Novel Coreが新作『No Pressure』を語り尽くすインタビュー! 過去の傷に向き合ったからこそ湧き出た、ピュアな音楽への想い

“TROUBLE”はBe The Minority的な意思表明として作った曲。今までなかったスタンダードを作りたいっていう感覚を今はすごく大事にしている

――前作の『A GREAT FOOL』が、自分の過去に向き合って昇華させようと思うきっかけとなった作品だとすれば、今作はそれを一歩進めて、過去が報われたと感じられるようなポジティブな作品だと思います。

「前作の時は鬱屈とした感情とかトラウマと対峙して、そこで過去に一旦ピリオドを打てた分、今作では自分の目の前にある大切なものを見て、今のNovel Coreとして新たにスタートが切れた作品になったなと思います」

――まず1曲目の“TROUBLE”。ダークでブルージーな響きのあるトラックに乗せて、辛辣でアイロニカルなリリックが突きつけられる曲です。これを1曲目に置いたのは?

「“TROUBLE”は、自分自身や自分のチームが、喜んで『トラブル』とか『エラー』と呼ばれるような存在になっていくっていうBe The Minority的な意思表明として作った曲です。今までなかったスタンダードを作りたいっていう感覚を今はすごく大事にしているフェーズで。自分のファン、スタッフ、チームで一緒に大きくなっていくという所信表明としてアルバム1曲目に置きました。自分の今後の指針みたいなものを示してスタートさせたかったんです」

――2曲目の“JUST NOISE”からも、世のはみ出し者だと思われてもいい、むしろそういう人にこそ響く楽曲をというメッセージを受け取れるし、さらにそれを推し進めたのが“BABEL”だなと。

「歴史上の偉人も――たとえばライト兄弟とかエジソンだって――はじめは世間から、飛行機で空を飛んだり電球を作るなんて戯言だと笑われていたわけですよね。でも彼らは信じてやり続けた。その結果、社会が豊かになった。その事実を僕自身、すごく自分の助けにしてきたというところがあって。新しいことに挑戦しようとする時、誰もやったことがないことをやろうとした時、まわりから批判されたり笑われたりした人にこそ聴いてほしいと思って作った曲です」

リファレンス云々ではなく「フェスで自分のことを知らないお客さんの前で演って、これ一曲でがっつり掴める曲を作りたいです」っていう話をして

――そこから遊び心に溢れた、“No Stylist”へ。これがすごく楽しい曲で、Coreさんのファッション観、表現観みたいなものが溢れていて、ここまでぶっちぎりで自分の主観のみで書き進めたリリックも新鮮です。

「そうですね。今までは、特にアルバム単位で音源を作る時には、しっかりとメッセージが伝わるように、ということを最重要視していたんですよね。いわゆるノリ的なところに着地するのは抵抗があったんですけど、本作はもう、今の自分として歌いたいことを歌おうっていうスタンスで。“No Stylist”は、自分がファッションが好きで、スタイリストさんも入れずに私服でステージに立ったりしてるっていうのを、そのまんま曲にしただけなんですけど。シンプルに友達の名前や、いつも通ってるお店の店長さんの名前とかをいっぱいネームドロップしながら、自分自身もすごく楽しかったです」

――“独創ファンタジスタ”がまた、ものすごくオープンマインドな曲で、今作ならではのリード曲。ちょっと危ういくらいに突っ走った曲なんだけど、「楽しむことを恐れるな」「全力で楽しめ」っていうメッセージも受け取れる作品になっていますよね。

「ジャンルをまたぐような感覚を大事にしたかったんです。それで、KNOTTさんにお願いしたんですけど、KNOTTさんはヒップホップが軸にあるけどオールジャンルで縦横無尽にやる方々なので。最初のミーティングでもう、リファレンス云々ではなく『フェスで自分のことを知らないお客さんの前で演って、これ一曲でがっつり掴める曲を作りたいです』っていう話をして。無理難題ですよね(笑)」

――要は「最強の一曲をお願いします」ってことですもんね(笑)。

「そうなんです(笑)。でもそれで来た楽曲がめちゃめちゃよかったんですよ。この曲では、なんとも言えない懐かしさみたいなのを入れたくて、日本の歌謡曲らしさをどこかにちりばめたかったんですよね。歌詞とか歌い方のテンションとか」

――確かにメロディの感じは懐かしさがありつつ、ビートや上モノの鳴り方がロックっぽくもあり、強いもの同士を掛け合わせて作り上げたっていう感じがします。

「邦楽はもともと好きなんですけど、相川七瀬さんとか、自分とは世代の違う邦楽アーティストが大好きで、母親の影響でよく聴いていたんです。なんか最近そこらへんのバイブスがほしくなってて。ちょうどそのタイミングでこの曲の制作だったので、その世代の感覚をちりばめるのを意識していました。歌詞はもう半分ふざけてるんですけどね(笑)。自分で書いてて爆笑してましたから」

――アルバム後半はもう真正面から、前作からの変化というか、Coreさんの現在地を表現する曲が続きますよね。タイトル曲である“No Pressure”は、UTAさんとのコライトで。

「前作で、“THANKS, ALL MY TEARS”という曲をUTAさんと作って、それはアルバム最後の曲だったんですけど、自分としては次のフェーズのオープニング曲というか、序章としてあの曲は置いていたんですよね。その繋がりで、UTAさんには今回のタイトル曲をやっていただきたいなと。まず今作は『A GREAT FOOL』の時に感じていた不自由さみたいなものから解き放たれたいっていう願望が単純にあって、『No Pressure』っていうアルバムタイトルをつけて。で、いざこの曲を書き始めたら、自分が表現したい『No Pressure』って、『もうプレッシャーがない』とか『感じない』っていうことではなくて、プレッシャーがあったからこそ、そこから脱した時に自由に感じられてる自分がいるんだっていうことに気づいたんですね。なので、ネガティブな感情も受け入れて愛せるような曲にしたかったんです」

Aile The Shotaと僕は性格も音楽活動をするうえでのスタンスも、真逆かっていうくらい違うんですよね。でも根っこがすごく近い気がする

――この曲の中でハッとしたのは、《変えられない 過去はいくらでも美化できるから》っていうところ。「過去は書き換えられない」「起きてしまった事実は変えられない」っていうのは確かにそうなんだけど、その正論に苦しめられるのもまた事実で。だから「過去は美化できる」ってことを、ズルさとか逃避と捉えるのではなくて肯定的に歌ってくれるこの歌詞に救われる人は多いと思います。

「僕も過去を振り返れば、正直後悔していることもいっぱいあるし、もし今、時が戻るとしたら違う行動をとるだろうと思うこともあるんですけど、それがあったからこそ見ることができた景色があるし、出会えた人がいる。その想いがすごく強いんですよね。そういう意味で、過去の出来事を受け入れて、これからの進み方次第で、過去はどうとでも見え方が変わるよ――っていうことは、確かに伝えたかったんですよね」

――“HAPPY TEARS feat. Aile The Shota”は “THANKS, ALL MY TEARS”へのアンサーソングだと受け取れますが、それをAile The Shotaさんとコライトで作り上げるというのもグッときますね。

「そうですね。Shotaは心から信頼している仲間で、『No Pressure』と僕が言い切れるようになるために、人間的にいい影響を与えてくれた友達でありキーパーソン。だからここにShotaが入ってくるのは必然なんです。Aile The Shotaと僕は性格も音楽活動をするうえでのスタンスも、真逆かっていうくらい違うんですよね。でも根っこがすごく近い気がするんです。自分の正解ではないものの受け入れ方とか、捉え方とかがだいぶ近い気がしていて、言語化が難しいくらいのシンパシーを感じています」

――ふたりで楽曲を作るっていうのは、かなり前から画策していた?

「そうですね。ほんとは前作の時にも何かやろうと準備をしていました。でもふと考えた時に、『今それをやるとBMSGのアーティスト同士のコラボっていうだけで消費されてしまう』と思ったんですよね。僕はShotaとは仮にBMSGで出会っていなかったとしても、どっかで絶対出会っていたっていう確信があったし。だから第一前提としてNovel CoreはNovel Coreとして、Aile The ShotaはAile The Shotaとして、ソロアーティストとして唯一無二である状態までいって、そのうえで絡む必要があるよねっていう話で、この1年間お互いに必死に頑張って、それを抜けた先で会おうぜって言って」

――後半のShotaさんのバースで、《誰も変われないような過去に/夢に見ていたような色を》っていうリリックがあるんだけど、これまさに、さっき話してた“No Pressure”の歌詞とシンクロしてると思ったんです。もちろんShotaさんから出てきた歌詞だと思うんですけど、このテーマの一致は偶然?

「Shotaが書いてきてくれたリリックですね。ふたりの歌詞をレコーディング当日に突き合わせるみたいな感じでやったんですけど、こんなにきれいにはまったので、ほんとに根っこで同じことを感じてきたんだろうなって思いました」

明日人生が終わるとしても、誰に向けるでもなく、今の気分を歌うんだな。それくらい音楽が好きなんだなって再確認できた

――そしてラストの“Untitled”に行く前に、ごく短いスキットが入っています。

「“Untitled”を作ったからこそ、この“Skit”が必要で、カセットテープを再生する音を入れたかったんです。前作で“PERIOD.”から“THANKS, ALL MY TEARS”に行ったように、今作は“HAPPY TEARS”で終わって、“Untitled”が次の作品の序章になる曲というイメージだったので、ここで時系列が変わっている感じを出したかったんです。“HAPPY TEARS”をすでに過去に歌っている世界線の僕が、久々に思い返して再生した曲が“Untitled”だったということなのかもしれないし、逆に未来の自分が久々に『No Pressure』を聴きたくなって聴き終えたところと捉えることもできるなっていう。そのふたつの意味での再生ボタンの音がほしくて入れたスキットです」

――なるほど。だから最後の曲はNovel Coreの次のフェーズを感じさせる、シンガーソングライターとしての「歌」を聴かせるものになっている。未来、たとえひとりになっても歌を歌っていると感じさせるような。これ、Yuya Kumagaiさんの奏でるギターの音色もとても美しくて。

「クマさんから10曲分くらいデモが送られてきて。その中で一曲だけ、クマさんがメロディラインを鼻歌で入れつつ、最後に『Coreくん、気に入ったところがあったらメロディ使ってください。いい曲にしようね』って一言、マイクに向かって言ってくれてるトラックがあって、それがこの曲でした。ほかの曲のデモもめちゃめちゃよかったんですけど、その言葉を聞いた瞬間、もう『これだ!』ってなってしまって。それで、レコーディング当日の朝まで歌詞のテーマさえ決まっていなくて、朝焼けを見ながらあのギターの音を流して聴いていたんです。そしたら、もし明日自分の人生が終わるとしたら、僕は何をするだろうっていうことをテーマに歌いたくなって。それって裏を返せば、自分にとっていちばん大切なものってなんなのかっていうところにたどり着くから。そこから10分くらいでばーっと書いた歌詞なんですけど、自然と《今を口ずさんで》っていう歌詞が出てきた時に、自分はたとえひとりぼっちだったとしても、明日人生が終わるとしても、誰に向けるでもなく、今の気分を歌うんだな。それくらい音楽が好きなんだなって再確認できた。それが嬉しくて涙が止まらなくなりました」

――このアルバムはすごくピュアに音楽に向き合っている作品だし、もう、BMSGの第1弾アーティストとしてのプレッシャーからも解放されているんじゃないかと思いました。

「解放というよりかは、プレッシャーはたぶん永遠に感じ続けていくんですよ。でもそのプレッシャーごと全部受け入れちゃったというか。そのプレッシャーを背負うのが僕の人生だと受け入れてしまったし、その分恐れるものがなくなったんですね。怖くなくなった。どんなにボロボロになってしまう時がきても、それも含めて自分のストーリーだと思えるようになったんだと思います」

――マインドの着地点として理想的というか、大きな鍵を手に入れたような作品ですよね。次のフェーズを見せる楽曲もありますが、今どんなことを考えていますか?

「実はもう次の作品の制作がスタートしかけているんですよ(笑)。言語化が難しいんですけど、『No Pressure』を作り終えて、これまで全然見えてなかったものが見えるというか、視野が、六畳一間から東京ドームくらいにまで広がったように、いろんなことが鮮明に見えるようになったような感覚で。音楽に関しても、今まで感じなかったメロディとか譜割りが見えるようになったっていうのもあって。以前までの僕は完璧主義で、自分で自分の可能性をずっと狭め続けていたから、今はなんかほんとに赤ちゃんに戻ったみたいな(笑)。おもちゃをぽんと目の前に出されたら、遊び方も知らずに、新しい遊び方を作り出してしまうような状態にいる。そんな感じです(笑)」



“独創ファンタジスタ”


2nd Album『No Pressure』

発売中

●CD+Blu-ray(スマプラ対応)
価格:¥7,150(税込) / 品番:AVCD-96997/B
外付け特典:直筆サイン入りZine ver.1 (全24P)

●CD Only(スマプラ対応)
価格:¥2,200(税込) / 品番:AVCD-96998
外付け特典:
ジャケットサイズステッカーA
ジャケットサイズステッカーB(BMSG MUSIC SHOP限定)

Disc-1 [CD]
1: TROUBLE (Prod. Ryosuke "Dr.R" Sakai)
2: JUST NOISE (Prod. MATZ)
3: BABEL (Prod. KM)
4: No Stylist (Prod. Yosi)
5: 独創ファンタジスタ(Prod. KNOTT)
6: No Pressure (Prod. UTA)
7: HAPPY TEARS feat. Aile The Shota(Prod. Matt Cab)
8: Skit
9: Untitled (Prod. Yuya Kumagai)

Disc-2 [Blu-ray]※CD +Blu-rayのみ収録
<MUSIC VIDEO>
・HAPPY TEARS feat. Aile The Shota
・独創ファンタジスタ
<LYRICS VIDEO>
・TROUBLE
・No Pressure
<LIVE>
「『A GREAT FOOL』BIRTHDAY LIVE (2022.01.22) at CLUB CITTA'」
<DOCUMENTARY MOVIE>
Behind The Scenes of No Pressure

●CD+Blu-ray(スマプラ対応)
BMSG MUSIC SHOP限定盤
価格:¥7,150(税込) / 品番:AVC1-96999/B
仕様:三方背ケース
外付け特典:直筆サイン入りZine ver.2(全24P)
Disc-1[CD]
※AVCD-96997/Bと共通
Disc-2[Blu-ray]
※AVCD-96997/Bと共通

提供元:B-ME
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部