今こそTHE CHARM PARKの本質に迫る。『Reverse & Rebirth』インタビュー


バンド解散後は日本に居られないかもしれないということもあるし、また音楽で生活していくことができるか不安な時期でもありました


――2014年当時のCharmさんの熱い心持ちが立ち上ってくる作品だと思いました。八面六臂の活躍で、当時からすごいクオリティなんですけれども。

「ありがとうございます。今回、マスタリングだけは外部で行ったんですけど、0から100まで全部自分でやっていますね」

――以前に活動していたバンドが解散して、その直後に制作した作品ということですか。

「はい。僕はアメリカ人で、バンド活動をするために日本に来ていたわけなんですが、バンド解散後は日本に居られないかもしれないということもあるし、一回失敗を経験したことで、また音楽で生活していくことができるか不安な時期でもありました。とにかく、100パーセントの自分を出し切った作品を作ってみて、それがどこにも届かなかったら仕方がない、という気持ちでしたね。責める人は自分しかいない、という状態で」

――その孤独な葛藤が歌詞の中にも織り込まれていて、たとえば初めてTHE CHARM PARKの音楽に触れる人にも、Charmさんの顔が見えてくる作品だと思います。でも、当時はそれどころではなかった?

「そうですね(笑)。5年後にこうしてこの作品をリビルドするなんて思いませんでした。当時は自分のことを大人だと感じていて、全部自分で責任を負わなきゃいけないという気持ちだったんです。その気持ちが染み込んでいる作品だと思いますね」

ビザの問題とか、日本ではしっかりした目的がないと住みづらいところがあるので。それでも、今の僕にとっては一番のホームです。


――残念ながら、当時の自主制作バージョンを聴けていないのですが、歌詞は当時のままですか。

「歌詞も声も、実はテイクもそのままです。少しだけ、音の調整をしたんですけど、基本的には変わっていません。大幅に変わっているのは、新曲だけですね」

――2018年にメジャーデビューして、このタイミングで『Reverse & Rebirth』をリビルドしようと思ったのは、なぜでしょう。

「うーん、5年というスパンは、短いようで長いようで、少しセンチメンタルになったんですかね。当時の自分を振り返ってみた時に、いつかはまた世に出したいなとは思っていて。それが今回、なぜなのかはうまく説明できないんですけど、ちょうどいいタイミングだと思いました。録り直しとかも検討して、トライしてみたんですけど、当時の熱量には敵わないんですよね」

――1テイク目がベスト、みたいな。ひとりきりで音楽活動を続けようとしていた時の気持ち、もう少し思い返してみると、どういうものでしたか。

「制作していた時は本当に、自分VS世界という感じになっていましたね。でもそれは、いいモチベーションだったりもしていて。5年経ってみると、苦労したというよりは美しい思い出になっているんですけど。生活面でもビザの問題とか、日本ではしっかりした目的がないと住みづらいところがあるので。それでも、今の僕にとっては住みやすいところだし、一番のホームだと思っているので、それをどう守るかということを、悩んでいましたね」

――そういう、当時のしんどさと情熱との葛藤が渦巻いているアルバムなんですよね。

「むしろ、今だと書けない作品なんじゃないかと思うんですよね。自分でプレスして、前のバンドを応援してくれていた人たちに手渡すことができたんですけど、それも多くの数ではなかったので」

――うん。だから、リビルドする意味っていうのはそういうところだと思うんですよ。今では、THE CHARM PARKの作品が全国に流通するようになっていますけど、その間にCharmさんが何を思い、生きていたかという時間を埋めてくれるんですよね。

「その当時の日記をあらためて公開した感じに近いんですかね。ちょっと恥ずかしいですけど(笑)」

――その時のしんどさや情熱って、何度振り返っても価値があるし、それをリスナーに共有させてくれる作品だと思います。

「初心というところでは、そうかもしれないですね。必死さの中で、インスピレーションも多かった気がするし。今とは違う情熱の形があります。自分でここまでできるんだ、という作品になったことで、精神的にも落ち着いたような気がしますね。ミキシングとかマスタリングも名前しか知らなくて、いろいろ研究しながら」

――全て独学でやったんですか。

「はい、デモ作りはやっていたので、それをどんなふうに世に出せるところまで完成度を上げるかということを、2014年に独学でやっていました。まあ、時間があったんですよね(笑)」


音大で音楽を学んだとしても、学んだ理論によって世界が広がるかと思いきや、狭くなることもある気がするんです


――『Reverse & Rebirth』の「Reverse」には、どういう思いが込められているんでしょう。

「僕としては、『振り返る』という意味を込めていますね。それを今、あらためてリリースするというのも素敵かなって思って。『振り返って、生まれ変わる』という」

――調べてみると、「Reverse」には「喪失」とか「失敗」という意味もあるらしいんですね。そこから生まれ変わる「Rebirth」っていうことなのかなって。

「へえー、そっか。日本語では、『リバース』って『吐く』という意味もありますよね。それをあとで知って、確かに吐いてるなあって(笑)」

――なるほど、溜まったものを吐き出してたんだ(笑)。Charmさんのように、アカデミックな音楽的バックグラウンド(バークリー音大卒)があってプロとして活動していた人でも、こういう辛い時期があるんだよっていう。それが響くんですよね。

「個人的には、アカデミックな素養の部分に少しコンプレックスを持っていて。音楽ってそもそも、学ぶべきところはありますけど、学んだ理論によって世界が広がるかと思いきや、狭くなることもある気がするんです。音大を卒業したあとに気づいたんですけど」

――ああ、表現の自由度が狭まっていくっていう。

「はい。理論がわかっているからと言って、その枠組みの中だけでやるのは良くないと思うんですね。音楽って、決して正解があるわけではないし、うん」

――でも、『Reverse & Rebirth』を作っていた時期というのは、進むべき道も明確には見えていなくて、しがらみもないという意味では、ある意味最も自由な時期だったんじゃないですか。

「確かに、そうですね。その時期は、ビザの制限でバイトをすることもできなかったんですよね。そのぶん、制作に打ち込むことができて、完成度を高めることはできました。ある意味、とても恵まれた時間だったかもしれないです」

――音楽を作るしかなかったっていう。最終トラックの“Rebirth & Reverse”で1曲目の“リバース”のメロディがリプライズして、《青空は暗闇がそばにいるから美しい/嬉しくても 悲しくても 僕らはまだ生きている》という結論に導かれるデザインには、どのような意図があるんですか。

「それこそアカデミックかもしれないんですけど(笑)、聴いたことのあるフレーズが繰り返される、映画とかでよくある手法が好きで。それを表現するためには強いテーマが必要だったんですよね。9曲目の“Reprise (Interlude)”も、同じメロディをギターで弾いていて。それによって、アルバムとしての纏まりが良くなると思いました。自分の希望を、そこに結論として書いたんです」

――同じメロディが反復しているんだけれども、スパイラルして違った結論に導かれているというのが、美しいと思いました。

「はい。それが『生まれ変わる』というテーマを含んでいるんですよね。ありがとうございます、気づいていただいて」

今の時代、人と繋がっているようで繋がっていないというか、本音が聞こえていないというのは、あると思います


――では、新たに収録された3曲についても伺っていきたいです。

「はい。オリジナル版に収録されていたうちの3曲は、インディーズ作品で既に発表しているので、その穴を埋める形で、3曲を加えました。2019年に作った新曲は“Open Hearts”で、あとの2曲は初めて音源化する2014年当時の曲になっています」

――“Open Hearts”の《言葉が聞こえてもまだ君が聴こえないこと》という歌い出しに込めた思いはどういうものですか。

「今の時代、人と繋がっているようで繋がっていないというか、本音が聞こえていないというのは、あると思いますし、それが主なテーマになっていますね」

――うん、コミュニケーションの具体性が薄らいでいるという。

「そうですね。心を開くというのは、大事なことだと思っています。《これから始まる未来をただ受け入れないで》という歌詞は、流れに身を任せてしまいがちな自分自身への言葉でもあります」

――「未来を受け入れろ」っていうほうが楽をしているというか、無責任な気がしますよね。

「それこそ、心を開くことの逆に行っていると思います。2014年の自分には、なかった発想かもしれないですね」

――フューチャーベース的なトラックと生演奏を折衷していますが、歌のメッセージがエモーショナルで強いんですよね。

「そうですね。それが一番大きなテーマでした。オリジナル版を出したあと、アコースティックな音楽もやってきましたし、ロックな曲もやっていたんですが、2014年頃の制作では、生ドラムを叩ける環境でもなくEDM的なアレンジを取り入れることが多かったので、その2019年版になっていると思います」

――“Free Man”にも、ドキッとする歌詞が綴られていて、《I’m a free man for sale》という。

「自由になったけど、どう生きるかを考えなきゃいけないという、当時の心境が表れていますね」

――リアルな生活感がないと出てこないフレーズですね。それで、“thirty-6”が最高なんですよ。メタルギター全開で。ある意味、Charmさんの原点というわけですよね。

「はい(笑)。当時、あるデザイン/アートイベントに、葛飾北斎の『富嶽三十六景』をモチーフにした作品が出展されて、そのための音楽として制作したんですよね。だからタイトルが“thirty-6”なんです。歌詞についても、北斎が多くの雅号を用いていたというエピソードを取り入れていて」

――なるほど(笑)。北斎も、ビジネス的な目論見やしがらみの中で雅号を変えていたから、『Reverse & Rebirth』の生活感とシンクロする部分がありますね。この曲はTHE CHARM PARKのジャパニーズメタルですよ。『Reverse & Rebirth』の中でも、いいアクセントになってアルバム全体を引き締めていると思います。

「ありがとうございます。ギターを推しすぎかな、と思ってオリジナル版には入れなかったんですけど、ライブでやるのが楽しみです。12月に東京(12/6)と大阪(12/13)で『Reverse & Rebirth』のリリースパーティ的なライブがあって、そこでは今回の収録曲のほとんどをやると思うんですが、1月からのツアーでは、また新しい一面を見せられたらいいなと思っています」


THE CHARM PARK / Gravity (Vertical Video)

THE CHARM PARK / “Billboard Live TOKYO” 2019.07.05 トレーラー映像

THE CHARM PARK / Favorite Songs (“Billboard Live TOKYO” 2019.07.05)

ニューアルバム『Reverse & Rebirth』発売中

初回生産限定盤(CD+DVD) RZCB-87009/B ¥4,500(税込)
CD Only RZCB-87010 ¥2,800(税込)

〈CD収録内容〉
01.リバース
02.Gravity
03.Open Hearts
04.Anyone
05.Free Man
06.Retry (Interlude)
07.カワレル
08.Ante Meridiem
09.Reprise (Interlude)
10.thirty-6
11.Rebuild
12.Rebirth & Reverse

〈DVD収録内容〉
THE CHARM PARK “Billboard Live TOKYO” 2019.07.05
01.カルペ・ディエム 
02.Imperfection 
03.マジック 
04.Sincerely, 
05.そら 
06.花が咲く道 
07.Standing Tall 
08.ワンダーランド(ver.3) 
09.Favorite Songs 
10.Ordinary 
11.Still in Love 
12.Stars Colliding 
ENC.Holding Hands

ライブ情報

THE CHARM PARK Reverse & Rebirth
12月6日(金) 東京・WOMB
 開場17:15/開演18:00
12月13日(金) 大阪・club JOULE
 開場17:15/開演18:00

席種
一般:all standing ¥4,500(税込)*ドリンク代別
学割:all standing ¥4,000(税込)*ドリンク代別
*学割チケットのご購入者は、入場時に学生証をご掲示頂き、スタッフ確認後のご入場となります。
年齢制限:4歳以上チケット必要

THE CHARM PARK TOUR 2020
2020年1月17日(金)宮城・仙台LIVE HOUSE enn2nd
 開場19:00/開演19:30
2020年1月26日(日)北海道・札幌SPiCE
 開場18:00/開演18:30
2020年1月31日(金)福岡・FUKUOKA BEAT STATION
 開場19:00/開演19:30
2020年2月2日(日)広島・Hiroshima CAVE-BE
 開場18:00/開演18:30
2020年2月6日(木) 大阪・LIVE HOUSE BananaHall  
 開場18:30/開演19:15
2020年2月7日(金)愛知・名古屋SPADE BOX  
 開場19:00/開演19:30
2020年2月13日(木)東京・恵比寿LIQUIDROOM  
 開場18:00/開演19:00

席種
一般チケット前売り:全自由 ¥4,800(税込)*ドリンク代別
学割チケット前売り:全自由 ¥4,300(税込)*ドリンク代別
*学割チケットのご購入者は、入場時に学生証をご掲示頂き、スタッフ確認後のご入場となります。
年齢制限:4歳以上チケット必要

提供:A.S.A.B
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部