ガールズ @ 原宿アストロホール

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ガールズ @ 原宿アストロホール - pic by Teppeipic by Teppei
「すみませーん、もう少し前にお詰めくださーい」。開演時間の7時を過ぎてもなお、係の人の呼びかける声が止まない。原宿アストロホールは、2009年に登場した最高のニュー・カマーを一目観ようと詰め掛けた観客でみっしりと埋まっている。Girlsの初来日は、この晩だけのワン・オフ・ショウなのである。ようやく客電が落ち、メンバーがぞろぞろとステージに現われる。気のよさそうな太眉のドラマー、サイケデリック時代の長髪チャーリー・ワッツみたいな顔をしたギタリスト、ベースを抱えたむっつり顔のチェット・ジュニア・ホワイトが入ってくる。そして、クリストファー・オウエンスが来た! そのいでたちは、誰もが予想したとおり。オーバーサイズの赤いシャツの下には白地に黒の水玉のシャツがややハイライズぎみのジーンズにイン。もちろん、裾はロール・アップ。白い靴下に白の靴。そして両手には花束。ソバージュ気味のロン毛は左サイドにだらり。つまりは、80年代のハリウッド映画でさんざん観てきたヒロインの格好だ。フロアの息を吸い込むような期待感の中、めいめいがチューニングし始めるのだけど、合ってるのかこれ? ときおり、焦れた観客から日本語の掛け声。日本に住んでいたこともあるクリストファーも軽く応える。そして、1曲目に奏でられたのは「LAURA」。いきなりのキラー・チューンに湧き上がる会場!……と書きたいところだけど、そんなことはなかった。音がペラペラというかスカスカというか、拍子抜けするくらいの音圧、なのである。この状態は、前半、というか、基本的には全編のキートーンでもあった。それはそうだろう。Girlsの楽曲とは、オールド・ファッション・ポップスが基調である。50年代のサウンド・デザインに音圧という要件が存在しなかった、そのマナーを生真面目に踏襲するかのように、彼らの音は、まるでAMラジオから聴こえてくる「遠くからのきらめき」のように、フロアをなでていく。「この曲は、曲を書くということについてと、音楽を愛するということについての曲だ。Jay Reatardに捧げる」といって始めた4曲目はアルバムのラストに収録されている「DARLING」。「眠るように」逝ってしまったほぼ同年代のミュージシャンの突然の死に追悼を捧げた後、このライブ初めてのマジックが起きる。「LUST FOR LIFE」だ。Girlsの歌とは、これである。つまりは、ここにはもうここにあるべきものはない、ということだ。あらんかぎりの願いを綴る「LUST FOR LIFE」にしても、明日手に入る何かについての期待というよりも、それはもう手に入らないという今の、その呆然とする喪失感が横溢する歌なのである。クリストファー・オウエンスにとって、思春期とは気がついたときは剥奪されたものとしてあった。愛する人は、朝目覚めたときにははるか遠くに去ってしまったものとしてあった。そのような、「取り残された僕」の痛ましさと切れ切れの声と祈りが、Girlsなのである。だからそれは、たとえばRadioheadが構築する、集合意識の暗闇とは違う種類のものだ。時代とか世界とか、そういうものと対峙したときに生まれ出る歌なのではない。そうではなくて、これは私小説の絶望なのである。あえて付け加えれば、こんな風にクラシック・ポップを使って極私的な思いを現代に歌にしたミュージシャンをもうひとり知っている。それはモリッシーである。「サマーソニックで戻ってくるね、たぶん」。いきなり、クリストファーがそうMCするものだから、会場が沸く。慌てて「いや、わかんないけど」と付け足した後、ステージ上のクリストファーは、リッケンバッカーを精一杯抱え上げ、左足をぐいっと上げると、歌い始める。その80年代風ファッションは、今流行のリバイバルなんかでは毛頭なく、彼の時間がそこで止まったままだということこそ告げているように見えてくる。終始、体を折り曲げるように歌うそれは、これから出す音で目の前にいるわれわれを圧してしまおうというようなロックのアンビションとは対極に、まるでこの歌はこんなふうに身をよじりながらできたものですとでもいうような、そのときの感情そのままの姿を猛烈に想起させる。ひとつひとつの歌が最後の歌であるかのごとく、こわれものでも扱う身振りで演奏を続けていく。ライブにおけるもうひとつのマジックは、やはり「HELLHOLE RATRACE」で訪れた。「一生泣き続けてなんかいたくない」。Girlsのマインドをこの上なく表出してしまったこのナンバーが、怒涛のクライマックスへと突進していく。ここで初めて、フロアはノイズの洪水に飲み込まれていく。その圧力たるや、いままでの演奏は何だったんだと言いたくなるほど凄まじい。アンコールを終え、クリストファーは、持ってきた花束から花を千切っては、いくつもいくつも客席に投げ込んでいた。最後には、これって何年ぶりに見たっけ?と我が目を疑った、なんとピース・サインをして帰っていった。ラブリー、それがGirlsだった。しかし、それはもちろん、無神経な女子が目の前にあるものを手当たりしだいに「カワイイ!」と押し付けていく類のものではない。ラブリーと呼ぶことで、かろうじてこの世に在ることを許されるような、そんなものだった。(宮嵜広司)1. Laura
2. Ghost Mouth
3. Headache
4. Darling
5. Lust For Life
6. Heartbreak
7. Substance
8. Big Bad Mean Motherfucker
9. Oh Boy
10. God Damned
11. Lysandre
12. Hellhole Ratrace
13. Morning Light
14. Solitude
15. Carolina
encore
16. Lauren Marie
17. Life In San Francisco
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