開演と同時に吹き荒れる、“マイ・ディレクション”の直球ダイナミックなサウンド！　そして“スカムフ＊＊ク”のHR／HM感満載のシャッフル・ロックンロールが火を噴き“ウィア・オール・トゥ・ブレイム”の切迫した重轟音が紛れもなく「今、ここ」のアンセムとしてオーディエンスの魂を揺さぶっていく……『10th anniversary JAPAN TOUR 2011』と銘打たれたツアー・タイトルの通り、札幌：Zepp Sapporo／仙台：Zepp Sendai／横浜BLITZ／名古屋：Zepp Nagoya／福岡：Zepp Fukuoka／大阪：なんばHatch×2／東京：新木場スタジオコースト＆Zepp Tokyo、と実に計9公演にわたり日本全国をサーキットする、デビュー10周年記念のSUM41列島縦断ジャパン・ツアー。そもそも余裕でスタジアム級の破壊力を持つSUM41だけに、アリーナ級の会場一発押さえて「ニッポンアリガトー」と派手にドカンと一発花火を打ち上げるようなやり方でも誰も文句を言わないはずだが、全国のライブハウスをこまめに回ってデビュー以降10年の感謝を伝えていくという開催方式自体が、デリックらメンバーの誠意を象徴していると言える。そして……そのツアー3公演目となるこの日も、オープニングSEの段階から待ちかねまくったファンの熱気が、1曲1曲で雄叫びや合唱や拳となって轟々と噴き上がる、最高のアクトだった。

というわけで、全公演ライブハウスでの開催ということで、ただでさえ爆風のようなSUM41のサウンドを、この日もキャパ2000人足らずの横浜BLITZで聴けてしまうことになったわけである。タイミング的には「今年4月にリリースされたばかりの最新アルバム『スクリーミング・ブラッディ・マーダー』を引っ提げて」というタイミングではあるのだが、新作からの楽曲は本編14曲中“スカムフ＊＊ク”“シック・オブ・エヴリワン”“スクリーミング・ブラッディ・マーダー”の3曲にとどめ、必殺アンセム“オーヴァー・マイ・ヘッド（ベター・オフ・デッド）”に、激烈ギター＆2ビートがデッドヒートを繰り広げる中をデリックがハンドマイクで絶唱する“ミスター・アムステルダム”に、名曲“イン・トゥー・ディープ”に……と、とにかくSUM41の熱いところ／ヘヴィなところ／鋭いところ／メロディアスなところを、新旧楽曲を組み合わせて凝縮させていくような内容だった。ジャパン・ツアー初日の札幌公演ではビリー・アイドル“レベル・イエル”をやったり、トムがヴォーカルをとってストーンズ“黒くぬれ”のカバーをやったり（トムのバンド＝GOBのアレンジ・ヴァージョンだったらしい）をやっていたらしいが、この日はフロア最前列のキッズのメタリカTシャツに目を留めたデリックの「メタリカ着てる！　メタリカ好きな人！（フロア一斉にはーい！と挙手）」というやりとりからメタリカのカバーへ突入、最新作でのメタル魂大放出（というか回帰）っぷりと相俟ってとんでもない熱量を生んでいた。

ステージの間中、何度も何度もフロアに向けて手を合わせ礼をし、歓喜に任せて「イエー！　イエー！」と叫び上げ、1ダースの「サンキュー！」を捧げまくるデリック。今や鉄壁のヘヴィ・ギター・アンサンブルの軸を担うまでに至っているギタリスト＝トム。その細身からは想像もつかないダイナミックなベースラインを繰り出すコーン。そして、バンドのスケール感と爆発力を後押しするだけでは足りずにアンコールの“P4P”でマイク引っ掴んでフロアをアゲ倒すスティーボ……極限まで鍛え上がったメタリックなパンク・サウンドでありとあらゆるネガティブを位相変換し、どこまでもエモーショナルでエネルギッシュな高揚感と快楽を生み出していくSUM41。そんな壮絶な現在地すら「日常」として謳歌している彼らの凄みが、まさに体感レベルではすぐ目の前で炸裂していた。ジャパン・ツアーは残り6公演。21日名古屋と最終日＝28日のZepp Tokyo以外は当日券も出るようだし、今からでもこの圧巻の音楽体験を1人でも多くの人に共有してほしい。切に願う。（高橋智樹）


セットリスト
1. MY DIRECTION
2. SKUMF*CK
3. WE’RE ALL TO BLAME
4. WALKING DISASTER
5. OVER MY HEAD (BETTER OFF DEAD)
6. SICK OF EVERYONE
7. SCREAMING BLOOLY BURDER
8. MOTIVATION
9. THE HELL SONG
10. METAL MAYHEM
11. MR. AMSTERDAM
12. UNDERCLASS HERO
13. IN TOO DEEP
14. STILL WAITING

アンコール
15. PIECES
16. FAT LIP
17. PAIN FOR PLEASURE