空想委員会@Zepp DiverCity

空想委員会@Zepp DiverCity - all pics by 釘野孝宏all pics by 釘野孝宏
昨年9月から3ヵ月にわたり全31公演の対バンツアー「首謀者:空想委員会 大歌の改新 第二期」を行った空想委員会。約半年ぶりとなるワンマンライヴ「首謀者:空想委員会 大歌の改新 外伝」がZepp DiverCityにて行われた。彼らにとって過去最大規模のキャパシティの会場ではあったものの、それでもやはりバンド-オーディエンス間の距離を感じさせないような温かい空気。常にリスナーのことを考え、誠実に丁寧に音楽を届けようとしてきた3人の人間味が滲み出たかのようなライヴだった。

空想委員会@Zepp DiverCity
空想委員会@Zepp DiverCity
SEが鳴り、オーディエンスのハンドクラップに迎えられる形でステージ上に登場したメンバー。疾走感溢れるイントロ、高速で点滅を繰り返す照明――「始まりの季節」特有の昂揚感と焦燥感をないまぜにした“春恋、覚醒”でライヴはスタート。そのままたて続けに“独占禁止法”“23:50”と演奏していく。前回のワンマンと比べてまず驚いたのは、サウンドのダイナミクスが広いこと。特に佐々木直也(G)&岡田典之(B)の歌心満載なフレージングは、自身の情けなさに対する怒りを唄う“独占禁止法”の爆発力から、“23:50”に潜む別れの切なさまで、満遍なく表現していた。そして、そんなサイド2人のサウンドがあるからこそ、委員長こと三浦隆一(Vo・G)が真っ直ぐに唄う言葉一つひとつが、歌の中に描かれたストーリーがとてもクリアに耳に飛び込んでくる。「一緒に踊ろうぜー!」という委員長の言葉を皮切りに“千里眼”のダンスタイムへとなだれ込んだあとのMCでは、「今日どこから来たの?」という話題の下、フロアから様々な地名が挙がる(「台湾」という声も!)。「せっかく来たので悔いのないように思い残すことなく、安全かつ健全に楽しみましょう!」(委員長)と会場全員で誓ったのだった。シンコペーションを多用したメロディラインが耳に楽しい“難攻不落ガール”。複数のリズムパターンを行き来しながら進行していく“美女眼鏡”。勢いやテンポの速さではなく巧みなリズムでオーディエンスを踊らせていく、というこのバンドだからこその楽曲で会場が温められていく。難しいことをやっているのにそれを感じさせない、あくまでもキャッチーで親しみやすいものに昇華していくバンドの腕がこういった楽曲では特に堪能できる。そして、オーディエンスが息を呑んで聴き入った“初手、リーサルウェポン”(演奏後に委員長がエフェクターを踏む音がハッキリ聞こえるほどの静けさだった)、続けて“二次元グラマラス”へ。インディーズ時代にリリースした1stミニアルバム『恋愛下手の作り方』からの2曲を披露してバンドの進化を見せたあと、委員長は「ツアー中に『今やったらヤベーぞ』って言いながら久しぶりにやり始めて。さすがって思いましたね!」と上気しきった様子で手応えを語っていた。

空想委員会@Zepp DiverCity
空想委員会@Zepp DiverCity
サングラス姿の委員長によるシンセのサウンドがサイケなセッションを加速させた“残響ダンス”ではピョンピョンと飛び跳ねるオーディエンスはもちろん、リズムに乗りながら軽くダンスする佐々木、ドラムセットの近くまで駆け寄ってテディ(Dr/顧問)と音を合わせていく岡田、というふうにメンバーが楽しそうに演奏する姿も目立つ。そんなハイテンションな雰囲気から一転、数秒間の雨音から始まったバラード“プロポーズ”。間奏にてヴォーカル/ギター/ベースそれぞれのフレーズが絡み合う様子、また、その直後ほぼアカペラ状態で委員長が丁寧に唄いあげた箇所には胸に迫るものがあった。「僕の頭の中の空想ディスコへようこそー!」(委員長)と“空想ディスコ”へ突入すれば、フロア中央真上のミラーボールに加え、ステージ上にある4つの小さなミラーボールも回転! カラフルな照明も華を添えるなか、岡田&テディのソロ対決、さらに佐々木の背面ギターソロが炸裂し、オーディエンスの興奮度は最高潮に達していく。ちなみにその間委員長はメンバーのすぐそばというベストポジションでカメラマンに徹していたのだった。ここでツアーでの思い出をメンバーそれぞれが話すことに。佐々木は「カッコいいバンドばかりで刺激をもらったしみんな仲良くしてくれるんですよ」と前置きをしたあと、phatmans after schoolやLyu:Lyuとステージ上でコラボできた喜びを語り(佐々木自身は楽器を持たずに踊りに徹していたそうだが、それでも初めて他バンドとコラボできたのが相当嬉しかったらしい)、岡田は高崎公演のライヴ直前、SEが鳴っている最中に駆け込んだトイレにトイレットペーパーがないというピンチに直面したことを暴露。委員長はツアー中に買って愛用していたブレスレットがこの日の物販の福引きの景品になっていることを明かす。そこから「くじ引きといえば夏祭り」と繋げた“作戦コード:夏祭り”では無数のハンドワイパーがフロアいっぱいに広がり、佐々木が「お台場そんなもんか!まだ体力残ってるだろ!?もっと声出せるだろ!?」と煽り倒せば“雨男のメソッド”では「オイ!オイ!」と力強い声が湧き上がってくいく。そして《君よ不幸せであれ》のフレーズを筆頭に、ひときわ歌詞が鮮烈な“純愛、故に性悪説”での、委員長がその真っ直ぐな歌声を濁らせ叫ぶようにして感情を落とし込む……という渾身のヴォーカルは間違いなくこの日のハイライトのひとつだった。「2015年始まって1ヶ月。このライヴで空想委員会、一区切りでございます。『大歌の改新』が終わって新たなスタートをきります。最後に空想委員会の原点ともいえる曲を演奏したいと思います。今日はありがとうございました」――そんな委員長の言葉のあと、先月発売されたEP『空想片恋枕草子』収録曲にして初期から大切にされてきた楽曲“マフラー少女”で本編は終了した。

空想委員会@Zepp DiverCity
居残り(アンコール)を求める声に応えて再登場したメンバー。「僕にとっても空想委員会にとっても一生忘れられない日になりました。みなさんはどうですか!?」と佐々木が問いかければ、フロアからはもちろん拍手と歓声が返ってくる。そのあと、2月26日に行われるトーク&ライヴイベント「首謀者:空想委員会 『大歌の改新』第二期 宴編」、4月に開催される東名阪各2デイズのツアー、さらにオフィシャルモバイルサイト発足について一気に告知(詳細は空想委員会オフィシャルホームページをご覧ください)。“波動砲ガールフレンド”に続けて、「このライヴが終わったらみなさん家に帰りますね。明日からそれぞれの生活が始まって、良いことも悪いこともあると思うけど、一緒に頑張れたらいいなと思います。頑張ったあとにはこうしてまたみんなで集まってワイワイしましょう」(委員長)と“単独飛行少年史”を演奏。オーディエンスたちとライヴハウスで再会を堅く約束したのだった。全てを抱えて未来へ羽ばたく意志を唄ったラストチューン、そして先のMCで言っていた「今日で一区切り」「新たなスタート」という言葉。これから彼らはどんな成長を遂げ、どんな音楽を私たちに届けてくれるのだろうか。《未だ見ぬ場所 新世界へ羽ばたいていく》というフレーズを聴きながら、空想委員会の未来へ思いを馳せた。(蜂須賀ちなみ)

■セットリスト

01.春恋、覚醒
02.独占禁止法
03.23:50
04.千里眼
05.難攻不落ガール
06.美女眼鏡
07.初手、リーサルウェポン
08.二次元グラマラス
09.自演被害依存症
10.残響ダンス
11.プロポーズ
12.レインブーツダンサー
13.完全犯罪彼女
14.空想ディスコ
15.作戦コード:夏祭り
16.八方塞がり美人
17.雨男のメソッド
18.純愛、故に性悪説
19.マフラー少女

(encore)
20.波動砲ガールフレンド
21.単独飛行少年史
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする