【インタビュー】オーイシマサヨシ、アニソン界を背負って見参! セルフカバー集『仮歌Ⅲ』を通して見た、アニソンの今と未来を語る

【インタビュー】オーイシマサヨシ、アニソン界を背負って見参! セルフカバー集『仮歌Ⅲ』を通して見た、アニソンの今と未来を語る

「アニソン界のおしゃべりクソメガネ」を自称しつつ、誰よりも熱い心でアニメ音楽と向き合う稀代のエンターテイナー・オーイシマサヨシ。シンガーとしてほぼ毎クールでアニメ主題歌を担当し、アニソン系フェスでは大トリを務めている。そんな彼のもうひとつの顔はクリエイター。提供した楽曲を自ら歌うセルフカバー集の7年ぶりとなる新作『仮歌III』には、作品やアニソンへの愛が詰まっている。9月には3度目の日本武道館公演、2027年2月には初の横浜アリーナ公演2daysを控える中、オーイシマサヨシは変わりゆくアニソンシーンに何を見ているのか。インタビュー=北野創 撮影=GENKI(IIZUMI OFFICE)

オリジナルの方のことを「本家」と言いますけど、僕は自分の「仮歌」のことを「実家」と呼んでいる

──『仮歌』シリーズはオーイシさんの中で、どんな位置づけの作品なのでしょうか。どの曲も、作品や歌うアーティストさんありきで作ったものなので、自分がしゃしゃり出るつもりはまったくなくて。よく、曲を歌っているオリジナルの方のことを「本家」と言いますけど、僕は自分の「仮歌」のことを「実家」と呼んでいるんですよね。実家を出た楽曲を本家の方に歌っていただいて、初めて製品になる。なので「仮歌」シリーズは「実家も覗いてみる?」っていうスタンスでやらせてもらっています(笑)。──言い得て妙ですね。「本家」の楽曲は歌い手もジャンルもさまざまですが、「実家」だと100%オーイシ印が伝わってくるところが面白くて。まあ作ってるのが僕なんで(笑)。クリエイターには、どう書いてもその人のメロディや言葉が出てしまう人と、カメレオンのように七変化しながらいろんな曲を書く人の2タイプがいて。僕は前者なので、どう手を替え品を替えても「僕」が出てしまうんですよね。──そこは軸足がアーティスト活動にあるクリエイターの強みですね。もっと言うと自分がボーカリストというのも大きくて、歌っていて気持ちいいとか、歌として再現性があるメロディとか、そういうところに軸足を置いています。自分が歌って「ここ気持ちいいな」というのを、シェフとして味見してから料理を出す感覚というか。なので突拍子もないメロディや言葉はあえて入れないようにしていて、ある種のポピュラリティの中で歌える曲、カラオケでもちゃんと歌える曲というのは、ずっと心がけています。──最近はボカロ出身のクリエイターも増えて、そういうメンタリティを度外視した楽曲も多いですよね。でも、それも新しい文脈だと思っています。シンガーソングライターが書く曲とはまた違う感じで、僕から見てもかっこいいし、真似したくてもできない。逆に最近は、ボカロPさんが作ったジェットコースターみたいなメロディを歌いこなせる、タフなスキルのあるボーカリストがどんどん出てきていて。自分もたまに真似したくなる時があります。──そういえばオーイシさんが昨年発表した楽曲“かごめかごめ”は、そういった音楽からの影響を感じました。そう! あれは憧れの塊です(笑)。自分もいろんなアンテナを張っていて、その中でこれくらいの寄り道はできるぞと、自分なりに一生懸命模索して作った曲ですね。気づいてもらえて嬉しいなあ。

──そうやって自分の音楽性の幅を広げてきたわけですね。それと、試してみたい好奇心ですね。「オーイシ節」と言っていただくのはありがたいんですけど、同じ畑を耕し続けると発見が少なくなっていく。僕は今40代ですけど、この好奇心は50代、60代になっても持ち続けていきたい。これがなくなった時はクリエイティブが止まってしまう時、自分でピリオドを打つ時だと思うんです。これからもずっと若いクリエイターに嫉妬しながら(笑)、自分なりに新しいことやジャンルに挑戦してフィールドを広げていきたいし、一生負けず嫌いでいたいなと思います。

アニソンの中から生まれる新しいことは僕の研究対象でもあるし、その流れの中で揉まれながら航海を続けていくのが、自分なりのアニソン道なのかなと

──バンド解散後、ソロで音楽活動を続けながらピザ屋のバイトで食いつなぎ、そこから一念発起してクリエイター/アニソンシンガーとして花開いたエピソードもそうですが、オーイシさんには嫉妬や悔しさがモチベーションとしてあるんですね。めっちゃあります。自分ができないことをやってる人にはリスペクトがあるし、その上での嫉妬心ですね。時代の流れが早すぎて振り落とされそうになる時もありますけど(笑)、それを救ってくれているのはアニソンだと思っていて。アニソンは今や音楽的にも最先端。最近だとJ-POP、J-ROCKアーティストの皆さんもアニメ主題歌を担当するようになり、新しい流れができて、すごく脈動している。アニソンの中から生まれる新しいことは僕の研究対象でもあるし、その流れの中で揉まれながら航海を続けていくのが、自分なりのアニソン道なのかなと。
次のページ人を幸せにしたいという、衒いのない気持ちを、恥ずかしげもなく遂行できるのが自分の長所。それが曲にも出ているのかなと
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