その日、私は人の姿をした希望を見た。
その希望は手を差し伸べるようにして、「なあ、あなたにも生きる力があるんだぜ」と伝えていた。力強く、儚く、愛すべきおかしみにも満ちた、その希望の名前は、宮本浩次。
彼のうたう歌は明るくも暗くもあり、大きくもあり小さくもあり、孤独の歌でもあり、私たちみんなの歌でもある。まだ決着がついていない命は、さまよう心は、それ自体が光だと、彼の歌は証明していた。
6月12日、毎年恒例となっている宮本浩次のバースデーコンサートが神奈川・ぴあアリーナMMで開催された。このコンサートの2日前には、約4年半ぶりのオリジナルアルバム『I AM HERO』もリリース。メディア露出も多く、いたるところで宮本浩次の名前を見る、そんな言わば「宮本祭」といった状況の中で開催された今年のバースデーコンサートである。
60歳、還暦を祝う今年のタイトルは「60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!」。昨年開催された59歳のバースデーコンサートが「最高の日、最高の時」という美しく静けさのあるタイトルだったことを考えると、なんともあっけらかんとした、豪胆でシンプルなタイトルである。しかし、ここにも宮本からのメッセージがあるように思える。還暦だからといってそこは到達点ではなく、宮本にとっては「今いる場所が出発点」なのだというメッセージ。胡坐をかくための玉座に居場所があるのではなく、扉を開き、旅立ち続ける、その「動き」の中にこそ人の居場所はあるということ。宮本は「わかったふり」の妄想にとらわれて身動きが取れなくなることよりも、未知の中で自由に動き続けることを選ぶ男なのだ。(以下、本誌記事に続く)
文=天野史彬 撮影=伊藤彰紀、松田拓、HIROYA ASAI
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年8月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら
*書店にてお取り寄せいただくことも可能です。
ネット書店に在庫がない場合は、お近くの書店までお問い合わせください。