死亡フラグとサンバが煌めく新曲の配信を経て全国ツアーがスタート。打首獄門同好会は、なぜ逆境に屈しないのか?

死亡フラグとサンバが煌めく新曲の配信を経て全国ツアーがスタート。打首獄門同好会は、なぜ逆境に屈しないのか?

(“地味な生活”のMVに)出演してくれた全員に華があり、陽の空気を纏っていて派手。完成したMVを観て、「俺がいちばん地味だな」って思いました

――“地味な生活 -SAMBA MAX EDITION-”のサウンドも素晴らしい仕上がりです。

「サンバの楽器が加わるとテンションがブチ上がります。でも、これはミックスに本当に困りました。『もっとサンバの楽器の音を聴かせたいけど、これ以上やるとギターの音も潰れる』っていうのがあったので。何種類か作ってみて、丁寧なほうにまとめました。もうちょっと攻めるとノリしかない曲になるんですよ。音楽の構成はメロディ、ハーモニー、リズムの3つですけど、リズムを押し出しすぎるとメロディとハーモニーがいなくなってしまうので」

――パーカッションは木川保奈美さんが参加していますが、日食なつこさんのご紹介でしたよね?

「はい。日食なつこさんのライブを観た人から『パーカッションがいい!』っていう話を聞いて、紹介していただきました」

――即興演奏打楽器集団のLA SEÑASのメンバーとサンバダンサーのみなさんが参加したMVが衝撃でした。

「監督は寿司くん、つまりヤバT(ヤバイTシャツ屋さん)のこやまくんです。ダンサーは寿司くん側が探してくれて『この人たちです』と送っていただいた写真の中に、世界的ダンサーの中島洋二さんがいらっしゃったんですよね。『ああっ! この人です!』ってなりました。出演してくださった全員に華があり、陽の空気を纏っていて派手。完成したMVを観て、『俺がいちばん地味だな』って思いました(笑)」

――(笑)。打首獄門同好会の3人全員、サンバの衣装が似合っていました。

「“死亡フラグを立てないで”のMV撮影から2ヶ月くらい間があったんですけど、俺は健気に日焼けサロンに通いました(笑)」

――(笑)。キャスティングの絶妙さという点では、“死亡フラグを立てないで”のMVに参加された桃乃木かなさんも見事でした。彼女は有名なジロリアンですが、“私を二郎に連れてって”がご縁に繋がったんですか?

「そうだったみたいです。こっちもジロリアンなので、ラーメン二郎を全店制覇したというお噂はかねがね聞いていました。『もしMVで役とかありましたら』とご連絡をくださったのが去年の秋頃だったんですよね。“死亡フラグを立てないで”は話の流れ的に1サビで俺だけ天国にいることになってしまうんです。『どうしよう?』と思っていろいろ考える中で『天使が連れてったらどうだろう? 誰か天使を頼める人は……』ってなって、桃乃木さんが思い浮かびました。キャスティングには自信があるんですよ。“筋肉マイフレンド”で突然スクワットを始めるエル・デスペラード、“布団の中から出たくない”や“なつのうた”のコウペンちゃんとか、キャスティングに定評のある大澤敦史です(笑)。(“明日の計画”などでコラボした)ナガノさんも今や売れっ子ですからね」

コロナが終わるまでいろいろ続けていたら、「俺たちは負けなかった」っていう気持ちになれるじゃないですか?

――“死亡フラグを立てないで”と“地味な生活”の配信が始まってから少し経ちましたが、何か感じていることはありますか?

「“死亡フラグを立てないで”をツアーで初披露したら、まあ面白くて。『10獄放送局』内で解説した振り付けをある程度覚えて一緒にやってくれる人がいっぱいいるんですよ。『この曲、ライブで面白い』って改めてわかりました。『今のライブでできる楽しいこと』っていうものになってます」

――お客さんが一斉にスクワットをする“筋肉マイフレンド”もライブで楽しいですし、“牛乳推奨月間”も様々な形で盛り上がりましたし、コロナの影響で様々な制約が生まれた中でも「生活密着型ラウドロック」という打首獄門同好会のスタイルは有効でしたね。

「武器を奪われたバンドがいっぱいいる中、我々は武器が残っていたという恩恵がありました。いろいろな制約が出てきても、生活はありますからね」

――パイロットとのコラボの“PILOT STORY”も楽しかったですし、「打首獄門同好会は楽しさを諦めないバンドである」というのが、この2年ちょっとで改めて証明されていると思います。

「いやあ、諦めが悪いですよ。コロナが終わるまでいろいろ続けていたら、『俺たちは負けなかった』っていう気持ちになれるじゃないですか? だからそういうことは示したいですね。意外と強いバンドなんですよ。年齢に負けない人、病気に負けない人もいますし(笑)。何があっても負けないっていうのを徐々に見せられているのかもしれないです」

――“地味な生活”のMVに英語字幕の他にポルトガル語字幕も付けたのも、この状況下での攻めの姿勢を感じます。

「ブラジルの方々にも観ていただきたいですね。リオのカーニバルのタイミング辺りで話題にならないかな? 中島洋二さんはリオに渡るので、そういうきっかけとかで向こうの人に広まったらいいなあって思ってるんですけど」

――“布団の中から出たくない”が海外でバズりましたし、海外進出の動きは今までもありましたよね?

「はい。2020年の『SXSW』に結局出そこなってしまって。アメリカでどういう反応があるのか見てみたかったんですけど。コロナが落ち着いてきたら海外でライブをやりたいですね」

――結論はやはり「新型コロナウイルスが憎い」ということでしょうか?

「はい。憎いですねえ。いろいろぶっ潰されましたから」

――2020年から2年連続、全国ツアーのファイナルがコロナによって潰されましたし。

「そうなんです」

――先日「新型コロナウイルスが憎いツアー2022」がスタートしましたが、ツアーファイナルは12月10日(土)の横浜・ぴあアリーナMM公演。「新型コロナウイルスが憎かった」という過去形のタイトルには、強い願望を込めていますよね?

「はい。『ここまでにコロナ終われ!』という気持ちを込めて、このタイトルにしました。『獄至十五ワンマンツアー』のファイナルも含めると3回潰されてますから、『そりゃ憎いよな』って納得してもらえると思います。ツアーファイナルをできた最後が2018年ですからね」

――この2年半くらい、いろいろなバンドがこの状況と闘い続けている姿に心打たれることが多いんですけど、打首獄門同好会はそういう存在の代表格ですよ。

「ありがとうございます。ダイブ、モッシュ、サークルとかがありきの曲がいっぱいあるバンドはウチよりもやりにくさがあると思うんですけど、それでも折れてない姿勢のライブをやってるのを見ると頼もしくなりますよね。ウチは曲がりなりにもこういう状況でも武器を持ってるバンドだから、折れてる場合じゃないです。『ウチにはスクワットがある!』『ウチにはVJがある!』っていうのがあるので、最前線でやっていかなきゃ駄目なんですよ。『ライブハウスが元に戻るまで止まらない!』っていうのが示せれば、多分それが励みになってくれるっていう人もいるのかもしれないので、あとひと踏ん張りだと思ってます」

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