【インタビュー】M!LKのリーダー・吉田仁人の2nd EP『東京』。5曲に刻んだ物語は、どのようにして生まれたのか? 込めた想いをじっくり語る

【インタビュー】M!LKのリーダー・吉田仁人の2nd EP『東京』。5曲に刻んだ物語は、どのようにして生まれたのか? 込めた想いをじっくり語る

いろいろ学んだり、読んだり、観たり、知ったりすると、自分を赦せる範囲が広がっていくというか。そういう救いがあるように思います

── “やすらぎ”は、東京での覚悟の曲ですね。

はい。次に向けた打開というか、現状の打破感がありますね。

──《放り投げたシャーペンが今更になって/人生の鍵だと 分かる》とか、歌詞の表現がとてもきれいです。

学生時代にどれだけ勉強してきたかなんですよね。「学校で勉強したことは使わない」とか言いますけど、その時にやることをいかにやれるかが、その先の人生の可能性が広がるかどうかに繋がるんだと思います。

──寝ようとしているのにいろいろなことを思い出したり、考えすぎちゃって寝れなくなったりする感じも伝わってきます。

「みんな」って言うと言いすぎですけど、みんなうまく生きられないんでしょうね。少なからず僕にもそういうのがありますし、こういう風にしか生きていけないんだろうなと思っています。夜に考え込んじゃうのってなんなんでしょうね? 大人しく寝ればいいのに。そろそろそういうことをしちゃいがちな人間をアップデートしてほしいです(笑)。

──(笑)。《借りたままのやすらぎを/今夜の空に返します/空いた穴の埋め方は/この町で探します》も、心に残るフレーズです。故郷にやすらぎを借りたというこの感覚、独特な捉え方ですけど、とてもよくわかります。

「やすらぎっていうものが、自分をここに留まらせてしまっている」と捉えて、「明日からまじで頑張ろう!」ということを描きたかったんです。

──前作の取材の時、本を読むのが好きだとおっしゃって、とても納得させられるものを感じたんですよ。今挙げたような言葉の表現は、文学に触れていないとなかなか育めるものではないので。

そうでありたいです(笑)。「勉強」と思わずにやっていることも大事になってくるというか。好きで読んできたものが活きてきていたらいいですね。

──前回、谷崎潤一郎、太宰治、シェイクスピアの話とかをしましたが、純文学にたくさん触れていますよね?

はい。まじでそういうのも読んだほうがいいと思うんです。またいろいろ読みたいんですよね。最近も読書をするようにしています。

──最近、どんなの読みました?

本屋大賞をとりましたけど、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』を読みました。まさにこの世界の話というか。ファンダム経済の話で、「推す人」と「それを取り巻く人」という。すごく面白かったです。「きっとこういう風に思ってくれているのかもしれない」と感じましたし、「『どうにか頑張って』じゃなくていい。何が正解かもわからないし、自分のままでいいや」というのも思いました。いろいろ学んだり、読んだり、観たり、知ったりすると、自分を赦せる範囲が広がっていくというか。そういう救いがあるように思います。あまり触れなくてもいいのかもしれない感情とかに触れられるフィクションの物語は、そういうところがいいですよね。

──“やすらぎ”の最初の部分の《陳列棚の一角みたいなこの部屋に/溢れる本が僕の全て》も、本を日常的に読む人だから出てくる描写だと思います。

結局、自分で見て、動いて、知って、頭に入れたこれしかないということなんです。それが自分を作ってるということだし。この歌詞の主人公は、学生時代に対する後悔みたいなのがあるんでしょうね。

──本棚に並ぶ本は、その人を形成したものだから、履歴書みたいなところがありますよね。

音楽のプレイリストも本棚も、自分が出ますよね。だから恥ずかしい部分、核でもあるんだろうなと。

──よその家に行くと、本棚見ちゃいます。

「あんま見ないで」って言われません?

──言われがちです。

そうですよね(笑)。でも、読んできた本もそうですし、自分の経験からしか自分のその先は作られないんだと思います。

──“やすらぎ”のサウンドは、おしゃれでスタイリッシュですね。歌詞と音が対照的です。

僕の友だちの、えんぷていのボーカルの奥中(康一郎)がアレンジをしてくれました。ライブ想定のサウンドなんです。そこにいかにこういう歌詞を乗せられるか? やりたかったイメージをいい形にすることができました。

──かっこいいカフェで流れそうなサウンドですよ。

よかったです。でも、よくよく聴いてみるとどういう曲なのかわかって沈むという(笑)。そういうギャップをやりたかったんです。歌詞をちゃんと読んでいただけたら見方が変わるんですけど、普通にサウンドを楽しんでいただけたらなと思ってます。

【インタビュー】M!LKのリーダー・吉田仁人の2nd EP『東京』。5曲に刻んだ物語は、どのようにして生まれたのか? 込めた想いをじっくり語る

とんでもないわがままだなと自分の中で若干思ってはいるんですけど。「それを気に入っていただける人がいたらいいな」くらいの気持ちで続けられたらいいなと

──“背伸びのキス”も歌詞と音のギャップがありますね。おしゃれなシティポップ風ですが、恋愛のかなりディープな感情を描いた歌詞ですから。

「誰にぶつけたらいいのやら」という、ベクトルのないラブというか。切ない女の子の曲です。本当に届けたいものが何も届いてないのって、切ないですよね。《愛なんて やわでダサい》とか言いつつ、いちばん固執していますし、「このダサさが人だな」と、歌詞を書きながら思いました。この女の子、ほんと幸せになってほしい(笑)。

──(笑)。“ばいばい”も音と歌詞のギャップですね。疾走感のあるギターロックですから、昨年の『レコメン!』のイベントで思った「アッパーな曲がほしい」が形になったんじゃないですか?

はい。まさしくです。

──歌詞は、被害妄想を拗らせている姿が思い浮かびます。

全部が駄目な方向に入ってしまっていて、東京を離れる人の話です。「アッパーな曲作るぞ!」と思ってレコーディングして聴いたんですけど、「これ、しんどいわ。大丈夫かな? みんな聴きながら元気にイエーイ!ってやってくれるかな?」と思い始めて(笑)。

──(笑)。ネガティブな感情を描いていても、音として響き渡った瞬間に楽しくなって、盛り上がれるのは、音楽の面白さですよ。

失恋を明るく歌うとかもありますからね。コミュニティは属することもできるけど、そこから離れなきゃいけない時は「負けた」という想いになるじゃないですか? それってポジ、ネガということは別として、めっちゃ振り切っていることだと思いますから、“ばいばい”はそれを描きました。《きっとが絶対。絶対がやっぱ/になってしまう前に》のところが自分でも好きです。《僕は弱いから。》と自分で言えるのは、強さでもありますよね。やめるのも続けるのも強さですから。

──大きな決断をした主人公を応援したくなる曲です。

この人はたぶん、東京以外ですごい幸せになると、歌詞を書く時に僕は思っていました。胡散臭い言い方ですけど、人には与えられた使命的なものが必ずあって、この人にとって東京が合ってなかっただけで、きっとこの先、自分で模索して強く生きていくだろうなと。そういうのも感じ取っていただけたらいいですね。

── “Dear”は、東京でたくさんもがいて得たものに対して抱く幸福の歌ですね。

はい。いろいろ経験して、ひとつ山を越えたというか。戦ってきて、山を登るためにいろんなことに順応して、形を変えてみたりとか、いろいろなことをしたけど、結果として自分の中にある「いいな」というものが、いちばん美しいと思う⋯⋯っていう普遍的な愛が、この世の中でいちばん美しいなと感じるんですよね。《手に取れる普通が/なくなってしまわないように》が好きです。どれだけやりたいことができるようになったとしても、日常生活がしっかり送れるような時間をとれるって、素晴らしいことなんです。栄光とかじゃない普通こそが幸せっていうのは、すごく思います。人と人の繋がりが結局は大事だし、当たり前みたいなことを当たり前にいちばん美しく描きたかったのが、この曲です。

──《くだらないことで笑い合える/日々が心を満たしてく》とか、本当にその通りだと思います。

M!LKのメンバーも、いつまでもそういう関係性であり続けてますし、ありがたいなと思うし。そういうのは人でなくても、物、時間、場所とか、なんでもいいんですけど、愛おしく大切に思える何かがあればいいなと思うんですよね。

──2作目のEPを完成させた今、改めて感じることは何かありますか?

もっとやらなきゃいけないことがたくさんありますし、ライブもしたいです。音楽活動を、どういう形であれ続けていきたいと思っています。具体的なことを1個言うならば、「ワンマンライブやりたいよね」というのがありますね。でも、まだ曲数が足りないので(笑)。それ以外の目標はなくて、この芸能界で明確な目標がなく、「やりたいからやる」っていうのでできるのって、そうないなと。そういうのができる唯一の場所がソロなんだと思います。とんでもないわがままだなと自分の中で若干思ってはいるんですけど。「それを気に入っていただける人がいたらいいな」くらいの気持ちで続けられたらいいなと。もちろんそこに熱量をむちゃくちゃ注ぐんですけど。まだまだいっぱいやりたいですね、デモはたくさんあるので。

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