ハナレグミ @ 日比谷野外大音楽堂
2009.06.07 00:00
よく晴れた日曜の夕方5時。夕陽がさしこむ日比谷公園の木々を風が揺らし、ぎっしりと埋まった客席のところどころから、シャボン玉がふわりと浮かび上がる。いろんなアーティストがステージに立つ野音だけれど、こんなにそのシチュエーションがぴったり合う人は他にいないかもしれない。ハナレグミ、久しぶりの野音ワンマン。昨年9月にSUPER BUTTER DOGのラスト・ライブで立った場所に、永積タカシは再び戻ってきた。チケットは即日完売。待っていた人も、本当に多いだろう。ふらりとステージに現れ、「今日、天気になったということでライブの8割がたは終わりました(笑)。そんな気分です」と語り、「ああ嬉しい! みんなありがとう!」と叫んで演奏を始めた永積。『弾きが旅だよ人生は!』と題された今回のライブは、基本的には弾き語りを中心にしたステージだ。アコースティック・ギターやエレキ・ギターを抱えた永積が、柔らかな歌声でメロウなメロディを解き放っていく。音圧があるわけではないから、時には風の音や周りの喧噪も聴こえてくる。でもそういう空間に、彼の声はとても心地よく染み渡っていく。ハナレグミのライブではいつもそうなのだが、永積のステージ上のふるまいは、すごく自然体だ。客席を移動するお客さんに「あんたたち、遅いよ〜」とか「どこ行くの? トイレ?」とか、歌の途中でいきなり語りかけたりもする。チューニングに時間がかかったり、マイクスタンドの位置が低くて曲をやり直したりもする。MCでは「皆さん、酔っ払ってください! ここは庄やですから(笑)。大宴会ですから!」と叫んだりもする。「実家に帰ったときに扉を開けっ放しにして帰っちゃったんだよ。3日間くらい開けっ放し。そりゃ怒るよね」と、30代に超えて父親に激怒されたというエピソードを語ったりもする。「歌をうたう」ということが、友達と喋ったりする普段のテンションとあまり変わらない感じ。そういう、ゆるくて気ままな空気がある。だから、ステージと客席がすごく近い。アップテンポなナンバーでは、客席の本当に後ろのほうまで、ほぼ全員が手拍子で参加している。会場に集った全員が、そんな風にして音楽を楽しんでいた。大阪でのライブが来週に控えているので詳細は伏せるけれど、途中からは気のおけない仲間達や、登場と同時に会場全体が歓声に包まれた豪華なゲストも参加。曲の途中でセッションのように気ままな掛け合いをしたり、カバーを差し挟んだり、ハナレグミならではの親密な雰囲気を持った音楽を、自由なスタイルで展開していく。アンコールではギターを抱えて歌いながら客席の真ん中まで歩いていき、全員に囲まれて歌った彼。バラードのしっとりとしたメロディを歌い上げる彼の声は、やはり絶品だ。喜びや、切ない思いや、いろいろな感情がじんわりとこみ上げてくるような声。空が暗くなるまでの約2時間半にわたって、それがまるで魔法のように響いていた。6月24日には、4年半ぶりとなるニュー・アルバム『あいのわ』がリリースされる。9月からは久々の全国ツアーも開催され、10月28日には武道館公演も控えている。ハナレグミの音楽が生み出す幸福な輪は、これからさらに大きく広がっていくだろう。そう確信させられる一夜だった。(柴那典)