新EP『Re:Al』(読み:リアル)はまさにそんなCielyの現在地を映し出すとともに、これまでのヒストリーにまで想いを巡らせてくれる一枚である。本インタビューではEP制作中の事象を通して向き合った葛藤や過去、何をもって本作を「リアル」なものたらしめたのかなど、猪﨑宙生の胸中がストレートに明かされる。迷いながらも進み続ける先にある、覚醒の時はきっともうすぐだ。インタビュー=風間大洋 撮影=三川キミ
──1月にアルバム、5月にシングルをリリースして以降を振り返るとどんな期間でしたか?4周年が5月にあって、それが明けてからは9月からの対バンツアーへ向けて──これだけガッツリ回るツアーは初めてなので、その準備だったり⋯⋯あとはこのEPの制作でゴリ病んでましたね(笑)──じゃあ、あっちこっちに意識が向くような余裕もあまりなかったと。そうですね。言ってしまえばA面になり得る曲⋯⋯今作で言うと“CAGe Of ME”の立ち位置に当たる曲の制作にすごく時間がかかって。6月、7月はそこで闘ってました。──外から見れば、“DEFIANCE”のMVがかなり再生されていたり、活動が好転したタイミングでもあったと思うんですけども。いろんなところでライブをしたり、聴いていただけるきっかけになった曲だなという自覚はあります。「Cielyと言えば」じゃないですけど、そういう曲だなという自我が芽生えたことはすごく苦労するきっかけにもなって。だから、「“DEFIANCE”来てるぜ!」よりも「じゃあ次はどうする?」みたいな気持ちの方が先行していたなと思います。──“DEFIANCE”自体がそもそも、アルバム収録の“SIXTH STAR”でトライしたストレートなロック的アプローチを、もう一度ブラッシュアップしようという曲でしたよね。だからこそ、そこを再度擦ってみるべきなのか?という難しさはあるわけで。そうですそうです。“SIXTH STAR”も“DEFIANCE”も、やりたいことはやりつつも「一回こういう王道に行ってみよう」という、ちょっと頭を使ってちゃんとクリエイティブした曲だから、こういう結果になると、もっと結果は出したいけどこれ以上は何をしたらいいんだ?という思いもありました。「Cielyと言えば」じゃないですけど、そういう曲だなという自我が芽生えたことはすごく苦労するきっかけにもなって
──音楽的興味で言えばもっと他の方向に向いてる部分もあるだろうし。はい。“DEFIANCE”がもし全然ダメだったら、じゃあ違うことやりまーすってなってたと思うんですけど(笑)。こっちの路線はイベントでやっても反応がいいというか、他の曲と違うのは実感してたんですよね。じゃあもっとこういう曲を書くべきなのか、それとも違うものに挑戦するべきなのか、みたいな。──評価の軸ができたことで、一個難しくはなりますよね。“DEFIANCE”への反響は、作った時点での手応えも超えていくものだったんですか?ここまでか、とは思いました。ライブでも一発目からドンと来てくれるから、ライブ向けの楽曲なんだなというのをお客さんに教えてもらった感覚もあります。楽曲自体のスピード感、BPMの速さだったりとかもそうですし、イントロのリフなんかもわかりやすかったのかなって。現場であの曲がかかった時に、どう動いてどうノればいいかというわかりやすさが、今までの楽曲に比べて大きかったのはやってても感じますし、一体感みたいなものも作りやすい感覚はあったので。
──結果として“DEFIANCE”路線を継承するのか、全く違う方向に行くのか、あるいは間を取りに行くのか。どんなふうに今作は取り組んだんですか?“DEFIANCE”リリース時点で既にできている曲もあって、どこかでリリースしたいなと思っていたタイミングだったので。じゃあ4曲入るとして2〜4曲目はそれで行くとして、1曲目は新しく⋯⋯それこそ「DEFIANCE 2」なのか?って考えた時に、最初はもうジャンル的にもサウンド的にもかけ離れた、本当に自分のやりたいことをやろうと思って書き始めました。4月くらいから書き始めていったん完成もしてたんですけど、ちょうどその頃から“DEFIANCE”をライブでやり始めたんですよね。5月に出たMVも伸びがいいかもというふうにもなってきて、そこでさっき言ったような感覚が生まれ始めて。──迷いが。「あれ? 今はこの曲じゃないかも」みたいな感覚になっていって。結果的に1ヶ月間で、この“CAGe Of ME”を作るためだけに5曲くらい書いたんですよ。でも、その中から選ぼうというよりも、書いてみたものの違いましたというのを繰り返していて。“DEFIANCE”路線も全く違う方向も、間を取ることも全部やってみたんです。
──結果的に、“DEFIANCE”で知った人が“CAGe Of ME”を聴いたとして、全然違うことをやってるなとは感じないタイプの曲になってますよね。なりましたかね? よかったです(笑)。──それ以外は想定通り以前からあった曲を収録して?はい。中でも4曲目の“鳴奏”はインストの状態で1年以上置いてたんですよ。それが、このEPを作っていって“CAGe Of ME”が完成してから最後に取り掛かった時に、この制作期間の気持ちみたいなものを全部詰め込んでやろうと思って歌詞を書いたら、こうなりました。まさか1年前にはこんな歌詞になるとは思ってもなかったんで、面白いなと。──となると、“CAGe Of ME”と“鳴奏”によって今作の性格が定まったというか。まさに。“鳴奏”の歌詞を書く時にはもう吹っ切れていたというか、悩みに悩んで色々なものと闘って“CAGe Of ME”を形にできた時点で、メンタルが決まったんですよね。それでこの『Re:Al』というタイトルをつけて、つけたからには何を思ってこのタイトルにしたのかを答え合わせする曲が要るなと思って。そこから“鳴奏”の歌詞を書き始めました。コンセプトができたことで、最後のピースを“鳴奏”で埋めた感じです。──『Re:Al』=リアルというタイトルはどういう意味合い、ニュアンスでつけたんでしょうか?作品としてのリアルを追求するとなった時に、やっぱり嘘偽りないというか⋯⋯本当はこういうことをやりたいという部分を、ただの願望ではなく⋯⋯最終的に目を向けたのは「何になりたかったか」なんですよね。音楽を始めた高校生の頃の自分や20歳前後の自分、知識とか場数も全然なくてガムシャラに好きな音楽をやろうとしていた時の、好きだったものやバンド、ジャンル、なりたかったアーティスト像みたいな。──純粋な憧れを。はい。そこを一回掘り返して突き詰めたんですよね。結果的に初期衝動みたいな、今音楽をやっている最初の理由を思い出せば、それが本当にやりたかったことだろうし、ちょっと変化はしているとはいえ、根本はきっと変わっていないだろうなって。今の自分がやりたいことは言語化できないし、なんか難しいものになってるから、一回本当にやりたかったこと、なりたかった姿を今の自分が叶えてあげよう、みたいな。『10年後の宙生くんはこんなことができるよ、頑張ってね』と言えるようなものを作ろう、10年前の自分がめっちゃ好きそうな曲を書こう、という点でリアルを追求したというか。そう思って書いたら自分の中でもすごく納得のいくものができて、今回のEPに辿り着けたので、『Re:Al』という単語がスッとハマったんですよね。──2026年夏現在のCielyのリアル、というよりも、かつての憧れを今リアルなものにしてあげたという感覚が強い?その通りです。いろんな気持ちの浮き沈みだったりとか、その時々の流行り廃りや好きなものも如実に作品に出ちゃうタイプですけど、一貫してやりたかったことは変わらないなと思って。変化はめちゃくちゃしやすいけど元素自体は変わらないよっていう、アルミニウムの性質がそれと似てるなと思ってつけたのが元素記号の『Al』で。小手先の技術によって、これから出していく曲は変わっていくと思うんですけど、“CAGe Of ME”に詰め込んだ「今までやりたかったこと」は一生変わらないなと思ったので、目の前のリアルというよりは、今まで自分の中で真実であり核だったものを、今だからこうして出せますっていう。10年前の僕も、今も、10年後の僕も、きっとかっこいいと思えるんだろうなっていう曲です。──このタイミングで向き合うべくして向き合った、大事なテーマという気がします。そう言っていただけるとめっちゃ嬉しいくらい、大変でした(笑)。今の自分がやりたいことは言語化できない、難しいものになってるから、一回本当にやりたかったこと、なりたかった姿を今の自分が叶えてあげよう