『関ジャム』で解明されたアニソンの今。アニソンらしく聴こえる理由、“ようこそジャパリパークへ”の秘密も

2月17日の『関ジャム 完全燃SHOW』は、「詳しくなくても楽しめるアニソンの今」と題されたアニソン特集がオンエアされた。
一昨年5月に放送されたアニソン特集ももちろん面白かったが、今回は特にわかりやすく、まさしく「知識ゼロでも面白い」内容だったし、踏み込んだ内容もあって知識があった上でも見応えがあった。

その理由のひとつは、アニソン評論家の冨田明宏のほか、プロデューサーの上松範康、大石昌良という今回のゲストだ。
冨田は前回に引き続いての出演だが、上松範康、大石昌良について、簡単に説明すると、上松はElements Gardenという音楽クリエイター集団の代表を務めており、声優初の『NHK紅白歌合戦』への出場を果たした水樹奈々のほか、宮野真守、蒼井翔太など、いわゆる声優アーティストとして今や世間に知られている面々の楽曲を手がけている。さらに、アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの原作および音楽プロデュースや、(番組では触れられなかったが)『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの原作・企画原案・音楽プロデュースなど、世間的にも知られているアニソン・キャラソンも手がける。
また大石といえば、自身が作詞・作曲・編曲を務めた、2017年に話題となったアニメ『けものフレンズ』のあの頭から離れなくなる主題歌“ようこそジャパリパークへ”の作詞・作曲・編曲が記憶に新しいだろう。

そんなゲスト陣を迎えた今回の「アニソン特集」。主に冨田がアニソンの歴史の転換点となった重要なファクターを年代別に解説していくことで進行した。
1960〜70年代の「タイトル叫ぶ期」では、『鉄腕アトム』や『マジンガーZ』など、所謂アニソンの先駆けとなった曲を紹介。なぜタイトルや必殺技が曲中で歌われるのかというと、当時のスポンサーが、おもちゃメーカーが多く、必殺技を叫んだ方が、売れ行きが伸びたからだという。それは、アニメのメイン視聴者層が「子供」だったからで、その名残は、現在放送されているニチアサアニメ『プリキュア』シリーズなどに引き継がれている。

そして、『シティーハンター』ED曲“Get Wild”(TM NETWORK)や『るろうに剣心』OP曲“そばかす”(JUDY AND MARY)など、J-POPアーティストの楽曲が使われ出した1980〜90年代の「J-POP流入期」。『ガンダム』シリーズをきっかけにこの流れになったとのことで、それはアニメのストーリーが、勧善懲悪ということだけでなくなり、子供向けのアニソンが合わなくなったからだという。しかし当時は、歌詞に作品の要素がないという声もあり、現在ではアーティストが原作を踏まえて、曲とアニメが密接に絡んでいくようなものを制作するようになった。

ここからが大きな転換を迎えたであろう2000年代「声優アーティスト・キャラソン隆盛期」では、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』など、一躍話題になったアニメが挙げられた。特に『けいおん!』の社会的効果は絶大で、当時のチャートトップを独占していたとのこと。なお、「キャラソン」とはそもそも声優がアニメのキャラを演じながら歌うものであり、単に声優が歌うこととは違うとの解説が。ここで、今回のゲスト・上松範康が原作を手がけるアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの話に。例えば、同アニメで「風鳴翼(かざなりつばさ)」という役を演じている水樹奈々は、アーティストとしてのライブでは水樹奈々として、『戦姫絶唱シンフォギア』のライブでは風鳴翼として演じながら歌うという。また、タイトルを叫ばずともアニメ主題歌とわかる理由として、上松は、アニソンらしく聴こえるようにするために、曲の始まりはゆっくりなサビ、転調を何回か入れるなどの抑揚をつけて飽きづらい工夫を施しているとのこと。ここで、大石昌良からは15回転調する曲(“フレ!フレ!ベストフレンズ”)を作ったとの話も。さらに、曲を作る際にライブでの盛り上がりもイメージしているとのことで、観客が合いの手を入れることを想定しているとも。実際、ライブ映像で紹介された水樹奈々の“ETERNAL BLAZE”では、観客が一斉に声を上げたり、曲名を叫んだりと、ライブの一体感を生み出していた。

また、ここで最も重要なアニソン革命家として挙げられたのが、畑亜貴と菅野よう子だ。畑亜貴は『ラブライブ!』全曲のほか『涼宮ハルヒの憂鬱』、『らき☆すた』など数多くの楽曲の作詞を担当。ゲストの宮田俊哉(Kis-My-Ft2)は、「人生で一番俺を泣かせた人」と大絶賛。また上松曰く、業界では「畑亜貴は8人いる」と言われているほど、仕事量が半端ないらしい。そしてもう一人の重要人物である菅野よう子は、『カウボーイビバップ』のOP曲ではビッグバンドを駆使したジャズナンバーで、インストながら作品の世界観を最大限に引き出していたということをはじめ、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、『創聖のアクエリオン』、『マクロスプラス』などの主題歌を制作、どんなジャンルでもその専門家以上のクオリティの楽曲を生み出してしまうと、その凄まじさが語られた。

最後に、「成熟&カオス期」として2010年代に突入。J-POPアーティストもいれば声優アーティストもおり、キャラクターによるアニソン、ボカロPが作るアニソンもある現在。また前述した『戦姫絶唱シンフォギア』では歌うと強くなるというコンセプトのもと、作中ではメインキャラクターのヒロインたちが「歌いながら戦う」のが特徴のため、アフレコもCD音源ではなく台詞と同様に歌って収録するという大変さが暴露された。さらに上松率いるElements Gardenが楽曲プロデュースする『BanG Dream!(バンドリ!)』では、アニメでキャラクターがバンドを編成して演奏しているが、実際に声優も同様に演奏していて、アニメとアニソンがまさしく一致していることなど、声優のすごさと大変さも語られた。

加えて、この時期の重要人物として大石昌良が。ソロ・ユニット・バンドでも活躍し、提供した楽曲でもヒットしていて今まさに話題の人物だが、自身のことは「最強の下請け」と称し、依頼を受けたら原作およびそのファンを徹底的にリサーチして、クライアント、そしてその先のユーザーのことまで考えた楽曲を制作するという。さらに、“ようこそジャパリパークへ”の曲構成についても解説。大石曰く、音楽理論的にはやってはいけない「禁断のコード進行」を使っているとのことで、これを使うことでその部分に浮遊感が生まれるのだという。これについてはUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が作曲した“Catch the Moment”(LiSA)でも使われており、アニソン制作のトレンドになっているとのことで、聴くと「確かに」と納得できた。

セッションでは、大石昌良と関ジャニ∞メンバーによる“ようこそジャパリパークへ”をバンドアレンジ。アニメでの可愛い印象とは違った、シャープでかっこいい楽曲になっていた。

アニソンは今や常に音楽チャートの上位に入るなど、その市民権を確立している。それは、単に「アニソン」ではなく、これまでの歴史と革新的な試みによって積み重ねられてきた今があるからこそだということが、今回の放送でより理解できた。
また、上松範康という、今やアニソン界になくてはならない/アニメ界でも存在感を発揮している人物のすごさ、大石昌良という革新的人物を通して、アニソンのコアな部分の分析もできたことで、ファンにとっても、また新鮮な気持ちでアニソンを聴く要素になったと思う。
J-POPもあればロックバンドの楽曲もあり、今やアニメに関わったアーティストの方が少ないのではと言われるほど、ジャンルレスなジャンルである「アニソン」だからこそ、今後どう進化し、拡大していくのか、その未来は計り知れないと思った放送だった。(中川志織)
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