【インタビュー】ブラックミュージックを基盤にしたバンドが国内シーンで増えているからこそ。luvがアルバム『wabi-sabi』で突き詰めた、自分たちなりの道

【インタビュー】ブラックミュージックを基盤にしたバンドが国内シーンで増えているからこそ。luvがアルバム『wabi-sabi』で突き詰めた、自分たちなりの道

「ソウル、R&B、アシッドジャズなどのブラックミュージックをルーツに……」というバンドが今の日本の音楽シーンにはたくさんいることに、luvははっきりと気づいている。なんなら彼らは結成当初から、cero、Suchmosなど自分たちが憧れた上の世代とはいかに違うことをやるかに意識的なバンドだった。2024年7月にメジャーデビューし、2025年は「より多くの人にluvの音楽を届ける」ということに意識を置いて積極的に活動を行った。そして今年は、バンドとしてのオリジナリティを世に見せつけるゾーンへと突入している。日本で生まれ育った者が鳴らすことのできる、または今のluvが鳴らせる、ブラックミュージックとは何か。その思考と挑戦の先で、日本人の精神性や伝統を表す言葉を用いながら、一冊の文学のように物語を描く1stアルバム『wabi-sabi』が完成した。インタビュー=矢島由佳子 撮影=YUKI KAWASHIMA

このアルバムは自分たちのやりたいことを突き詰めました。突き詰めすぎてキャッチーから離れていくのも違うなと思うし、でもかっこいいものがいいし、その塩梅を考えたアルバム(hajime)

──最初に訊くと、それぞれの名前の表記を変えたのはどうしてですか?shotaro kaneda(Dr) こういう取材やラジオの時とか、プロフィールには「sho」「Ofeen」と書いてあるのに普通に本名で呼んじゃって、いろんな人を混乱させてしまうので(笑)。hinata miyake(Vo・G) もうええかなと思って。本名大公開スペシャル(笑)。baba kazuma(B) 適当につけた名前がここまでつきまとうとは思ってなかったもんな。──このタイミングで変更したことに、特に深い意味はなく?全員 ないです!──わかりました(笑)。とはいえ『wabi-sabi』は、luvが新たなモードに入っていることがわかるアルバムだと思います。EP『The Seeds』の取材時に「この気分や方向性はここで終了。来年(2026年)からは次のモードに行く」ということを宣言していたけれど、本当にその通りで。昨年は多くの人にluvを届ける意識で活動して、そこで基盤を固めたうえで今、バンドとしての独自性を磨く方向へと進んでいることを感じました。hinata ありがとうございます。──これを作り上げた今、どんな気持ちですか?hinata ひと安心。hajime(DJ) ほんまに(アルバム制作が)終わらんと思っていたので、ほっとしました。納得のいく作品を作れたこともあって「安心」という感じですね。自分たちのマックスを出せたかなと思います。kazuma 夏、暑かった記憶なくない? ずっと室内にいたような気もする。──制作でずっとこもってた?hinata 7、8月はマジで記憶がない……。──既発曲は3曲のみ(“hora”、“Blessed”はアルバムからの先行リリース)で、10曲が新曲ですもんね。『The Seeds』から1年という短いスパンで、よくこれだけの曲数を作ったなと思いました。shotaro hinataが持ってきてくれた曲でアルバムに入ってないものもあるので、そこも含めると多分信じられないくらい作ってますね。

──今回hajimeさん、takayaさんが作曲者クレジットに入っている曲が増えましたけど、一緒にゼロイチを作っていくことが増えたんですか?hinata 上京して家が近くなったからというのもありますね。hajime 実家じゃなくなって、何時に起きてもいいし、何時でも音出せるから、いっぱい作ったというのもある。hinata それやな。エグいこもり方をしてました。──takayaさんは、今回のアルバムにどんな印象を持っていますか?takaya hirosawa(Key)  『The Seeds』まではデビューして間もなく、ずっと鍛錬を積んできた状態で。今回はそれが基礎にあるから、クリエイティブにリソースを割きながら作業ができたと思います。個人のプレイでいうと、身体性とか根源的に溢れ出てくるものに目を向けようという意識があって、それをコントロールする術をある程度培ってきたから、「あとはもう自分のやりたいことを忠実にやる」ことを実現しやすかったなと思います。──hajimeさんはどうですか?hajime 『The Seeds』までは広く届けるイメージだったんですけど、このアルバムは自分たちのやりたいことを突き詰めました。突き詰めすぎてキャッチーから離れていくのも違うなと思うし、でもかっこいいものがいいし、その塩梅をめっちゃ考えたアルバムかなと思います。──まさにそこは今日訊きたいポイントでした。「いろんな人に聴いてもらう」ということを意識した去年を経て、今年は「いろんな人に聴いてもらう」と「やりたくないことはやらない、やりたいことをやる」のバランスを見極めながら活動していたのだろうなというふうに見えていて。hinata そこだけを気にしてたみたいなところがあるっすね。hajime 普通にポップスをやっても自分らの色が出るわけじゃないし、かと言って僕らのルーツにあるものをガチで突き詰めても、今それを最大限出せるかって言われたらまだまだやと思うし。今の自分らが実現できる、現実的なちょうどいい塩梅を探り続けて、いろんな試行錯誤のうえにできたのがこの13曲かなって思います。
【インタビュー】ブラックミュージックを基盤にしたバンドが国内シーンで増えているからこそ。luvがアルバム『wabi-sabi』で突き詰めた、自分たちなりの道

今回、ドラムの録り方とかを古いスタイルにしてみることで自分らのルーツを取り入れて、ポップとの度合いを調整していったところがありますね(hinata)

──luvは活動初期から、自分たちが憧れた上の世代や、同じルーツの同世代とは違うことをやる、つまりはluvの独自性とは何かということに、すごく真面目に向き合ってきたバンドだと思っていて。その中で、個性を際立たせられたのがこのアルバムだなと思ったんですよね。hinata それは大変ありがたいお言葉ですね。我々らしさというところは、今回マジで頑張りました。──特に今回、ドラムの音に磨きがかかりましたよね。録り方を変えたりしたんですか?shotaro 今年のシングルからテックさんにチューニングしてもらっていたんですけど、アルバム曲はそこで教えてもらったことを活かして、テックさんのもとで自分でチューニングするという、ある意味修行のアルバムでもありました。あと、全曲同じドラムキットを使って叩くことで、アルバム全体に統一感を出そうという目論見が僕の中であって。曲によって録り方や音色を変えているんですけど、似たようなニュアンスにはなっているんじゃないかなと思います。プレイでいうと、歌を立たせるのはもちろん大事だと思っていたんですけど、逆に歌を立たせすぎると自分の意思が出なさすぎて、それはただもたれかかっているだけなんじゃないかと思って。自分なりの解釈のドラムをできるだけ詰め込むイメージを持ってプレイしていました。あえて決めない場所を作ってレコーディングでアドリブをやってみたり、そういうことを試せるようにもなったのかなと思います。hinata ドラムを録る時のマイクの本数を極端に減らしたり、マイクの立て方を変えたりもしました。今、日本にもブラックミュージックをやる人たちが多いですし、それを見たり聴いたりしてても、やっぱり相当詳しくて技量がないとしんどいなと思うし。だから今回できることとして、録り方を変えてみたんです。家で本チャンのテイクを録ったものも多いんですけど、ドラムの録り方とかを古いスタイルにしてみることで自分らのルーツを取り入れて、ポップとの度合いを調整していったところがありますね。──ああ、面白い。録り方で古き良き空気感を纏わせることで、今の時代の「ポップ」と「キャッチー」とのバランスを調整したんですね。hinata そこをいちばん頑張りましたね。──オーストラリア出身のBoy Sodaをフィーチャリングで迎えた“Blessed”は、自分らのルーツにあるブラックミュージックをやるという意味では、いちばん理想形のものができたんじゃないですか?hinata そうですね。歌う人があんなスーパーマンやったら、全部委ねたいなって思う。これやったら、自分で聴いても誰に聴かれても別に恥ずかしくないというか。shotaro セッションの時、Boy Sodaの歌にすっごくグルーヴ感があって、あれ? これ俺負けてんじゃないか?みたいな。めちゃくちゃいい刺激になりました。kazuma 上手さに引っ張られるセッションでしたね。──そもそも、どういう経緯で一緒に曲を作ることになったんですか?kazuma Boy Sodaもワーナーミュージック所属で、彼が日本に来るタイミングで一緒にスタジオ入りませんか、あわよくば曲でもできたらいいよね、ということからセッションしたのが、そのままアルバムに入ったという流れでした。
【インタビュー】ブラックミュージックを基盤にしたバンドが国内シーンで増えているからこそ。luvがアルバム『wabi-sabi』で突き詰めた、自分たちなりの道
次のページ全部、曲が違うだけで言うてる内容はほぼ一緒なんですよ。それをひと言で言うのはむずいけど……私は私、よそはよそで割り切りましょう、ということなのかもしれん(hinata)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on