再スタートを切った有安杏果が、いま音楽とライブにかける想いとは

再スタートを切った有安杏果が、いま音楽とライブにかける想いとは

自然と自分が音楽に触れていて、そこで「やっぱり自分は音楽が好きなんだ」と気付いた


――0歳から芸能活動をしてきて「普通の女の子の生活を送りたい」と思った有安さんを、活動復帰にまで引っ張った音楽の魅力とはどういうものだったのでしょう?

「もともと音楽活動や芸能活動が嫌になって辞めたわけではなかったので、去年もいろんな方々のライブにお邪魔したり、新しくサックスを始めたりもしてたんです。せっかくギターとピアノも始めたんだから……と思ってコードの教本を買ってみたりして」

――普通の女の子としての有安さんの日常に、音楽が溢れていたんですね。

「そうです、そうです。ずっと音楽に触れていました。前は人前に立てるステージがつねに用意されている状況だったので、『その日までになんとか仕上げなきゃ!』『ここで練習しなきゃ!』ということにただただ必死でした。でもそういうものが何もなくなった時、自然と自分が音楽に触れていたんですよね。そこで『やっぱり自分は音楽が好きなんだ』と気付いたというか」

――そのあとに少しずつ「アーティスト活動をしていこう」というモードにシフトしていったと。

「表舞台に戻るつもりではないまま音楽を楽しんでいて。それをもう1回仕事にするのは……やっぱり覚悟が必要だし、大変なことであることはすごくわかっていたんです。だけどいろんな方々のライブを観たり、曲を聴いたりしていて――ちょうど日本武道館のソロライブ(*2017年10月に開催)から1年経ったタイミングでその映像を観たり、ファンの方々の声などを見ているうちに、ああ、やっぱりもう1回やってみたいな……と思ったんですよね」

――そして2019年春に東阪ライブ「サクライブ 2019 ~Another story~」を開催してアーティスト活動を再開。夏には全国ツアー「Pop Step Zepp ツアー 2019」を回りました。2017年に『ココロノオト』をリリースした時はピアノに触ったことがないと言っていた有安さんが、このツアーではピアノやギターも弾いて、サックスも吹いている。それにはそういう背景があったんですね。

「弾き続けていると下手なりにできるようになりますね(笑)」

――なにをおっしゃる(笑)。これだけの方法論をステージに持っていくレベルのスキルまで磨くガッツはどこから湧いてくるんでしょう?

「……全部がライブで披露することを前提としていない、『ちょっとできるようになりたいな』というところから始まってるから、続けられてるのかな。何事もそうですけど、始めてみると目標があるほうが頑張れるし、パワーも漲ってきますよね。たとえばサックスなら教本からスタートしたんですけど……教本って知らない曲が多いじゃないですか? だからある程度できるようになったあたりには『早く知ってる曲がやりたい!』って気持ちでいっぱいでした(笑)」

――あははは。聴いてきた音楽が自分の指から鳴るって、感動的ですよね。

「ピアノのコードも自分の曲をもとにして勉強して、自分の曲が弾けることが本当に面白くて。そしたら自然といろんなコードを覚えていくようになって『あ、弾けるようになった!』ってどんどんうれしくて(笑)。できるようになってくると『これを聴いてくれる人の前で披露できたらいいな』と思ってくるんです」

――なるほど。向上心の連鎖の結果でもあるんですね。

「いろいろできるようになると選択肢も増えてきて、『この曲はわたしが弾くんじゃなくてバンドに任せたほうがいいな』という判断もできるし、『この前ギターで披露した曲をいつかピアノでやったら面白いかも!』とも思うし。ワンマンでもずっとわたしが立って歌うよりいろんなことをしているほうが観てる人も飽きないだろうし……という結果が今のライブのスタイルになってますね」

KANさんのライブDVDを観て「なにこれ!? 面白い!」「やってみたい!」と思った


――アンコールの定番になりつつある「逆再生メドレー」というのはどういうものなんですか?

「本編で披露した曲を遡りながらメドレーで披露していくんですけど、これはもともとはKANさんのライブからアイディアを得ているんです」

――へえ、KANさんからだったんですか。

「母がKANさんのことを好きで、その影響でライブDVDを観てみたんです。そしたら披露した曲を1フレーズずつ入れた5~6分のメドレーにして、そこにその時に流行った曲も入れるという遊び心に溢れたパフォーマンスをしてらっしゃって。『なにこれ!? 面白い!』って本当にびっくりして、『やってみたい!』と思ったんです。有安杏果としてオリジナリティを出すためにメドレーを20分以上の尺にして、メドレー中のアレンジは本編とはガラッと変えてみました」

――ジャズ、ボサノバ、レゲエ、スカなど、まったく違うアレンジで20分ぶっ通しだそうですね。前代未聞の試みです。

「だから初お披露目する時はめちゃくちゃ勇気が要りましたし……まずバンドメンバーやスタッフさんにプレゼンした時に全員の頭に『?』があって、会議で大反対を受けました(笑)。自分も未知の世界ではあったので、バンドメンバーと一緒に手探りでアレンジを考えて、20分くらいでまとまるように――土台作りをする時がいちばん大変だったかな。今は『逆再生メドレー』というものをわかっている人が増えてきているので、いいものにできるように専念できるようになりましたね。とはいってもバンドメンバーは大変で、みんなリハで『譜面いつめくろう!?』って話してます(笑)」

――ははは。お話を伺っていると、やはりショーマンシップがおありなんだなと。夏のツアーも各所で異なるカバー曲を披露なさったんですよね?

「そうです。ほかのアーティストさんの曲を歌うのはすごく勉強になりますし、自分じゃ絶対作れないような曲をライブでできるのはすごくうれしいし面白い。それを来てくださる方々が喜んでくださったらいいなと思って、夏のツアーで実行してみました。せっかく全国に行かせていただくので、最初はご当地アーティストさんの曲を披露できればな、と思ったんですよね」

――本当だ。北海道では玉置浩二さんの“しあわせのランプ”、仙台では秋田県出身である高橋優さんの“福笑い”などなど……。そこまで練られているとは。

「最終的には完全ご当地とまではいかなかったんですけど……」

――ほぼご当地と言っていいですよ(笑)。地元のアーティストの曲を、自分が好きなアーティストが歌ってくれる機会なんてなかなかないですから、お客さんもうれしいでしょうし。演出ではなく、あくまで音楽のなかでエンタメ性を持たせるところにも有安さんのポリシーが感じられますね。

「サプライズ好きなのかな(笑)。髪の毛を短く切った時もぎりぎりまで気付かれないようにわざわざもともとの髪の毛の長さのカツラをかぶって生活したり、夏のツアーでサックスを披露する時も驚かせたかったので、練習期間もずっとスタッフさんに持ってもらってました(笑)。この前のツアーのカバーも、これまでにカバーしたことがないアーティストさんの曲にしたり、それこそ有安杏果の楽曲にはない曲を歌わせていただけました」

ダンス曲を作りたいと思ったきっかけは、去年の夏くらいから町のダンススクールに通ってるから


――有安さんは以前は鼻歌で曲を作るなどなさっていましたが、最近はどのように進めてらっしゃいますか?

「今もだいたい最初のきっかけは、ふとした時に鼻歌で出てくる1フレーズですね。さすがに鼻歌だけで突っ走ることはなくなったので(笑)、それをきっかけにピアノを使って広げていくというか。作るぞ!と思って作れるタイプではないので、いつもだいたい外にいる時や電車に乗っている時にふっとフレーズが湧いてくるんです」

――えっ、電車お乗りになるんですか? タクシーとかではなく?

「全然乗りますよ!(笑)。大学もずっと電車で通ってました。自分はその時間がすごく好きなんですよね。いろんなイメージも湧いてくるし、人間観察もめちゃくちゃ面白いし(笑)。だからそういう瞬間に生まれた曲がすごく多いかな。でも夏のツアーで披露した“LAST SCENE”と“Do you know”というダンス曲は、こういう感じのこういう曲を作りたい!というイメージが最初からあったので、まずコードを決めて、そこにメロディを乗せてコードを調整していく……という作り方に初めて挑戦してみました」

――有安さんはキッズダンサーとして活動してらっしゃったけど、ソロでダンス曲は初めてですよね。

「うん、そうなんですよね。今までなんで作ってこなかったんだろう……? でもたぶん、今回そういうものが作りたいと思ったきっかけは、去年の夏くらいから町のダンススクールに通ってるからだと思うんですけど」

――えっ、町の!? 電車以上にびっくりですよ!

「趣味の一環としてと『太りたくない!』という気持ちから(笑)、いろんな世代の方々が集うダンススクールに通い始めたんです。もちろんふつうに更衣室で着替えてるんですけど、全然気付かれません(笑)。みんなめちゃくちゃダンスが上手で、その熱に感化されて作りました。BoAさんが昔から大好きで、憧れていて。その影響で、ちょっと大人っぽくてジャズっぽいものを目指していきましたね」

その時その時のテンションや見えるもの、感情がダイレクトに曲になっていく


――ということは、今の有安さんの表現全般として、生活のなかから生まれているものばかりなんですね。

「そういうものが多いかもしれない。今年の春にライブでお披露目した“虹む涙”はダンスレッスンに通う移動中にできた曲なんです(笑)」

――そうだったんですね。有安さんの書かれる歌詞は、ふだんなら気に留めない、見過ごしてしまうようなことを深く丁寧に綴っている印象があったので、日常が曲を導いているというのはとても腑に落ちます。

「たしかに、その時その時のテンションや見えるもの、感情がダイレクトに曲になっていく感覚はありますね。撮る写真も日常を切り取るものばかりだし、みんなが目にしているけれど、みんなの目には意外と留まっていないようなものを撮りたい気持ちがあって。表現方法が変わっても、表現するものは似ているのかな……」

――うんうん。「色鉛筆は大事な色からなくなっていく」という観点で書かれた“色えんぴつ”などは、その最たるものだと思っていたので。

「うれしい! その『色鉛筆は大事な色からなくなっていく』というメモは、中学生の時に祖父が亡くなって、その時にふと書き残したもので。それを見つけた時に『これを曲にできないかな?』と思って作ったのが“色えんぴつ”なんです」

――中学生でその感性は感服です。さて、有安さんはいまステージ上でどんな自分でいたいですか?

「えっ、なんだろう……! そうだなあ……。曲ごとにちゃんと切り替えるようにはしてるかな。いろんなタイプの曲があるので、気持ちをちゃんと作って1曲1曲の世界観を届けています。ただMCは素すぎるな……。素すぎて大丈夫かな?って心配になるレベル(笑)。クリックや同期を使っていないからこそのグルーヴや空気感は、ものすごく大事にしたいなと思っています。だからわたしひとりのライブ、ステージではなく、バンドさん、スタッフさん、お客さんみんなの呼吸でできあがるものだと思っているんですよね」

――お客さんの歓声でテンションが上がったりとか。

「うんうん。お客さんのクラップが速くなったらわたしも釣られて速くなるかもしれない。でもそういうなかでもバンドメンバーはちゃんとついてきてくれるんです。それもその日にしか生まれないライブ感だし。そういうものは大事にしていきたいし、ライブをやるたびにその大事さが強まっているなと思います」

――これだけ春と夏で工夫を凝らしているんですから、自然と来年の「サクライブ2020」には「もっとすごいものが見られるのでは?」と期待が高まっちゃいますね(笑)。

すごいプレッシャー!(笑)。今年の春ライブと夏のツアーで良かったものはもっと磨いて、新しいものも取り入れて、アップデートしたライブツアーにしたいですね。とにかくいろんなことに挑戦したいと思っています。

“ヒカリの声”サクライブ 2019

“心の旋律”サクライブ 2019

“遠吠え” サクライブ 2019

Live Blu-ray&DVD『有安杏果 サクライブ 2019 ~Another story~』

OFFICIAL SHOP限定販売

デジパック仕様・完全生産限定パッケージとなります。
※枚数に限りがございます。
※予定枚数に達し次第、受付終了となります。
詳細・ご購入は、特設ページよりご覧ください。
特設ページ:https://www.ariyasumomoka.jp/extra/sakulive2019dvd/

ライブ情報

有安杏果 サクライブ Tour 2020
2020年3月5日(木) 愛知県 Zepp Nagoya
2020年3月11日(水)大阪府 Zepp Namba
2020年3月13日(金)香川県 高松festhalle
2020年3月14日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
2020年3月16日(月)福岡県 Zepp Fukuoka
2020年3月19日(木)北海道 Zepp Sapporo
2020年3月21日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
2020年3月27日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
特設ページ:https://www.ariyasumomoka.jp/special/sakulive2020/

オフィシャルHP:https://www.ariyasumomoka.jp/

提供:Apricot Inc.
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部