Epitaph Showcase @ 渋谷クラブクアトロ

ロック・ファンであれば知らない人はいないだろうパンク・レーベルの雄、エピタフ・レコーズ。バッド・レリジョンのブレッド・ガーヴィッツが立ち上げた、インディ・レーベルの草分け的存在である。そのエピタフが総力を挙げてプッシュする若手バンドを日本に紹介するのが、このEpitaph Showcase。昨年はモーション・シティ・サウンドトラックとマッチブック・ロマンスというまさに「旬」なラインナップで盛り上がったが、今年はマッチズとフェアウェルである。どちらも、従来のエピタフのイメージからはみ出す、ユニークな才能の持ち主だ。

先攻はフェアウェル。ステージの両脇にバンド・ロゴとお化けのようなキャラクターが描かれたフラッグが掲げられ、バンドのポップなイメージを全面にアピールしている。デビュー・アルバム『フェアウェルのわくわく大作戦!?』を聴いてもらえれば分かるが、このポップさこそが彼らの身上である。シンセをフィーチャーしたエモ・バンドというのはブームというかもはやサブ・ジャンルとして定着した感すらあるが、このバンドの抜けのよさはちょっと違うものがある。メロディはキャッチーだし、演奏もいい。しかも、ただそれだけではなくて、立ち姿そのものに華があるのだ。観客との距離感も近く、見た目は本当にその辺から出てきたキッズなのだが。エモ/パンクという枠を軽々と超えていけるポテンシャルを秘めたバンドだと思う。

枠を超えていく、ということでいえば、後攻のマッチズも負けていない。というか、彼らの最新作『ア・バンド・イン・ホープ』を聴いてエモとかパンクとかいう言葉を連想する人はいないのではないか。思いっきりロックしている曲もあれば、オペラティックに展開するバラードもあり、アコースティックな響きが心地いい小品もある。アートワークと同じ赤と黒の衣装に身を包んで現れたバンドのたたずまいからも分かるとおり、アート性やスタイルといったものにこだわり続けているバンドである。アルバムの雄大なイマジネーションがライブで充分再現されていたかといえば疑問だが、逆にいえばそれだけ伸びしろがあるのだともいえる。フレンドリーなパフォーマンスとクイーンすら彷彿とさせる音楽性の折り合いをどのようにつけていくのか、これからが楽しみ。いずれにせよ、バンドのコンセプトを背負うフロントマン、ショーンの才能には太鼓判を押しておきたい。

それにしても、2バンドの可能性を考えれば、この日の人の入りはさびしかった。シンプル・プランと被っちゃったししょうがないかな、とも思ったが、やっぱりさびしかった。次回は満員の会場で、ぜひリベンジを果たしてほしい。(小川智宏)
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