そんな彼女にとって、5月からスタートさせた初のライブハウスでの全国ツアー「夢見行脚」は明らかな転機となるに違いない。画面を隔てたコミュニケーションのみならず、リスナーとの交わりをフィジカルに感情をぶつけ合う場にも求めるようになったことで、彼女の内面とクリエイティブにどのような変化が生まれているのか。先日リリースされたばかりの新曲“恋のfrog”について触れるとともに、活動の原点から表現への向き合い方、今現在のリアルな心情までを網羅した、より深くなるみやを知ることのできるインタビューとなった。
インタビュー=風間大洋
──全国ツアー「夢見行脚」の真っ只中ですが、どんなことを感じながらのライブになっていますか?まず作るところを身につければ自分で歌う必要はないんだって思って、ひたすらインスト曲を作ってました
もっと同じような感覚で7公演続くのかな?と思っていたんですけど、1公演目と2公演目からもう別物だなって印象が強くて。歌っている時の感情とかお客さんの反応、会場の雰囲気も含め、まったく違う経験をしていますね。
──ライブは生モノとよく言いますしね。
何が響いたのか、どこでどういう反応をもらえたかとか、公演ごとに全然違うので。新しい課題も生まれてくるし、逆に前回は気になったことが「あれ、まったく気にならないぞ」ってなることもあって。いろんなところを巡ることで、いろんな経験を積めているなと感じます。
──ある意味フレッシュな感覚を得られているのは、これまで活動形態としてライブを主軸にはしてこなかったからというのが大きいと思うんですが、あらためてここへ至る道のりを振り返ると、活動開始は2021年あたりですよね?
はい。初めてSNSを始めたのが2021年の9月とかかな。もともと性格的に、絶対に会社員にはなれないと小学生の頃くらいから思っていたので(苦笑)、とにかくいろんなオーディションを受けたり、主に芸術方面のいろんな習い事を続けてきた中で、DTMでの曲作りを始めて。ちょうどコロナ禍で、自作のものをSNSで発信する文化が流行っていた時期だったので、試しになんとなく作った曲を上げたのが始まりです。
──もともと音楽的な下地は何かあったんですか?
幼少期からピアノを習わせてもらっていて、初投稿まで十何年間やり続けてました。他にはミュージカルや演劇を通して歌もやっていたことがあったんですけど、作曲は完全に趣味というか。遊びの感覚で小学校6年生くらいから、YouTubeのマイナーなDTM講座とかで色々と学んで。
──世代的には「歌ってみた」とかも身近だったと思うんですが、作るほうに興味が向いたタイプですか。
そうですね。歌への苦手意識がすごくあったので、ボカロ文化が流行った時は自分で歌わなくていい、自分の思いをバーチャルシンガーが代弁してくれるところが素敵だなと思ってました。じゃあ私もまず作るところを身につければ自分で歌う必要はないんだって思って、作るほうに興味を持って。機材とか作曲ソフトまでは揃えられたんですけど、ボーカロイドを導入するお金と知識がなかったから、ひたすらインスト曲を作ってましたね。
──ああ、今の曲たちもオケの部分に起承転結やギミックが詰まっているのは、そこ由来なんですね。
本当にインストが好きで、自分の中では歌のメロディを書き始めたのは最近という認識だから、そっちのほうがこだわりは強いかなと思います。
──インスト曲から自身で歌うスタイルへの変遷はどういう流れだったんですか?かっこいい人間になりたいからかっこいい曲を書こう、ではやっていけないなということに気づいた
しょうがないから楽器のひとつとして使うという意味合いで歌ってみたら、自分のボーカルに対する反響のコメントが多くて。「あれ? 聴いてほしいのはそっちじゃないんだけどな」っていう思いはあったんですけど、あんまり聴いたことない声だとか、機械の声ですか?とかも言われることが多かったんです。私の声ってそんなに特徴的だったんだ?っていう自覚が生まれて、そこを褒めてもらえるんだったら自分のボーカルもひとつの武器として使えるかもなって。そんなに前向きではなかったんですけど、じゃあもう練習しようっていう。
──それは結果的に大きな転機でしたね。
声やボーカルを褒められることがなかったら、ずっとインスト曲にこだわっていたと思います。
──インストとの大きな違いとしては歌があって、イコール歌詞があるわけじゃないですか。インストでよかったタイプの人がそこで何を表現するかという部分は、やってみてどうでした?
最初は歌詞を書くことに本当に苦戦してました。最初は結構明るいポップな曲とか、尖ってかっこいい曲とかを出していったんですけど、曲数が増える度に余裕がなくなってきて。だんだん自分の根っこにある「しんどい」とか「辛い」という今まで抱えてきたことを出すようになったら、それがいちばんスムーズに作れたんですよ。私が歌いたいのはそういうことなんだって気づいたし、実際に暗めの歌詞をSNSに出した時にリスナーさんからいちばん反響をもらえて、そこから「次はこういった題材で書いてほしい」というリクエストにも繋がっていった流れですね。
──掘ったらネガティブな要素が出てきやすいタイプだな、という自覚はもともとあったんですか?
うーん……どっちかというと自分の中の憧れはキラキラした人間だし、ずっとロックな音楽が好きなので、かっこいいことを歌いたい!みたいな思いはあって。根の部分ではもちろん、人よりちょっと落ち込みやすかったり深く考えすぎちゃう性格という自覚はあったんですけど、人前に出てアーティスト活動をするというのはもっと自分の思い描く理想──キラキラした自分でいられるものだと最初は思っていたから、根の部分と音楽での表現がひもづいてなかったというか。かっこいい人間になりたいからかっこいい曲を書こう、ではやっていけないなということに気づいていったんですよね(苦笑)。
──だからか、曲調自体は決してダウナーなものではないんですよね。むしろアッパーなものやコミカルなものが多くて。
自分の声との相性も考えるし、私自身根っこは暗いけど、人と話す時にボソボソしてしまうタイプでもなくて(笑)。全然明るく振る舞えるし、人といる時は楽しいから楽しむけど、実はいろいろ抱えている部分はある。人間誰しもそうなのでは?って思っていて。暗い歌詞だけど別にそれを本当に暗く伝えるわけではなく、取り繕ってるような意味でも曲調は明るくするほうが自分に合っているというか、うまく表現できるなというところに落ち着きました。