モテキナイト3 @ リキッドルーム恵比寿

『モテキ』イベント3回目は、映画版がクランクアップしたこのタイミングで、前回と同じ(前々回は代官山UNITでした)、そして映画内にも登場しているというリキッドルームで開催。大根仁監督、ダイノジ、やついいちろう、藤本幸世(念のため説明すると、『モテキ』の主人公の名前です。つまり、森山未來です)がDJ。女王蜂、サ上とロ吉、在日ファンク、ACO、eastern youthがライブ・セットでの出演。あとシークレット・ゲストあり。事前にリキッドの公式サイトにアップされたタイムテーブルを見ると、それ、バンドとバンドの間の時間だから、DJだろうな、そして映画『モテキ』の出演者関係だろうな、と予測していたのですが、仲里依紗でした。ヒロイン4人のうちのひとり、ガールズバーで働く愛ちゃん役。

で。こういう、複数のアーティストが出るイベントに行くと、終わったら自分がライブレポ書くことになっていても、このRO69内の自分のブログでつい実況をしてしまい、あとで困る、という癖が私にはあるのですが、今回もやってしまいました。
4回(と、おまけ1回)にわたって、書いております。PCの方、こちらからです。携帯の方は、家に帰ったら見てみていただければ。http://ro69.jp/blog/hyogo/54903
なので、以下、そこに書かなかったことを補足するみたいな形で、ショート・レビューさせていただきます。あ、実際の時間はちょっとずつ押して、トリのイースタンのアンコールが終わった時は、22時回ったくらいでした。

17:00〜17:30/大根仁
すみません大根さん、間に合いませんでした。

17:30〜18:00/ダイノジ
DJ大谷とダンサーおおち+スーツの後輩芸人2名。BLUR“SONG2”、“銀河”“夜明けのBEAT”とフジファブリック2連発、ももクロ、オザケン“強い気持ち強い愛”のダンス・ヴァージョンなどなどをプレイ、シメはいつものスペシャルズ。オザケンでおおち、フロアへ乱入。
なお、“銀河”、DJダイノジの定番ですが、志村つながりということで、志村けんの「ヘンなおじさん」のアクションを取り入れた振付、彼らは何年も前からこの曲でやっているんですが、途中で音を止めて、大谷くん、MCしてました。フェスとかでやり続けていたところ、フジのライブに行ったらうしろの方でこの振付で踊っているお客さんたちがいて、慌てて止めたことがあるそうです。で、志村くん本人が、そのダンスを見る機会があって、怒るかなと思ったら、「ピッチ変えてるせいで、僕の声がヘンにきこえるのが、ちょっと……」「え? ダンスはいいんですか?」「ダンスは、いいです」ということで、本人の許可を得てるし、今後もやり続けます、と宣言して、拍手を浴びてました。

pics by 五十嵐絢也
18:00〜18:30/女王蜂
“デスコ”が映画『モテキ』のテーマ・ソングになった、あと作品内でライブのシーンもある(しかも撮影場所はここリキッドルーム)女王蜂、久々のライブだったらしいですが、まー、すごかった、今日も。「将来的には」とかじゃなくて、今この時点で、既に世界レベルだと思う。しかも、「海外と同じような、遜色ない音を出しているから」という理由ではなく、「絶対海外にはねえ、こんな音」という意味で。海外どころか、日本においても例がない、こんなロック・バンド。というか、「ロックか?」ってフシすらある。メロディそのものが、ロックやJ-POPのそれではない。なんというか、「土着」なのです。民謡とか、童謡とか、唱歌とか、そういう感じだ。土砂崩れのようなバンド・サウンドと圧倒的としか言いようのないボーカリゼイションは、まぎれもなくロックのそれだが、楽曲という意味では、ロックの形式を超えてしまっているバンドだと思う。

18:30〜18:40/大根仁
1曲のみ。電気グルーヴ“モノノケダンス”の、思いきりテクノに寄ったリミックス。で、テレビ版『モテキ』でオム先生役だったハマケンが登場、映画には出番がないことを愚痴ったり、でもフェスのシーンで出ていることをみなさんにお伝えしたり、『グータンヌーボ』出演時のことを「普通ですみませんでした」と謝ったり、中途半端な感じで踊ったりあおったりした末、次のサイプレス上野とロベルト吉野を紹介。

18:40〜19:10/サイプレス上野とロベルト吉野
ここ1ヵ月で観るの2回目でした、私。前回は7月3日日比谷野音、スチャダラパーのイベント「オール電化フェア」。で、その時も、今回も、同じように「すんごいなあ、このふたり」とつくづく思うのは、一見さんを巻き込む力の強さ。とにかくもう、みんなが腕を挙げるまで、コールするまで、腰低い・笑いあり・しかしガンコで絶対曲げない姿勢でもって、なしつこくしつこくあおっていく。で、そのさまがおもしろいもんだから、みんなのせられていく。「サ・ウ・エ・ト・ロ・ヨ・シー!」コール、野音でも、ここリキッドでも、響き渡っていました。あと、1DJ、1MC、時にはDJもマイクを持つ、という、「だからできることがすごく限られる」「でもあえてそれでやる」みたいな、最小限人数のスタイルも、おもしろいなあ、とも、いつも思う。

19:10〜19:30/DJやついいちろう
研ナオコ“夏をあきらめて”かけてエアボーカル、で、スタート。あとはいつもの王道やついDJでアゲまくるセットでした。つまり、B’z、TRF、ももクロ、チャゲアス、という流れ。このへんの曲、邦楽のロックがかかるDJイベントにおいても、誰もかけようと思わなかった、というか、かけるという発想すらなかった(ももクロは違うけど)、でもやついくんは平気でかけた、そしたらめちゃめちゃ盛り上がった、という意味において、先駆者だと思います。あとに続く人、あんまりいなさそうですが。あまりに強烈すぎて、すぐ「やついの真似だ」って言われそうなので。
あと、この『モテキナイト』、やついくんは3回とも出ていますが、「いつきても客入れDJでしたが、今日はいよいよ本編に!」と叫んでおられました。

19:30〜20:00/在日ファンク
THE BAWDIESのROYをゲスト・ボーカルに招いたシングル“Escape”のイントロだけやってライブをスタート。前半は“ダンボール肉まん”“罪悪感”などをメドレーで固め撃ち、後半は“爆弾こわい”“マルマルファンク”“夜”“京都”“きず”と、9月7日に出るニュー・アルバム『爆弾こわい』と前作『在日ファンク』の曲を混ぜて連発。鉄壁なバンド・サウンド、ビシビシ踊れているので本来かっこいいはずなんだけど、体型のせいで妙におもしろいハマケンのダンス、そして歌とシャウト、もういちいち大ウケ。さすが、ある意味日本で最もJBに迫っている男(「ある意味」については、こちらをご参照ください http://ro69.jp/blog/hyogo/53421 )。ただ、ここでも、『グータンヌーボ、何にもできなくてすみませんでした』と謝っていた。あとで楽屋で本人にきいたら、「普通だった」「何にもしてなかった」と、知人友人みんなからダメ出しされたそうです。そうかなあ。俺はおもしろかったんだけどなあ。っていうか、みんな、ハマケンにそんなに期待しても。って言いそうになったけど、もっと失礼なのでやめました。
あと、浜野さん、MCで「かわいいファンクをやろうと思ってます。かっこいいファンクならいくらでもできる」と断言したのと、ラストに“きず”をやる時赤いタンクトップ姿になったんだけど、そのなで肩っぷりが、なんか、すごかったです。

20:00〜20:20/????
で、ここが、シークレットゲストDJ、仲里依紗。彼女が出てきた、そしてDJをやるっていうことで、フロアはどよめいてたし、みんなブース前につめかけていたが、私、プレイの方にびっくりしました。かける曲は四つ打ちとブレイクビーツ、ちゃんと曲のBPM揃えてつないでいく。レディ・ガガとか、バナナラマがカヴァーしてヒットしたので有名なダンス・チューン“ヴィーナス”とか、Sonny Jのリミックスとか、普通にかけてた。つまり、この日、彼女が最も「ちゃんとしたDJ」だった、ということです。ダイノジもやついくんも、「めちゃめちゃおもしろいけど、それ、DJか?」ってとこ、あるでしょ。1箇所、つなぎミスって謝ってたし、あとでtwitterで落ち込んでいたが、よかったですよ。
あと、プレイ中に、長澤まさみと麻生久美子が登場(というか、仲里依紗にひっぱり出された感じ)、つまり、4人のヒロインのうち3人が並ぶ、という超レアなシーンあり。当然、めちゃめちゃ盛り上がりました。

20:20〜20:50/ACO
映画の中で“悦びに咲く花”が使われている、ということで、登場。正直、ひっさびさに観ましたが、すごかった。まずバンドが反則。ギター、ベース、ドラムのみ。ギターの方は、私、存じ上げなかったんですが(岩谷啓士郎。トクマルシューゴや南波志帆などで仕事しているギタリスト・マニュピレーター・エンジニア)、ドラムはLOSTAGEの岩城智和、そしてベースはex.NUMBER GIRLで現在プロデューサー等で活躍中の中尾憲太郎。どうでしょう。すごいでしょう、それは。ブログにも書いたが、そして大変に語弊のある言い方ですが、「楽器がうまくなったソニック・ユース」みたいな、「アコースティックなテイストのこともやるアメリカン・オルタナティブ」みたいな、すごい音を出していた。で、ACOの歌、それとがんがんわたり合っていた。「がんがん」っていうと、ちょっと違うかもしれない。さからったりぶつかりあったりするんじゃなく、ふわっとやわらかく自然にのっかっていくんだけど、なのに、いつの間にか音を制圧しているような、そんな歌。お客さんみんな、固まってました、すごすぎて。で、曲が終わるたびに、どーっと拍手がわいてました。“真正ロマンティシスト”で始まり、“4月のヒーロー”で終わった全6曲。“悦びに咲く花”も、しっかり2曲目にやってくれました。

20:50〜21:10/藤本幸世
人前でちゃんとDJやるの、私の知る限りでは、たぶん2回目。で、それはもうすんごい緊張っぷり。途中で、幸世の親友・島田(新井浩文)が飛び入り、「ちゃんとやれ!」とハッパかけられたり、「こんなに緊張している森山未來、見たことありません」とばらされたりしていましたが、まあ、そんな感じのDJでした。幸世、「テンパったらとにかくしゃべれって言われました」と、何度もマイクを持ってました。あと、フジファブリック“花屋の娘”やさかいゆうに加え、マボロシ、SUPER BUTTER DOG、ライムスターとSUPER BUTTER DOG、という、狭い範囲の選曲だった気もしますが、私的にはSBDインディー時代の超名曲“僕はこうきりだした”かけてくれたので、100点です。

21:10〜21:45/eastern youth
大根仁の人生を変えたバンドです。救ったバンド、と言ってもいいかもしれません。これ、ラジオとかで本人もよくする話ですが、1999年、苗場に移って1回目のフジロック。大根さん、当時、仕事も私生活もあんまりうまくいかなくて、へこんでいて、フジの当日にふと思い立って、何の準備もせず、友達と2人でフジに行ったところ、そのへこみ期を脱するきっかけになるほどのものすごいショックを受けたと。で、それ以降の仕事に、大きな影響を受けたと。特に、その時、ホワイト・ステージで観たイースタンのライブに、やられた。というエピソードがあるのです。
ただ、この『モテキナイト3』、基本的に楽しいお祭りイベントなので、イースタンみたいなシリアスなバンド、どうなのかなあ、と思ったけど、失礼しました。すんごかった。何この音。何この歌。そういうステージ、終始。この人にしか出せない音、この人にしか出せない響き、この人にしかふりしぼれない声、この人にしか歌えない歌って、あるんだなあ。って、こうして文字にすると、あたりまえすぎておもしろくないですが、でもそう書きたくなってしまうくらい、すごいもんでした。吉野寿が、じゃないです。3人とも、です。
“男子畢生危機一髪”で始まり、“未ダ未ダヨ”“荒野に針路を取れ”“這いつくばったり空を飛んだり”“靴紐直して走る”を経由して“ドッコイ生きてる街の中”で終わり、アンコールを“砂塵の彼方へ”でシメる全7曲。吉野、“靴紐~”やる前のMCで、「若い方が多いんですかね。何か、匂いが違うような気がします。僕ら、eastern youth、youthとは名ばかりで」と、笑いをとってましたが、ひとたび曲が始まると、お客さんみんな、すんげえひきしまった顔になってステージを凝視していたのが、印象的でした。

『モテキナイト』、大根仁のtwitterによると、次は10月だそうです。映画の公開、9月23日だから、公開中のイベントとしてやるか、公開が終わったに打ち上げっぽくやるかの、どっちかだと思います。なお、藤本幸世、次もDJやる気満々だそうです。そういえば、終わったあと楽屋で挨拶したんだけど、今日は、「自分のすべりっぷりが、恥ずかしさを通り越して気持ちよくなるような、そんなマゾヒスティックな感じでした」みたいなことをおっしゃってました。次も楽しみにしてます。(兵庫慎司)