BACK DROP BOMB @ 新宿LOFT

1976年に西新宿にオープンしたライブハウス『新宿LOFT』は、1999年に現在の歌舞伎町コマ劇場横へ移転し、今年で10年目を迎える。10周年のシリーズイベントとして『SHINJUKU LOFT 10TH ANNIVERSARY HOW YOU DOIN' Vol.08』を開催、今日はその8日目。BAR STAGEには、CRYSTAL(Traks Boys)、LATIN QUARTER(PPP)、DJ NOZAKIのDJ陣が名を連ね、Sine、younGSounds、LITE、そしてトリのBACK DROP BOMBの4バンドが出演。特にBACK DROP BOMB は、4月末に新ドラマー加入が発表され、そのお披露目的な意味合いもある今回のライブ。ちなみに、新ドラマー加入後のライブは、福岡、広島の『MTV JAPAN TOUR09』、都内では5月9日の『TAP IN THE JAM』。今回で4本目ということになる。Sine、younGSoundsが演奏し、次はLITE。フロアが暗転し、数秒の静寂の後、歓声とともに彼がステージ上に姿を現す。1曲目は、“Ef”。Nobuyuki Takedaのラウド・ギターに、リズム隊の役割を果たそうとしないベースがギターと全く同じ旋律で追っかける。そこにハイハットとシンバルのみで構成されたドラムの音が加わり、ここで底を支えるリズムがないことにようやく気がつく。とにかく手数が多くて、やたらとハイハットやシンバルを定期的に挟むそのドラミングは、アブストラクト〜ヒップホップの手触りがあり、DJシャドウのトラックのようだ。事実、後ろを振り返ってみると、オーディエンスは横ノリでゆらゆらと体を揺らしている。前々からLITEは、ドラムが中心にあるバンドだと考えていたが、今日のライブを観て、いっそうその思いが強まる。いわゆるポスト・ロックやインスト・バンドと決定的に異なる点は、それらの一つの模範でもある、ずんずんとくる高揚感や胸がかきむしられるようなメランコリックなギター、情緒に訴えかける曲展開ではなく、ドラムが曲の主体性を担っているところにある。そのくせ、バスドラムは必要最低限に抑えられ、タム、シンバル、ハイハットを多用し、隙あらばパーカッションや金属的な音を鳴らす。リズムの底としてはあまりに頼りない。ビートの主体はどちらかと言えば、ギターにある。これは既存のポスト・ロックやインストバンドでは珍しいだろう。ポスト・ロックやインストのバンドの多くは、静けさと激しさの対比をどうみせるかがキーとなるが、このバンドはドラムの強弱によってその対比を作り出しているのだ。方法論としては、全く逆かもしれない。クラウト・ロックをポスト・ロックという枠組みで鳴らしている感じに近い。1つ1つを分析すれば、けっこうやり方がむちゃくちゃなのに、違和感なく自然な構成に聞こえてくるから不思議だ。転調も多く、ドラマチックに展開するストーリーが幾度となく頭の中で構築され、解体されていく。聴き手の想像力を極限まで高め、刺激してくれる。ある意味、ボディー・ミュージックだ。ラストの“Contemparary Disease”まで僕の脳内は刺激され続けた。そして、いよいよトリのBACK DROP BOMB。今回のライブは、何よりも新ドラマーのお披露目である。何しろ、BACK DROP BOMBは、2005年にドラマーの有松益男の脱退以来、長らく正規のドラマーが不在だったのだ。そして、4月29日に主催したイベント『MAXIMUM SOUND STYLE』のラストに、ドラマーの武田将伯が新メンバーとして加入することを発表。彼はまだ24歳という若さで、アメリカへのドラム留学も経験している。きっと誰もがそう感じているだろうが、BACK DROP BOMBというバンドから要求されるドラマーの質は異常に高いのだと思う。ミクスチャーという多種多様な音楽をきっちり叩ける技術というのは、まず前提でしかない。ドラムのプログラミングを別のメンバーが打ち込みでやることもある、どんどん変拍子を使う、叩けたら絶対かっこいいが人間が叩くのには無理なビートを組んでしまう、と、bridge5月号のインタビューで白川も語っている。さらに、ドラム不在の間、サポート・メンバーとしてBOBO(54-71)やアスパラガスの一瀬正和、toeの柏倉隆史といったすばらしいドラマーたちに叩いてもらったことによって、新しいドラマーに要求するレベルが上がってしまい、かえって探しづらくなってしまった、とも言っている。4年近く正規のドラマーが不在なのも納得。で、そこでバンドから「このドラマーなら」と思わせた、武田将伯のドラミング。肩まで伸びたロングヘアーを振り乱しながら叩くその野性的なスタイルは、観ているだけで衝動性に駆られる。しかし、プレイは派手だが、よく聴くとその派手さよりも、リズムワークの正確さとか、ブレないスティックさばきとか、そういう部分に目がいく。実は堅実で安定した仕事をやる、職人気質のドラマーだ。僕はそう思った。

セットリストは3月にリリースされたベスト盤を意識した、初期から現在までのBACK DROP BOMBの歴史を総括する充実の内容。ライブ終盤の“NEVER SEEM TO LAST”やラストの“YOU UP AROUND”のような初期のナンバーは、バンドもオーディエンスも、エネルギーの放出量が段違いだ。グルーヴィで、ザクザクと刻まれていくリズム。次々と変化する曲展開、一曲一曲異なる音楽性。急カーブを曲がったと思ったら、また急カーブに出くわすような、目まぐるしく景色が変わるBACK DROP BOMBの音楽。耳も体も、縦に横にぐるんぐるん揺れたけど、これが最高に気持ちいい。全11曲をあっという間に運転し、ライブは終了。こうして書いてみると、なんだか終始ドラムのことばかり注目していたような気がする。ただ、偶然にも、「ドラム」というキーワードが浮かび上がってくるのが、今日のBACK DROP BOMBとLITEだったような気もする。BACK DROP BOMBは、最後の欠けていたパズルの1ピースがすっぽりはまったような感じで、LITEは、パズルを始めてまず最初に置く1ピースといった印象だった。どちらも、ドラムのことを考えるとそのバンドの全体像が見えてくるような気がして、奇妙で貴重なライブ体験となった。(古川純基)
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