8月1日に名古屋のライブハウスR.A.Dで開催されるイベント「東海ど真ん中計画2019-R.A.D 10th Anniversary-」。このタイトルを見てピンときた人は鋭い。かつてBACK LIFT、04 Limited Sazabys、THREE LIGHTS DOWN KINGSらがやっていた「名古屋ど真ん中計画」が、名古屋だけでなく東海地方全体を巻き込んで「帰ってきた」のだ。実際、盛り上がりを見せている東海シーンの粋を集めたようなメンツ、ここから新たな伝説が始まるかもしれない。というわけで出演7バンドのフロントマンに、主催者のSAKAE R.A.Dのオーナーである綿谷剛氏も加えた8人で意気込みを語り合ってもらった!
インタビュー=小川智宏
客観的に見てもきっと、同じ熱い意思を持ったバンドが集まっているタイミングなのかなと思う(ONIONRING・Takeshi)
――まずはこのイベント、どういう経緯でやることになったんでしょうか?
綿谷剛 もともと、2011年にR.A.Dで、BACK LIFT、04 Limited Sazabys、THREE LIGHTS DOWN KINGS、THIS MORNING DAY、PipeCut Wedding、SpecialThanksという6バンドと僕で、名古屋のシーンが今来てるんだぞっていうようなイベントをやりたいねっていうので「名古屋ど真ん中計画」というのを立ち上げたんです。そこから2014年に名古屋ダイアモンドホールを、BACK LIFTとフォーリミ(04 Limited Sazabys)とサンエル(THREE LIGHTS DOWN KINGS)の3マンで即完させるところまでいったんですね。そこで「名古屋ど真ん中計画」はいったん終わったんですけど、そういうことをまたやりたいなっていう気持ちはずっとあって。それで今、地元というか東海地方で活躍しているバンドが出てきているので、彼らと何かやりたいなということで、僕のほうからそれぞれのバンドに提案して集まってもらったという感じです。
――みなさん「名古屋ど真ん中計画」というイベントについては知っていました?
山本響(Maki) 知ってます。
Takeshi(ONIONRING) 知ってました。
生田楊之介(Track’s) 俺は知らなかったですね。
――確かに世代的にはそうかもね。この中だとONIONRINGが一番上?
Takeshi そうですね。
――で、いちばん下がTrack’s。7歳ぐらい違うんでしたっけ。
生田 6かな。でも結構一緒にやってるんで、あんまり歳は気にならないけど。
――なるほど。その「名古屋ど真ん中計画」もはや伝説になっているイベントだと思うんですが、そういうものをもう一度ぶち上げたいという話をワタさんからもらったときに、どういうふうに感じました?
生田 同世代というか、仲間的な感じで集まるっていうのが地元ではあんまりなかったんですよ。常に先輩とやるっていう感じだったので、こうして仲間に入れてやるのは初めてなので楽しみですね。
山本 もともとよく一緒にやるバンドもいるし、初めて一緒にやるバンドも――Some Lifeが初めてなんですけど、そういうバンドもいますし。
――確かにこのラインナップのなかでSome Lifeはちょっと異質かもしれないですね。
DAIYA-TAN(Some Life) そうっすね。普段イベントで一緒になることってあんまりないので。お誘いいただけたのは嬉しかったですね。「ど真ん中計画」で一緒にやれるっていうのが。
浜口飛雄也(moon drop) いま頑張ってるというか、バチバチやってるバンドを集めて、結果知り合いばっかりなんですけど(笑)、それがめちゃくちゃ嬉しいんですよね。
ハナフサリュウノスケ(THE NOiSE) うん、知り合いがほとんどですけど、みんな仲良しでいつも一緒にいるっていうメンツではないからこそ、気合いの入り方が違いますね。
――集まったバンドの音楽性の幅も広いですもんね。
末武竜之介(KUZIRA) ジャンルもバラバラですけど、過去に対バンしてかっこいいと思っているバンドと一緒にできるのが嬉しいです。
Takeshi 県外でライブをしたときにも、周りのバンドから「東海地方盛り上がってるね」っていうのは言われることが多くなってきて。客観的に見てもきっと、同じ熱い意思を持ったバンドが集まっているタイミングなのかなと思うので、すごくいい機会だと思いますね。
Some Lifeはまだあんまり絡んだことないけど、心の奥で俺らのことをナメてるんじゃないかなって探りは入れてる(Track’s・生田楊之介)
――今Takeshiくんが言ってくれたように、確かに東海地方が盛り上がっていることは間違いないんですけど、それって何か理由があるんですかね?
Takeshi 結構……僕らにとってフォーリミ、バックリ(BACK LIFT)が先輩になるんですけど、その上って空白の世代なんですよ。その中で頑張っていたバンドの姿を見てきたのは大きいかな。フォーリミとか、今ビッグになってすごい景色をいっぱい見せてもらってるんで、そういう面では夢を持ちやすい環境なのかも。
――今回のメンツ見ても、ジャンルをまたいでの横のつながりっていうのが結構濃いなっていう感じがするんですけど、どうですか?
生田 その感じはあるっすね。Five State Driveってバンドとかが「同世代でおもしろいことやろう」っていう動きとかもしていて。横のつながりというか歳も近いところで盛り上げようっていうのはありますね。
――それぞれ、今回共演する6バンドのことをどういうふうに思ってるの?
ハナフサ KUZIRAはめちゃくちゃメロディがいいメロディックパンク。ONIONRINGはもうちょっとコアな感じなのかな。俺らは日本語でやってるっていうところではMakiとかmoon dropと同じかもしれないけど、音楽性的にはちょっと違う。Some Lifeと俺らはちょっとこの中でも違う。
山本 THE NOiSEは気持ちいいことを教えてくれるお兄ちゃんみたいな感じなんですよ。僕はTHE NOiSEを観ていて気持ちいいって感じることが多いんですよね。Track’sは1個下のめっちゃ人懐っこいやつ。バンドのイメージというか、楊之介のイメージですけどね。
生田 バンドでは関わってないっすもんね。Makiが静岡UMBER来たときに俺が働いてたり。っていうのが多いっすよね。
山本 「響くんもう飲めないんすか? 眠いなら寝たほうがいいっすよー」みたいな(笑)。
生田 バーカンからね。
山本 めっちゃ遠いところから(笑)。そういうイメージです。
生田 響くんと酒、飲みたいっすね。俺らにとってオニリン(ONIONRING)はなんか、休日朝早くから遊ぶ友達みたいな。めちゃめちゃ準備して、予定立てて遊ぶ感じっすね。いい友達であり先輩でありっていう関係です。
浜口 ONIONRINGはMCに違和感がないバンドNo.1なんです。すっと聞ける。
末武 憧れの先輩ですね、ONIONRINGは。逆にTHE NOiSEは同世代でライブがいちばんかっこいいけど、自分が後輩だったら先輩にはしたくない。めんどくさそうなんで。
ハナフサ (笑)。
末武 で、Some Lifeは普通にバンドしてなかったら絶対かかわらないだろうなって人たち(笑)。
生田 Some Lifeはまだあんまり絡んだことないけど……心の奥で俺らのことをナメてるんじゃないかなって探りは入れてる。
Takeshi 俺もSome Lifeは今日初めましてなんですけど、見た目的に結構ブイブイ系なのかなって(笑)。本当の姿をまだ見てない。
――Some Lifeに対するおっかなびっくり感がすごいんですけど(笑)。どうですか、DAIYAくんとしては。
DAIYA-TAN 本当の姿、見せたいです(笑)。
浜口 Some Lifeは前の名前のとき、3年前とかに一緒にやったことがあって。そこからちょっと変わって、キマってそうな音楽してる。
「名古屋ど真ん中計画」と同じく、いつかまたダイヤモンドホールみたいなところに一緒に行けたらいいなって思ってます(綿谷剛)
――ブッキングしたワタさんとしては、この7バンド、どういうふうに見てるんですか?
綿谷 Makiとmoon dropはよく一緒にやってて、KUZIRA、Track’s、ONIONRINGもよくやってて、THE NOiSEはどっちとも結構やってる。日本語の歌モノはこの2バンドが引っ張ってて、メロディックはこの3バンドしかいないぐらい。そこをTHE NOiSEが荒らしてくれたら面白いんじゃないかなって思って、最初はその6バンドでやるつもりだったんですよ。Some Lifeは僕もあんまり知らなくて。たまたま飲んでるときにMVが流れていて、「めちゃくちゃかっこいいやん」って思って、すぐにライブ観に行ったら「これ、すごいな」と思ったんですよね。それで、もしかしたら今回荒らすのはこのバンドかなと思って出てもらうことにしたっていう。みんなクセが強いですよね。見た目はちょっとなよっとしてるけど、中が強い人間の集まりだから、ぶつかったら面白いんじゃないかなって。意外とみんな、誰にも負けてないと思ってるはずなんで。
――逆にDAIYAくん的にはその中に飛び込むみたいな感じになったわけですね。
DAIYA-TAN そうっすね。まだみんなのことを理解できてないというか、喋ったこともない、挨拶程度しかしてないぐらいなので。当日をいきなり迎えるよりは、今日みたいなワンクッションがあってよかったなと。
生田 今日飲みに行けるといいっすよね。
DAIYA-TAN うん。ライブ終わったら関係値も変わってるといいかなと。
――ちなみに、Some Lifeというバンドのいちばんの武器って何ですか?
DAIYA-TAN このイベントでいうと、楽曲が全然違うから。そこで戦えればいいなと思ってます。
――会場のR.A.Dが10周年というタイミングでもあるんですよね、今回。
綿谷 このイベントをやる8月1日がちょうどオープン10周年なんですよ。それも自分の勝手なんですけど、10周年の最初にこのバンドたちとやりたかったんです。たぶんこのメンツだったら400くらい売り切れると思うんですけど、「名古屋ど真ん中計画」と同じくR.A.Dから始めて、これを続けていくかどうかはやってみないとわからないですけど、いつかまたダイアモンドホールみたいなところに一緒に行けたらいいなっていうのは思ってます。
――それぞれ、R.A.Dというハコに対する思い入れはありますか?
生田 あそこでいいライブできたこと1回もないっすね、なぜか。なんかジンクスみたいなのがあるっすね。でも、県外からしたら、名古屋に通うっていったらR.A.Dっていうのはあって。場所も中心街だし。夜は多少治安悪いんですけど(笑)。
Takeshi 「FREEDOM NAGOYA」とかやっている影響もあって、名古屋といえばここっていうイメージはあると思います。僕らのホームはまた別のライブハウスだったりするんですけど、県外のバンドから「名古屋でどこでやってるの?」っていう話をするときに「R.A.Dとかでやってるの?」って名前が出てくる感じ。
山本 幽霊がいるって有名ですよね、地元だと。
Takeshi ああ、裏の機材置き場のほうでしょ?
綿谷 マジで? 10年やってきて聞いたことがない(笑)。
Takeshi バーカンのモニターに映るって(笑)。
生田 バーカンね。あ、ビールもうちょっと美味しくしてほしいっすね。
Takeshi あとトイレの鍵直してほしい。
末武 あれ、直りましたよ。
綿谷 いや、また……。
生田 また壊れたんすか?
綿谷 もう何十回も壊れてる。安い取っ手だから。
生田 あれ、超気まずいっすよね。開けられたときより開けたときが。
綿谷 ビールとトイレ、頑張ります(笑)。
バンド歴が長くなるにつれて、少しずつ周りに一緒にライブをやってくれる人たちが増えていって、今この状態になってるっていう。だから界隈を意識するというよりも、やってたらこうなったって感じですね(Maki・山本響)
――R.A.Dの母体であるRAD CREATION、ワタさんのやっているレーベルのTRUST RECORDSもそうですけど、「FREEDOM NAGOYA」を主催したりとか、地元のシーンを盛り上げるっていうところは最初から意識的にやってきたんですか?
綿谷 盛り上げたいっていうよりも、楽しいことをしていたいだけって感じですけどね。わくわくすることをどんどん実現していきたいっていう。今の名古屋・東海って、ここにいないバンドたちもそうですけど、若いいいバンドがいっぱいいるんですよ。周期みたいなのがあって、それこそフォーリミとかバックリの世代がいっぱい出てきて、そこからちょっと若いバンドが減ってたんですね。でも今、さらに大きくなって帰ってきている感じはします。
――この中から誰が抜け出して引っ張り上げるのかっていうのも気になりますよね。
ハナフサ 俺らはもともと、こういうシーンにいなかったし、R.A.Dに出始めたのも遅かったので。最初はもっと自分たちと同じ感じの日本語パンクバンドと一緒にやるもんだと思ってたのに、やってみたら全然いなくて。名古屋の先輩っていうとTHE BOOGIE JACKっていう歳の離れたバンドしかいなかったんです。だからこの界隈に飛び込んでも、この界隈を盛り上げるというよりは、名古屋で日本語パンク、青春パンクとか、自分の地盤を盛り上げていきたいっていう感じのほうが強いですね。
――確かに今までの話を聞いていても「界隈」感はあまり感じないかもしれない。
Takeshi 僕らもそうですね。まずは自分たちがちゃんと上に行ければ、そこから引っ張り上げることはできるから。まずは自分たちがちゃんとできないとっていう部分はみんなあるんじゃないですかね。
生田 うん、個々の活動があって、たまに集まったらすごくなるみたいなのがいいなって思う。
Takeshi そういうほうが刺激が強いかなって。
山本 僕はたまたま界隈っていうのがあって過ごしてきたんで。バンド歴が長くなるにつれて、少しずつ周りに一緒にライブをやってくれる人たちが増えていって、今この状態になってるっていう。だから界隈を意識するというよりも、やってたらこうなったって感じですね。
DAIYA-TAN うん、界隈を盛り上げようみたいなのはない。
浜口 正直まだわかってないんですよね、これが究極、これがやべえっていうのを。いちばんはそれを見つけたい。
――KUZIRAとしてはどうですか?
末武 僕は……あんまり、努力するのが嫌いなんで。みんなが来て、そこに乗っかって引っ張ってもらうのがいいかな(笑)。
――とか言ってるやつがじつはいちばん野心あったりするもんだけど。
生田 いや、野心ありますよ、いちばん。
イベント情報
東海ど真ん中計画2019 -R.A.D 10th Anniversary-日時:2019年8月1日(木)
開場 17:00/開演 17:30
場所:栄R.A.D
http://rad.radcreation.jp/
出演:KUZIRA / Maki / moon drop / THE NOiSE / ONIONRING / Some Life / Track's
チケット:前日 ¥2,800/当日 ¥3,300
KUZIRA “Snatch Away”
Maki “秋、香る”
moon drop “センチメンタルガール”
THE NOiSE “助走をつけて”
ONIONRING "Fireworks"
Some Life "Champloo"
Track's “17 years”
提供:RAD CREATION
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部