カラダに訴えかけるって一種の暴力だと思うんで。それってワルだと思うんですよ
——昔は打ち込みで音楽を作る人は「アナログのリズムは揺れるのが我慢ならない」ということを言う人が結構いましたけど、今はそんなことを言う人も少なくなりました。
「はいはい。今は逆にデジタルの、決められたグリッド上のなかで正確にクォンタイズされた4つのビートに耐えられないと言って、あえてキックを手で揺らしたりとか、いっそ手打ちで録音する人もいますし、キックにディストーションをかけたりトラック全体をアナログのテープレコーダーにかけ直してアウトボードで戻す、みたいなやり方をする人も多い。デジタルのきれいな音をいかに汚せるか、を考える時代だと思うんですね」
——その通りですね。
「はい。そういうフェーズに入ってきてる。それはこれから自分が作品を作っていく上では、踏まえなきゃいけない重要なポイントだと思いますね」
——曲ができる時はどんなところからインスピレーションを受けるんですか。
「クラブで踊ってる時とか、フェスでほかのバンドを見てかっけー!と思ってる時とか。自分のカラダが動かされてしまうような時が一番のインスピレーションの源じゃないかと思います」
——そういう意味で最近一番触発された存在というと?
「こないだイベントで見たPOLYSICS。あれは凄いと思いました」
——デジタルとアナログの融合という意味では先駆者のひとつですね。
「そうですね!あれは凄かったですね。暴力的な音だなと思って。この人たちワルだな!と思って」
——ほう。ワルって、どういう意味で?
「カラダに訴えかけてくるところが。カラダに訴えかけるって一種の暴力だと思うんで。それってワルだと思うんですよ。それでめっちゃ動いちゃったんですよね、自分のカラダが。自分がアウトプットする時も、そういうものを作りたいなって思って。漠然としてるんですけど、人のカラダに訴えかけるような音は意識していきたいなと思ってますね」
——そのためには何が必要なんでしょうか。
「それを追求する旅に出ようと思ってます(笑)」
——ポリは同じエレクトロニックな音楽でも、yahyelとは対照的ですね。
「そうですね、ほんとに」
——ご自分のなかでyahyelとDATSはどういう関係にあるんですか。
「(笑)えーっと、言ったらどっちも実験の場ですね。実験室がふたつあるっていう考え方が一番しっくりするんじゃないかと思います」
——どういう実験ですか。
「自分のやりたいことをやる、自分のやりたい音楽をやる実験室。yahyelの場合は、人を突き放すような音楽を作れば作るほどいいと思いますし、DATSはそれと逆で、どうやったら人を巻き込めるか考える。逆に、突き放してるような音なのに、どうやったら人を巻き込めるか考えることができる場所でもある。それぞれの実験室ではできないようなものを実験するっていうような、そういう風に捉えてますね、自分のバンドを」
——ふむ。両者を作る時は明確な気持ちの切り替えはあるんですか。
「特にないですね。明るいものも暗いものも、アンダーグラウンドなものもオーバーグラウンドなものも、両方作りたいって気持ちはあるんで。たとえばライブの時でも、『今日はお客さんKILLしてやる』ってyahyelでいつも言ってますし、DATSのライブの前でも、自分の心のなかでそう思ってるんで。特に精神的な意味で変わってるところはないと思います」
高速四つ打ちのカルチャーが盛り上がってきたことも、何かの動きに対するある種のカウンターだったと思うし。今度はそのカウンターで何が出てくるか
——なるほど。ご自分としてはそのふたつのバンドを並行してやっていくことに意義を感じている。
「そうですね。さらにまた別の実験室を増やしてもいいかなって思ってます。いくらチャンネルがあってもいいと思ってるんで」
——そういう多面的な指向を持った人にとってはいい時代になってますね。昔はふたつのバンドをやっていくのもいろいろ面倒だった。
「そうですねえ。てか、そもそもなんでバンドはひとつじゃなきゃいけないの、みたいな。禁止されてる訳でもないのに。なんで売れるためには高速の四つ打ち作らなきゃいけないの、とか(笑)。それぐらいの意味しかない」
——(笑)高速の四つ打ちは、やっぱりフェスで勝つためじゃないんですか?
「でもそうじゃない曲じゃ勝てないかって言ったら、そうじゃない。それぐらいのテンションだと思う。別にそう決められてる訳じゃないけど、みんなそうやらなきゃいけないみたいな風潮になってる。でも最近はそんな風潮に関係なく自然体でやり始めてる人も増えてるから」
——最近すごく自由にやってる人が増えてますね。yahyelやDATSもそうですが、画一的じゃなく、いろんな人がいていろんなバンドがいていろんな表現があるんだって、当たり前のことを再認識する感じはあります。
「そうですね。そうやって新しいカルチャーって生まれてくると思うので。もちろん高速四つ打ちのカルチャーが盛り上がってきたことも、何かの動きに対するある種のカウンターだったと思うし。今度はそのカウンターで何が出てくるか。高速四つ打ちに勝てるものがどう出てくるか興味あるし、それはDATSがチャレンジして実験していく場所じゃないかと思ってます」
——何か目標とするバンドやアーティストっているんですか。
「オアシス」
——へえ。なんで?
「いやもう、大好きなんで。もうオアシスとニルヴァーナが大好きで。それでバンド始めたんで」
——オアシスのいいところってどこですか。
「ワル。ワルいところじゃないですか」
——ああ、それはさっきポリのことをワルいって言ってたのと同じ意味ですか。
「似てると思います。カラダに訴えかけてくるところが」
——強引にぐいぐい迫ってくる感じ。
「うん。なんでこれじゃいけないの、なぜこれが良しとされてるの、ってなかで平然と自信満々に自分がかっこいいと思ったものだけをやり遂げてしまうような自由なアティチュード。それも暴力のひとつの要素だと思うんですよね。(リアム・ギャラガーは)ボーカリストとしてもリスペクトっていうか。目標にしている人物ではありますね」
——じゃあインタビューであれこれ暴言吐かないと(笑)。
「(笑)そうですね。じゃあ今のフェスに出てるような高速四つ打ちは全員クソだって書いといて下さい(笑)。でもそれを音楽で表していくアティチュードは、新しい大きなものを生む力のうちのひとつだと信じてるんで。DATSとしてはそこに情熱を注いでやっていきたいと思ってますけどね」
取材後ブログはこちら!