KTタンストール @ 品川ステラボール

エイミー・ワインハウスやリリー・アレン、そしてケイト・ナッシュやサンディ・トム等、近年のUKシーンは才気溢れる女性シンガー・ソングライターが続出し、百花繚乱の盛り上がりを見せている。そんな中でも最も「ロック」なサウンドで突出した存在感を放っているのが、このKTタンストールだと言えるだろう。

スコットランド出身の31歳、デビュー・アルバム『アイ・トゥ・ザ・テレスコープ』(06)で遅咲きのブレイクを飾った彼女だが、最新作『ドラスティック・ファンタスティック』(07)では更にパワフルなバンド・サウンドを極めている。日本では映画『プラダを着た悪魔』でフィーチャーされたポップ・チューン、“サドゥンリー・アイ・シー”の大ヒットで知られる存在だが、彼女の本質はもっとタフでクレバーなものだ。

そんな彼女の本質が最も如実に確認できる場所、それがライヴだ。今日のステージはキーボード、コーラス隊を加えた7人編成。前回の来日が彼女の弾き語りスタイルのショウ・ケースだったのと比べると格段にゴージャスだが、KTの歌は極論してしまえば彼女独りのパフォーマンスであっても、フル・バンドでのパフォーマンスであってもその強度に殆ど変わりはない。エイミーやリリーのように斬新なコンセプトで魅せるシアトリカルなディーバではなく、KTはあくまでも彼女のギターと彼女の声が最大の見せ所だからだ。今日もエレキにセミアコにアコギにとめまぐるしくギターを持ち替え、その細く小柄な身体とは不釣合いなほどハスキーな歌声と共にギターを掻き鳴らすその姿は猛烈に格好良い。

途中ではKTの「原点」とも言える弾き語りセクションが組み込まれていたが、これが単なる弾き語りではない。ギターのボディを叩くカウント、タンバリンのリズム、そしてギターリフをその場で(!)録ってループさせ、そのループに生演奏を合わせていくという、超アナログな一人数役のマルチ・パフォーマンスなのである。何度観てもこの時の彼女の所作にはグッとくる。同性ながら痺れてしまう。

MCは超フランク、オーディエンスと辛口なジョークを交わしながら、「イチ・ニ・サン・ダー!!」までかましてくれるKT。姐御と呼ばせてください。(粉川しの)
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