カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST

9月9日を「9mmの日」と位置づけ、毎年さまざまな企画を催している9mm Parabellum Bullet。今年は結成10周年のアニヴァーサリー・イヤーというわけで、恒例の自主企画イベント「カオスの百年」のvol.10を9月7・8・9日の3日間にわたって開催した。初日はストレイテナー/Wienners、2日目はKEYTALK/TOTALFATをゲストに迎え、全日3マン形式で行われた当イベント。その最終日、10-FEET/ACIDMANというメジャー・デビュー10年越えの先輩バンド2組を迎え撃ち、華やかな祝祭感に満ち溢れたステージの模様をお届けする。

<10-FEET>
カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST - all pics by橋本塁(SOUND SHOOTER)all pics by橋本塁(SOUND SHOOTER)
開演時刻の18時半ジャスト。暗転と共にフロア両脇のビジョンに「カオスの百年 vol.10」の文字が映し出され、続いて「10-FEET」の文字が出現。開演SEのファンファーレに高らかなクラップが響きわたる中、TAKUMA(Vo・G)、NAOKI(B・Vo)、KOUICHI(Dr・Cho)の3人が現れる。「さあ行くぞ、渋谷! 気合入ってるかー!?」というTAKUMAの第一声から突入したのは“STONE COLD BREAK”。イントロでいきなりオイコールを巻き起こすと、「どんなカオスを見せてくれんだよ!」と煽り立てながらモッシュとダイブが溢れ返るフロアの空気をがっつり温めていく。その後も“RIVER”“JUNGLES”と必殺ナンバーで攻め立てて、巨大な一体感を築き上げていく3人。「カオスの?」「百年!」、「午後は○○?」「おもいッきりテレビ!」というコール&レスポンスでオーディエンスを沸かせつつ、すかさず畳み掛けた“super stomper”で満場のハイジャンプを生み出すという息をもつかせぬ展開で、オーディエンスの歓喜を底から突き上げていく。

“蜃気楼”で熱いシンガロングを響かせた後は、「大人になればなるほどムキになるのが難しくなっていく。だけど今日はお前らと全開でムキになりに来ました! 昔はよくダイブしてたなとか、昔はよく前の方でライヴ観てたなとか思って縮こまっている奴、かかってこい!」と叫ぶTAKUMA。そんな剥き身の闘争心そのものと言える“1sec.”で沸点越えの狂騒感を生み出したかと思いきや、9mmの名曲“Supernova”のフレーズをもじった「俺の母ちゃん、実はクリオネ♪」という替え歌でシュールなシンガロングを導き出してしまう一幕も。そんなお茶目さも含めて、エモーションの限りを尽くして天高く上り詰めていく10-FEETのサウンドは清々しいまでの輝きを放っている。最後は“その向こうへ”の切実な轟音で確かな未来へと繋がる扉を抉じ開けて、“goes on”のエネルギッシュなサウンドで絶頂へ。「隣の人とハイタッチ!」というTAKUMAのアジテートに導かれ、肩を組んだオーディエンスによる円陣やハイタッチの輪がフロア一面に広がる中、至福の空気に包まれたステージは大団円を迎えた。

<ACIDMAN>
カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST
お馴染み“最後の国(introduction)”のSEに合わせて、一糸乱れぬクラップが響きわたるステージに登場した大木伸夫(Vo・G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)の3人。「今日という日は、この瞬間は今しかない。だから最高の瞬間と言えるように、最高の一日にしよう!」という大木の挨拶に引き続き、佐藤の前のめりなビートから“造花が笑う”に雪崩れ込む。瞬時にフロアを覆い尽くすソリッドな3ピースのアンサンブル。浦山のシャープなドラミングから“ストロマトライト”へ突入すると、バチバチと点滅するライトの中、大木のスモーキーな歌声と硬質なアルペジオに彩られたダイナミックな音塊が宇宙へと飛翔していく。たった3人でミクロからマクロまで描き出してしまうような壮絶なパフォーマンスに惜しみない賛辞を送るかのように、曲が終わると同時にフロアではメンバーそれぞれに向けた声援が次々と飛び交った。

“EVERLIGHT”“アルケミスト”の連打で愛とロマンに満ちた雄大なサウンドスケープを広げた後は、「9mm、結成10周年おめでとう。レーベルメイトであり後輩だけど、今では友達のように尊敬し合っています。9mmはバランスがちょうどいいですよね……俺らの次に(笑)」と告げて笑いを誘う大木。それも納得、時折3人で向き合いながら鬼気迫る勢いで掻き鳴らされるバンドサウンドは、年を追うごとに崇高で切実な説得力を増し続けているような気がする。中でも圧巻は、最新シングル“Stay in my hand”で真っ白な光の中へ飛び込んだ後、佐藤がオイコールを煽り立てる中でスタートした“ある証明”。浦山が叩き出すパワフルかつ正確なビート、佐藤が激しく身体を揺り動かしながら奏でるグルーヴィーなベースライン、そして大木の清冽なギター・フレーズとエモーショナルな絶唱が火花を散らし合う轟音は、O-EASTを一瞬で恍惚の世界へと連れ去ってしまうような破格のエネルギーとスリルを持っていた。そして「心を込めて歌います」と最後に披露されたのは“ALMA”。聴き手の心の奥底と共鳴しながら宇宙の果てへと上り詰めてしまうようなスケールの大きな音像が、場内の隅々まで沁みわたって美しくも感動的なフィナーレを描き出した。

<9mm Parabellum Bullet>
カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST
そして20時35分。バンドのバックドロップが堂々と掲げられたステージに、9mm Parabellum Bulletの4人が登場! 挨拶代りの轟音でいきなりフロアを震撼させると、菅原卓郎(Vo・G)の「よく来たなみんな!」という絶叫から突入したのは“Punishment”。菅原/滝 善充(G)/中村和彦(B)の3人がステージ前方にせり出して超速プレイを披露する中、クラップとモッシュが入り乱れるフロアは壮絶なディスコ空間へと化していく。勿論、華麗にスティックを振り回しながら爆裂ビートを響かせるかみじょうちひろ(Dr)のパフォーマンスも絶好調だ。さらにフロア一丸の絶唱にまみれた“Scream For The Future”、盛大なオイコールとハイジャンプを導いた“Discommunication”と畳み掛け、翌9月10日に配信リリースを控えた新曲“生命のワルツ”へ。ザラついた3拍子のアンサンブルとメロディアスな歌声でミステリアスな迷宮へと引きずり込んで、むせ返るようなフロアの熱気をうなぎ上りに高めていく。

カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST
3日間にわたってカバー曲を1曲ずつ披露していた今回のステージ。初日の山本リンダ“どうにもとまらない”、2日目のメタリカ“Motorbreath”に続いて、3日目に披露されたのは2日目と同様“Motorbreath”! 滝の鋭利なギター・フレーズとともに、殺傷力抜群の痺れるような爆音がフロアに突き刺さっていく。さらに“Wanderland”のドラマチックなメロディと奥深いアンサンブルで静と動のコントラストを描き出すと、バンド初期のキラー・チューン“sector”へ。菅原/滝/中村の3人で一斉に楽器のヘッドを振り上げて演奏をスタートさせると、その後は脇目を振らずに猛ダッシュ。スリリングな轟音とともに鬼気迫るようなシンガロングが響きわたった場内の盛大な狂騒感を物語るように、曲を終えると同時に菅原が力強いガッツポーズを突き上げた。

カオスの百年 vol.10(3日目)@TSUTAYA O-EAST
「最高の3日間になっています。ACIDMANとストレイテナーに初めて出逢ったのは(2006年の)『MUSIC ON! TV GG06』というイベントで。その頃から俺らは殺伐として見えていたみたいで、今日もぶっ殺すってつもりでやっているんだけど……バンドは夢を見せる存在であるべきだと思っていて。それだけじゃなく、音楽を聴き終わって夢から覚めた後にも元気を与えられるのが本当にカッコいいバンドだと思っていて。俺たち10年かけてまあまあそれが出来るようになってきたんじゃねぇかなという気がします」という菅原の言葉に熱い拍手が沸き起こる。そこから“ハートに火をつけて”の肉感的なグルーヴでフロアを燃え上がらせると、冒頭から壮烈なシンガロングが響きわたった“Black Market Blues”へ――視界に映る全てのものを一瞬で吹き飛ばしてしまうような獰猛なサウンドが、10年間のキャリアで積み上げてきた自信や確信と相まって途方もない祝祭感を描き出してしまうさまは、痛快というより他になかった。そしてラストは“marvelous”“Talking Machine”“(teenage) Disaster”のメジャー1stE.P.収録曲の3連打! バンド結成10年を過ぎても一向に衰えることない衝動と狂気を全身全霊で解き放ち、ステージを豪快に締め括ってみせた。

3組それぞれが初期曲から最新シングルまでキャリアを幅広く網羅したセットリストを繰り広げることで、長きにわたって磨き上げてきた確固たるアイデンティティを見せつけた充実の一夜。中でもホストである9mmのステージには並々ならぬ気合いが見て取れたし、デビュー10年を経てもなおロックシーンの中心で勝負し続ける先輩バンドの熱演を受け止めて、自らも更なる高みへ到達せんとする前向きでアグレッシヴなムードに満ち溢れていた。9月27日からはBIGMAMA/TRICERATOPS/THE BAWDIES/the HIATUS/OGRE YOU ASSHOLE/the telephonesら並み居るライヴ猛者を迎え撃ちながら12月11日の新木場STUDIO COAST公演でファイナルを迎える結成10周年記念ツアー「Next Bullet Marks Tour 2014」がスタート。ライヴ中に「これからもよろしくな!」と菅原が何度も告げていたように、4人が渾身の勢いで解き放つ破格のロマンと闘争心に満ちた轟音は、今後も全国各地でダイナミックに鳴り響いていく。(齋藤美穂)

■セットリスト
<10-FEET>
01.STONE COLD BREAK
02.RIVER
03.JUNGLES
04.super stomper
05.蜃気楼
06.1sec.
07.その向こうへ
08.goes on

<ACIDMAN>
01.造花が笑う
02.ストロマトライト
03.EVERLIGHT
04.アルケミスト
05.Stay in my hand
06.ある証明
07.ALMA

<9mm Parabellum Bullet>
01.Punishment
02.Scream For The Future
03.Discommunication
04.生命のワルツ
05.Motorbreath
06.Wanderland
07.sector
08.ハートに火をつけて
09.Black Market Blues
10.marvelous
11.Talking Machine
12.(teenage) Disaster
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