今年でバンド結成10周年を迎えるBase Ball Bear。と言ってもメジャー・デビューから僅か5年だし、青春のきらめきを切り取ったような曲たくさん作ってきたバンドだけに、10周年と聞いて驚く人も多いかもしれない。しかし。アニバーサリー・ツアー「SAYONARA-NOSTALGIA TOUR」のセミ・ファイナル=今夜のSHIBUYA-AX公演は、彼らが歩んできた10年という決して短くない時間の重みを感じさせる、実に貫禄のあるものだった。ツアータイトルが象徴している通り、「ノスタルジックな時代にサヨナラする!」とでも言わんばかりの、とても頼もしいバンドの姿がそこにあったのだ。
まず驚かされたのが、予想していたライブと大きく異なっていたこと。2010年1月に行われた初の武道館公演では、レーザー光線が飛び交ったり大型ビジョンで寸劇っぽい流れたりゲストが登場したりと、スペシャル感満載のライブを完遂させた彼ら。RIJやCOUNTDOWN JAPANでも、いつも粋な衣装やMCで会場を盛り上げてくれる彼らだけに、今夜もそういうお祭り的なライブになると思っていた。けど、違った。白いTシャツ&黒いパンツの小出を筆頭に、メンバーの衣装は至ってシンプル。アニバーサリーな演出も一切なし。冗談や皮肉を交えて悪ノリ感たっぷりに語られる小出のお馴染みのMCも、今夜はほとんどなかった(1箇所だけ10分を超えるMCタームがあったけど)。では、代わりに何があったのか。ひたすら真っ直ぐに、骨太なバンド・サウンドを叩きつけていく4人の姿だ。そして、それがものすごく良かった。
バンド結成時の年齢を懐かしむかのように、“17才”で幕を開けたステージ。今回のツアーは全公演セットリストが違っていて、今夜はわりとソリッドな楽曲を揃えた印象。ダブやディスコ色の強い実験性に満ち溢れた最新の2枚のアルバムからの楽曲はほとんどなくて、バンド・サウンドの肉体性が感じられる楽曲が多かった。その結果、実はヒネリの効いたサウンド・プロダクションが随所に施されたアンサンブルの切迫感が、より生々しく伝わるようになっていたのだ。特に素晴らしかったのが、アグレッシヴな湯浅のギターが縦横無尽に駆け巡った“BAND GIRL’S SPIRAL”と、切っ先鋭いリフとビートの応酬が居合い抜きのようなスリルを生み出した“DEATHとLOVE”。キラキラと光り輝くキャッチーなメロディでありながら、その裏ではどこまでも攻撃的な音のせめぎ合いが繰り広げられる重層的なサウンドスケープに、思わず胸が躍ってしまう。
勿論、深い海の底へ落ちていくようなディープで甘美な魅力も全開だった。小出と湯浅がヒソヒソ話をするように向かい合って繊細なアルペジオを紡いだ“LOVE LETTER FROM HEART BEAT”、ギターを置いてハンドマイクを握った小出がロマンチックな歌声を響かせた“SEVENTEEN ROMANCE”。そして、マグライトで小出がメンバーやフロアを挑発的に照らす中、関根のベースがグルーヴィーなビートを刻んだ“FICTION ONCE MORE”も最高だった。そこから歯切れのいい堀之内のドラミングが打ち鳴らされ、爽やかな風が吹き抜ける“愛してる”へ雪崩れ込んだ瞬間は、個人的には今夜のハイライトだったように思う。
そして何より素晴らしかったのが、恒例の「湯浅将平ダンス・ターイム!」で狼煙を上げた、終盤のノンストップのダンス・セクション。インディー時代の名曲“SAYONARA-NOSTALGIA”では結晶のように音の粒が活き活きと躍動し、“Transfer Girl”では瑞々しいサウンドが爽やかに吹き抜け、“真夏の条件”では「ワォ!ワォ!」という叫びとともに挑みかかるような音塊が炸裂し……と、めくるめく情感を鮮やかに立ち上らせるダンサブルな楽曲が、間髪入れずに畳み掛けられていく。青白い閃光のようなアウトロのセッションから狂騒感たっぷりのクライマックスに雪崩れ込んだラスト2曲“海になりたい part.2”~“祭りのあと”では、心のヒダというヒダからありとあらゆる感情が溢れ出してきて、忙しくて仕方ないほどだった。カラダはオイ・コールやジャンプを欲しているのに、心はロマンチックな音世界にいつまでも浸っていたい。なんと言うか、そんな感じだ。
「今回のツアーでは、バンドのあり方とか、バンドにとってのライブのあり方とか、そういうことを4人ではじめて腹割って話し合って。やっぱり僕らが見せたいのは、4人だけでやる肉体的なライブなんだっていうことに改めて気づかされました」
8曲目“SEVENTEEN ROMANCE”に入る前のMCで、小出はこんなことを淡々と語っていたけど、まさに4人の生の音で紡ぐグルーヴを極限まで磨き上げた結果、楽曲そのものが持つドラマチックな幻影がより強烈なエナジーを放って輝きだす……そんなベボベが目指すロックンロールの理想形とも思える強靭な音像が、今夜のライブでは鮮やかに表現されているように思えた。しかも、そこに背伸びしているような感覚はなく、あくまでも力みのないスタンスで行われていたことが、とても感慨深かった。ポップとロック、キャッチーとマニアックの間を柔軟に行き来する器用さを持ち、その器用さゆえに、さらなる高みを目指す過程の中でウジウジ悩んだり空回りしたりすることも少なくなかった、かつてのベボベ(というか小出)。しかし今の彼らは、ロックバンドのシンプルなダイナミズムに訴えかける、とても潔くてカッコいいバンドへと成長したのだ。
最後に。本編があまりにもストレートで体育会系なムードだっただけに、より際立っていたのがアンコールで披露された新曲“yoakemae”の異様さ。こういう音という音を解体して再構築したような、恐ろしく文学的で知性溢れるサウンドを鳴らすことができるのも、やはり彼らの魅力に変わりはない。ある種、両極端とも思える武器をガッチリと手にしたベボベは、これからもっと面白いバンドになっていく。(齋藤美穂)
セットリスト
1.17才
2.Stairway Generation
3.BAND GIRL'S SPIRAL DAYS
4.Good bye
5.LOVE LETTER FROM HEART BEAT
6.April Mirage
7.DEATHとLOVE
8.SEVENTEEN ROMANCE
9.FICTION ONCE MORE
10.愛してる
11.SAYONARA-NOSTALGIA
12.ラブ&ポップ
13.Transfer Girl
14.ドラマチック
15.真夏の条件
16.海になりたい part.2
17.祭りのあと
アンコール 1
18.yoakemae
19.change
アンコール 2
20.夕方ジェネレーション