M!LKのリーダー・
吉田仁人が全曲の作詞作曲を手掛けた2nd EP『東京』。収録されている5曲は、東京で暮らす5人の主人公を描いている。目標、夢、理想を抱いた人々に絶望、孤独、挫折も突きつける街を舞台とした物語は、耳を傾けるリスナーそれぞれの人生とリンクするのだと思う。鹿児島から上京した彼自身の体験も土台となっている描写の数々は、懸命に日々を重ねる人生にとても温かな眼差しを向けている。楽曲として昇華された喜怒哀楽がシンガーソングライターとしての才能の萌芽だけでなく、グループでの歌やダンスでも発揮される豊かな表現力へと繋がる感性を示している点にも、ぜひ注目していただきたい。各曲に込めた想い、人生観、創作に対する意欲、ステージで抱く感情⋯⋯作品と音楽活動について、様々な切り口で語ってくれた。
インタビュー=田中大
東京にはいろんな人たちがいるし、成功や失敗とかの目盛りが振り切れるような経験をする場所が多いので、そこになぞらえたストーリーで描きたいと思ったんです
──昨年8月に配信リリースした初のEP『さえない暮らし』に対する M!LKのメンバーのみなさんの反応は、いかがでしたか?「よかったよ」と言ってくれました。佐野(勇斗)が“オレンジ”がすごく好きと言ってくれたり、かなり前ですけど、(塩﨑)太智が“カーテン”のMVのパロディをしてくれたこともありましたね(笑)。いちばん近い人たちによかったと言ってもらえて、ひとつ安心できました。
──ファンのみなさんも、とても喜んでいましたね。はい。それがすごくありがたくて。「やりたい」「出したい」というのがあっても、楽しみにしてくださるみなさんがいないとリリースできませんからね。パッケージになって、MVやジャケット撮影、アレンジとかでも、たくさんのプロのみなさんに入っていただいて、ものすごい熱量で接してくださったのも嬉しかったです。そういえば、今回の品番、誕生日なんですよ。
──NZS-1215(初回限定盤)、NCS-11215(通常盤)⋯⋯誕生日は12月15日?そうなんです。普通はこんなことできないんですけど。たぶん、品番をすっ飛ばしてこの番号を押さえたんでしょうね。やりすぎ(笑)。携わってくださるみなさんがすごく気合いを入れてやってくださって、嬉しいですね。写真とかも6シチュエーションを12時間かけて撮ったんです。この前、MVを撮ったんですけど、ワンカットで見たことないくらいでかいドローンを飛ばしてくださって。僕がやりたいことにすごく期待してくださっているのを感じて嬉しいと同時に、「ちょっとびびるぜ⋯⋯」っていう(笑)。
──(笑)。前作をリリースしたあと、次の作品のイメージや方向性として、どのようなことを考えていました?今、僕が文化放送でやってる『レコメン!』の音楽イベントを去年の8月にやったんです。そこで自分の持ち曲のパフォーマンスをした時、「もうちょっとアゲ曲もほしいな」と思って。「アッパーかつ歌詞が超暗いのを作ったら面白いかな?」とか考えていたのが、形になった感じですね。でも、僕自身がアッパーではないというのがあるので(笑)。僕はハイテンションではないから、「どうしようかな?」という中で思ったのが、「自分にとって熱量がいちばん高いのは、ネガティブな葛藤だったりするのかな」ということでした。
──“東京”という曲もありますが、「東京」がEP全体の主要なモチーフになっていますね。このタイトルをつけたのは、曲の歌詞を書き終わったあとだったんです。“東京”というタイトルは、いろんなアーティストのみなさんの大事な曲になっているじゃないですか? そういうものになり得るかもしれないと思って、あの曲は“東京”というタイトルにしました。
──切り口はそれぞれ異なりますが、都会で一生懸命に生きている人たちの姿であるというのが、5曲の共通する部分だと思います。東京にはいろんな人たちがいるし、成功や失敗とかの目盛りが振り切れるような経験をする場所が多いので、そこになぞらえたストーリーで描きたいと思ったんです。こういうことは、鹿児島から東京に来た自分と切っても切り離せないことでもあるんですよね。
──東京に来て何年ですか?11年経ちました。東京に来てから感情が沸き上がるような瞬間がいろいろありましたし、多くの人よりも早めに仕事に就いて、いろんな経験をしてきたんですよね。人間形成が行われる時期にしてきた経験は、歌詞に昇華できるものがあるんじゃないかなと。今もそういうことを思って曲を作り続けています。
──東京に対してどのような感情を抱いてきました?なんて言うんですかね? 「ここにいるのに何やってんだろう?」とか、自分のことが嫌いになることが多かったように思います。「もうちょっとやれるだろ?」って思うのに動けなかったり、やれなかったり。そういうのがずっとあって、最近までずっと試験場みたいな感じだったというか。「鹿児島は穏やかでよかったなあ」と思いつつも、「でも、ここでしかやれないもんなあ」というのもずっとあったので、足を止めることは、あまりなかったように感じます。
──地元にいた頃は、東京をどのような場所として捉えていました?いろいろなものの先端ですし、羨ましさを感じてたというか。それと同時に「なんてことないね。いけるっしょ!」とも思ってたけど、とんでもない(笑)。いろんな面でハードルが高かったです。
──場所としての東京とはまた別の「東京」みたいなものもある気がするんですよね。出身地は関係なく、住んでいる時点で「東京の人」ですし、東京生まれじゃない人は多数派と言ってもいいくらいなのに、なぜか多くの人がよそ者みたいな感覚を抱き続ける街ですから。血気盛んに、それぞれが何かをやろうとしているというか。「憧れの場所」という概念としても捉えられてる言葉が「東京」なのかもしれないですね。そういう街で感じてきたことを今回の曲に落とし込めていたらいいなあと思っていました。
いろんな感情を繋ぎ合わせたらストーリーになっていったんです。「みんなの生活の中のサントラっぽくなるように」というのも意識しました
──現実と向き合いながら格闘している人の姿が、様々な切り口で描かれていますね。どれが正解とも言えない感じかなと思います。どの曲でもみんな何かをしたくて、きっと目標もあったんですよね。読む本でもそうなんですけど、僕はちゃんと前に進もうとしている姿が好きというか。堕ちていったとしても、成長しても、どちらでもいいんですけど、人間の進んでる姿がいちばん美しいと思うところがあったので、そういうのが曲に表れているかもしれないです。あと、「ハッピーに行こう!」っていうのはたぶん、僕以上に素直に曲にできる人たちがいると思うんです。だからこそ「生きづらさを感じていたり、難しさがあっても、生きてこうよ」というのが、僕が描けることなのかなと。
──吉田さんの本質は、パリピと真逆ですか?大正解でございます(笑)。ほんとひとりが好きで。自分のことを自分がいちばん信じてるし、他の人の意見よりも自分の肌感のほうが大事だったり。自分と向き合いながら、「本当にわかり合える人は何人いるんだろうな?」と思うタイプなんです。
──そういう部分がありつつ、ステージに立ち続けているんですね。ステージに立って、パフォーマンスを通して届けるというのが、芸能界にあるいろいろなコンテンツの中でいちばん心惹かれて、「続けたいな」と思ったことなんです。ステージに立っている時間は何も考えなくていいですし、それをずっとやれているんですよね。最初の頃は反省しかなかったですけど、最近、ライブをするのがめちゃくちゃ楽しくて。
──お客さんも楽しんでいるのを感じながら、どのようなことを思うんですか?僕は「楽しい」という価値を見出していますけど、それを「観たい」と思って、みなさんが時間を僕たちに割いてくださっていることに対して「ありがとうございます」と思いつつ、不思議な気持ちでもあるんですよね。「なぜ好きになってくれたのか?」と考えながら、これまでの努力を信じて、「自分が好きだと感じることをやるのがいちばんだ」と思いながらやるようにしています。
──M!LKのパフォーマンス、ものすごいスキルと努力の上に成り立っていますよね。僕、“Kiss Plan”を観て感動したんです。あのダンス、とんでもないレベルの高さですよ。ありがとうございます。厳しくレッスンをさせていただいたので(笑)。スキルフルなダンスなので、あれは大変でした。
──M!LKでの活動や、演技のお仕事とかも含めて、吉田さんの様々な表現の背景にある感情に触れられるのが、今回のEPということではないでしょうか?そうなっていたらいいですね。お芝居やバラエティの現場と同じように、メンバーそれぞれが個々に動いて、それぞれの魅力を発信するのとなんら変わりないと思っているので。
──今作の5曲はそれぞれフィクション、異なる主人公ですが、源にあるのは実際に抱いてきた感情、体験してきたことですよね?はい。そういう点で言うと「全部僕」ですね。
──ご自身の抱いてきた感情とかを「物語」というフィクションに昇華するうえで、どのようなことを意識しました?全部の曲が僕の26年間の人生の中で抱いた感情ではあるというか。いろんな感情を繋ぎ合わせたらストーリーになっていったんです。自分のありありとしたものをそのまま曲にするというのではないですし、そんなにきれいでもないっていう(笑)。作品になるほどではないなと感じるんです。聴いてくれるみんながちゃんと「私もこういうことあった」と思えるように形作るというか。「そのほうがちゃんと主人公が立つな」というのも思っていました。「みんなの生活の中のサントラっぽくなるように」というのも意識しました。
──たとえば“東京”も、新しい環境でうまくいかなくて、気持ちが腐りそうになった体験をリスナーそれぞれが思い浮かべながら聴くんだと思います。聴いてくださるみなさんそれぞれの中にある思い出を拾いながら聴いていただけたら嬉しいです。“東京”は気持ちが腐っていく道のりもちゃんと描きたかったですし、ひと言で済ますことなく、言い切る言葉をそんなに使わないようにしました。
──《食えたもんじゃねえな》が、とても印象的です。主人公はキャパを超えてしまってる部分があるんでしょうね。ちょっと投げてしまうこの感じから人間味が伝わってくるように思います。
──それぞれの人生を進んでいる友だちと自分を較べて、取り残されたような気がする感じとか、「わかる!」という人がたくさんいると思います。僕ぐらいの年齢になると結婚して子供がいる同級生もいますし、そういうのがこれから先どんどん増えていく中で、「地元にいたらその幸せは得られたのかもしれない」と思うこともあるだろうなと。それで《無茶苦茶だ》とか言ってるんですよね(笑)。
──(笑)。どんな選択を経てきたとしても「あの時、あっちを選んでたら」と思うことはあるし、捨てたつもりの後悔を何度も拾い上げてしまうものです。それは絶対に全員がやることだろうなと思います。「後悔は捨てた」とか言ってる時点で、後悔していることを結構認識していますからね。経験してきたいいことも悪いことも絶対に忘れられるはずはないと思うので。