。
「ジャズで、そういう曲(“East of the Sun and West of the Moon”)あるじゃないですか。そこからタイトルを拝借したんですけど、神話的なイメージ(ノルウェーの民話『太陽の東 月の西』)もあって。ちょっと抽象的な歌詞なんで、そういうのがいいかなあと」
――“EAST OF THE SUN”は、非常に難解な歌詞で。いい曲なんだけど歌詞がわからんという困ったところに落ち込んでしまったんですけど(笑)。
「これ、あまり文字に残しておかないほうがいいと思うんですけど、なんでこの曲をシングルにしたんだろうなと僕は思うんですよ(笑)」
――えー?(笑)。でも曲調とかサウンドはGRAPEVINEらしいタッチでいいじゃないですか。
「個人的にはこれがシングルになると思ってなかったんで、そんな歌詞を書くつもりじゃなかった(笑)。ぶっちゃけた話、あんまりうまくいかなかったですし。今日が今回のシングルの最初の取材なので、今回だけは言っておこうかな(笑)。これね、今年戦後70年だったんで、そういうことに真摯に向き合って書いてみようと思って書き始めたんですけど。結果的に締め切りまでに、なんていうんですかね――フックとか仕掛けみたいなものがほぼ入れられなかったといいますか(笑)。ただ真面目なだけになってしまった(笑)」
――じゃあ、今だったらもう少し違うことが書けたかもしれない?
「かといってねえ、この曲はこの日に歌入れしますというのは決まってますから。いつまでも時間かけていられるものでもないんですよね」
――なるほど(笑)。でも、どうして戦後70年に向き合おうと?
「基本的に戦後読み物とかも好きで読んできた口なんで。今年は戦後70年なのかと――夏になるとそういう特集番組とかたくさんあるじゃないですか。そういうの見てて、『あぁ、そうかー』と思うところがあって。じゃあちょっと真面目にそういうこと書いてみようと思っただけなんですけど。そうしたら非常にアブストラクトな感じになりまして(笑)」
――じゃこの歌詞を読み解くには痛みとか歴史とかを考えて読むといいのかな?
「そうですねえ、すごく皮肉っぽい仕上がりにしたいなと思ったんですけど、結果的に皮肉も入れられなかったんで。ネタばらしは今回だけにして、他の取材ではもっと違うことを言おうと(笑)。次回からなんて言うか考えないとね」
――この曲がどう解釈されていくかが田中さんの課題ですね。
「いつも、わりとがっちりネタ仕込んで書くことが多いんですけど、今回は準備不足でしたね」
――油断しちゃったと(笑)。
「『これシングルにするの?』ってのがあったんでね」
読み解くつもりでかかってこい、という感じですかね(笑)
――“UNOMI”のほうがシングル曲としては良かった?
「いや、“UNOMI”に関しても、こんなスローな曲はシングルにしないと思ってたんで。まあ、どっちでもいいんでね、我々は。どの曲も分け隔てなく愛してるわけですから、どの曲がシングルになろうとも別にいいんですよ。ただ、よくこんなに抽象的なやつ選んだなと思いました、というだけの話で(笑)」
――リスナーの方にもそういうつもりで聴いてくださいと?
「読み解くつもりでかかってこい、という感じですかね(笑)。最近の子は読み解くつもりがないみたいですからね。遠回しな言い方とかが苦手なんですって。ニュースで見ただけですけど、今の情報(笑)」
――そういうものを読み解いてこそ音楽の醍醐味なのに。田中さんもそういう方でしょ?
「僕はそう思ってますし、昔からそういうつもりで楽しんできましたからね。何かを楽しむには10倍楽しむ方法じゃないですけど、いろいろなものを知ってたほうがより楽しめるわけですから。というつもりで作ってますけどね」
――戦後70年に対して田中さんが何を思っていたか、改めて気になります。
「そうですねえ、暇があったら読み解いてください(笑)」
――はい(笑)。ともあれ、この2曲は高野さんプロデュースで、レコーディング自体はスムーズに楽しく?
「そうですね。基本的には、高野寛プロデュースでやるにあたって、かつその中からシングルを作るということであれば、メロディアスであるものがいいなと思ってましたね。となると、やっぱり亀井(亨/Dr)くんの曲になるんですよ。曲は相変わらずジャムセッションでも作るんですけど、そういう曲より亀井曲のほうがいいだろうなということで、基本的に高野さんにやってもらったのは亀井曲ばっかりなんですけど。これもその中のひとつです」
――亀井さんはどんなイメージで持ってきたんでしょうね?
「ジョン・ブライオン(エイミー・マン、フィオナ・アップル、カニエ・ウェストらのプロデューサー)と言ってましたけどね。非常に、ビートルズ・マナーが多用された曲ですね」
――高野さんにぴったり。
「そうですね、楽しんでやってくれてました。高野さんがノイズギターも入れてくれたんですが、10テイクぐらいやってましたから(笑)。10テイク録り終えて、『これはいらないね』って言ってました(笑)。『いやいや、せっかく10テイクも録ったんだから使いましょう』って入れてもらいましたけども(笑)」
――ゆったりしてても独特の緊張感がある、甘くならないところがGRAPEVINEらしいと思いました。
「そうですねえ。基本的にはゆるいですけど結果そういうものを作ろうとはしてないでしょうね。しかも隙間多いですからね、演奏するとなかなかしびれますよ」
――この曲の歌詞のテーマは釣りかと思うんですが。
「その通りです。釣りがテーマですね。というのも、ネタにしたジョン・ブライオンの曲が、“Hook, Line and Sinker”(アルバム『Meaningless』収録)という、ことわざ(魚が釣り針も糸も重りも飲み込んでしまうこと)がタイトルで。単純に、鵜呑みのことなんですけど、そこから勝手に自分で物語を発展させていったという(笑)」
――釣りをモチーフに書こうとなると、それについて調べたりはしました?
「それはしますよ。自分の持っている知識プラス何かネタになることないかと、調べてみたりしますね。結局歌詞を書くというのは連想ゲームの繰り返しなので、そこから突飛な連想に行ったりして何か面白い発見をすることも多いので」
――田中さん、釣りはやるんですか?
「いや、憧れだけですね。釣りは余裕のある人がやるもので、僕は人としてまだ余裕がないので、できないですね(笑)」
ミュージックビデオ
リリース情報
New Single
『EAST OF THE SUN/UNOMI』
初回限定盤(CD+DVD)
VIZL-993 ¥1,800(消費税別)
CD
- EAST OF THE SUN
- UNOMI
DVD
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LIVE IN VICTOR STUDIO presented by J-WAVE「Hello World」
収録曲:スロウ/風待ち/YOROI/FLY/豚の皿/なしくずしの愛/光について - VIDEOVINE vol.3
通常盤(CD)
VICL-37119 ¥1,000(消費税別)
CD
- EAST OF THE SUN
- UNOMI
ライヴ情報
「SOMETHING SPECIAL」
2月18日(木)/19日(金) LIQUIDROOM
ゲスト・アクト
18日:Schroeder-Headz w/近藤康平・土井昌徳(HERE.)【Live Painting & Visual Effects】
19日:Suchmos
提供:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
企画・制作:RO69編集部