四人囃子×フジファブリック @ リキッドルーム恵比寿

四人囃子×フジファブリック
「GLAYなどを手掛けた大物プロデューサー・佐久間正英と、L⇔Rのプロデュースなどで知られる岡井大二が在籍しているバンド」と言っても、そのバンドとしての価値はまったく伝わらないだろう。70年代から幾度かの活動休止/再開を繰り返しつつも、現在に至るまで日本ロック・シーンに影響を与え続けるプログレッシヴ・ロック・レジェンド、四人囃子。そして、若手随一の曲者ロックでシーンをかき乱すフジファブリック。この異色の対バン企画は、なんと四人囃子からのラブコールで実現した。

19:09、SEとともに森園勝敏(Vo/G)、坂下秀実(Key)、佐久間正英(Vo/G/B)、そして岡井大二(Dr)という四人囃子のメンバーが登場……と思ったら、どうもシルエットの数が多い。6人? いや、ステージ前方に立っているのは、フジファブの志村(Vo/G)と山内(G)だ。そしてそのまま1曲目“一触即発”のハード・エッジなイントロへ雪崩れ込む。いきなりのギター・ソロの応酬!複雑な展開をものともせず、大先輩のアンサンブルに食らいつく志村&山内。それにしても曲が長い。曲の途中で志村が退場&金澤(Key)が入場してくるタイミングがあるくらい、長い。続く“おまつり”が終わった時、開演から25分が経っていた。が、フジファブのファンが多いと思われる満員のオーディエンスも、何かの術にかかったようにステージを凝視している。

金澤&加藤(B)が加わってのインスト“なすのちゃわんやき”。そして、宇宙空間へ飛び出しそうな幻想的なサウンドを聴かせる“空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ”、深い湖の底へと音の触手を伸ばしてみせる“泳ぐなネッシー”……四人囃子の音には、鳴った瞬間に「今、ここ」を異世界へと塗り替える力がある。“泳ぐなネッシー”の最後の瞬間などは、東京の真っ只中のはずのリキッドルーム恵比寿に集ったオーディエンスが、フジ・ロックかどこかの山里深い祭りの舞台を囲む群衆に見えて仕方なかった。そんなフロアに「どうもありがとう。またどこかで」と森園が静かに告げて、退場。

そしてフジファブリック。いきなり“モノノケハカランダ”“B.O.I.P.”とハードでキッチュな楽曲を畳み掛ける。「四人囃子の出番の時に、フジファブのメンバーが出たり入ったりしたように、四人囃子の方々も入ってくれます」という志村のMCに導かれて坂下&佐久間が登場、“マリアとアマゾネス”。アレンジが複雑怪奇になればなるほど異世界の奥深くへと連れて行かれるような四人囃子の楽曲とは違い、フジファブはアレンジが複雑怪奇になればなるほどポップ感を増していく。もしかしたら、四人囃子にしてみれば、そんなフジファブのポップ感のほうがよほどマジックに見えたのかもしれない。

再び5人でディープ&シリアスな“打上げ花火”“蜃気楼”を披露した後、岡井&坂下を加えてツイン・ドラム&ツイン・キーボード編成で“追ってけ追ってけ”、続いては坂下の代わりに森園が登場してトリプル・ギター編成で“地平線を越えて”。UFOを召還するような金澤のファルフィッサの響きと、3本のギターの重厚な響きが凌ぎを削るスリリングな場面に、オーディエンスは驚きと高揚が入り交じったような何とも言えないムードに包まれている。

サポートドラマー=城戸紘志と岡井のツイン・ドラムにすっかり満足した志村、「フジファブリックって今、ドラムいないじゃない? ドラムは2人だね! 2人は楽しい。2人にしよう!」「大先輩との共演でいろんなものを吸収させてもらってます。大先輩っていうか、お父さん?」とフロアを沸かせた後、ラスト2曲“銀河”“Surfer King”で一気にスパート! いったん退場した後、今度は両バンドのフルメンバーで再び登場。「九人囃子になりました!」と志村。そして、アンコールの楽曲=四人囃子のアッパーなロック・ナンバー“カーニバルがやってくるぞ”が、9人編成の分厚いサウンドでゴージャスかつミステリアスに響き渡った。新旧の異才が極上のランデブーを果たした、貴重な夜だった。(高橋智樹)

四人囃子
1.一触即発
2.おまつり
3.なすのちゃわんやき
4.空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ
5.泳ぐなネッシー

フジファブリック
1.モノノケハカランダ
2.B.O.I.P.
3.マリアとアマゾネス
4.打上げ花火
5.蜃気楼
6.追ってけ追ってけ
7.地平線を越えて
8.銀河
9.Surfer King

アンコール(四人囃子+フジファブリック)
1.カーニバルがやってくるぞ