PE'Z @ 渋谷公会堂 - pics by Rui Hashimotopics by Rui Hashimoto

PE'Z @ 渋谷公会堂

PE'Z @ 渋谷公会堂
PE'Z @ 渋谷公会堂
9/15から10/15までの1ヶ月間、全12曲収録の新作フル・アルバム『向日葵-Himawari-』をなんとフリー・ダウンロードという形で発表してしまったPE’Z。しかも、このアルバムのCDは、ライブ盤とセットで改めて発売されるという。そのためダウンロード期間が明けた直後の10/16に、渋谷公会堂で公開録音ライブが行われた。会場のエントランスでは、来場者一人一人に一輪の向日葵が配られている。開演時間を迎え、ステージのスクリーンには映像と共にメッセージが流れる。3.11という突然の困難が日本を襲ったとき、PE’Zの面々はシンガポールに滞在していたということ。音楽を通して新しいアクションを起こさなければならないと奮起したこと。「今こそ、立ち上がるとき」「俺たちは、ヤルぜ」と熱い言葉が映し出され、メンバー5人が姿を現す。座席制の渋公であるにも関わらず、のっけからオール・スタンディングの様相を見せてしまうオーディエンスたちだが、まあそれはいつも通り。驚くべきなのはシアター・レヴュー風に華々しくぶっ放されるスウィング・ナンバー“果てしなき世界”をはじめとして新作『向日葵-Himawari-』の楽曲がそのまま収録順に披露されてゆくということで、つまりPE’Zのライブにとっては馴染みの無い楽曲群であるにもかかわらずガッチリと焚き付けられてしまうということなのである。続けてパンキッシュに弾けるPE’Zらしさが全開のナンバー“陽ノムクホウヘ”。ヒイズミマサユ機(Key.)はさっそく椅子から立ち上がり、定位置からハミ出すほどに才気が迸るフレーズを弾き倒している。物語的なハード・バップ・スタイルの中でOhyama“B.M.W”Wataru(Tp.)からKadota“JAW”Kousuke(Sax.)へとソロのバトンが繋がれる“Everybody wants to be like you”、エモーショナルな楽曲にオーディエンスの間の手がきっちりと加えられてゆく“Go Ahead!”、アッパーに爆走しつつPE’Zならではの雄弁なテーマが、歌心そのもののような旋律が映える“Clumsy Clumsy”。『向日葵-Himawari-』という作品は、PE’Zがジャズというスタイルの強みと可能性を再確認したような作風に僕には感じられていたが、ライブとなるとしっかり熱狂を生み出しつつ、作風の面白さも一層見えてくる。航(Dr.)がファンキーなリズムを刻み、ヒイズミがヴォコーダーで印象的なリフレインを加える“BIG SUSHI”、そしてボサノヴァのリズムなのに東洋風の旋律が情感を高めてゆく“Bus street”と、彩り鮮やかなアンサンブルが続く。客席全体がボ・ディドリー・ビートのクラップを放ち、バンドの頭上ではミラーボールも回る“Jungle planet”の盛り上がりは凄まじいものだった。ホットなラテン・ファンク・チューン“斜陽”ではKadotaのサックスが大活躍を見せる。だが、アッパーな曲調だけではなくて、夜をくぐり抜けてゆくようにじっくりとドラマを描き出すバラード“I remember jazz”も素晴らしい。個人的には『向日葵-Himawari-』の中でもかなり好きな曲だ。そして陽の光が降り注ぐようなジャンプ・ナンバー“sola no tameni”では、途中Kadotaのソプラノ・サックスの音だけを残してOhyamaがステージ奥からカメラを構え、オーディエンスとともに記念撮影を敢行してしまう。客席一面に向日葵が揺れ、一人演奏を続けているKadotaもなんとか収まって大成功。美しい一枚になったのではないだろうか。ソウルフルかつアグレッシブな“NEXT!”が披露されたところで、『向日葵-Himawari-』の収録曲はすべて演奏されたことになる。「今日はライブ・レコーディング渋谷公会堂、ありがとうございます。みんなよくアルバムを聴き込んでくれたみたいで。初めてやる曲なのに、こんなに盛り上がってくれてありがとう。冒頭の映像にもあったんだけど、我々は3月11日にシンガポールにいて、非現実的なショックを受けまして。現地の人にいろいろ声を掛けてもらって、あ、俺たち日本人なんだなって気づかされて。5人で音楽をやるってのもそうなんだけど、これからの日本はもっとみんなで力を合わせなきゃダメだと思って、フリー・ダウンロードという形でアルバムを出しました。先日はスペインに行って来たんだけど、初めてやる土地で、でもPE’Zを知らなくても伝わってるよなって改めて思って。楽しむためにいろんなことをやっていきますんで、これからもよろしくお願いします」。Ohyamaがそう語った後には、他のメンバーも一言ずつ挨拶する。このライブの前日にバンドはめでたく結成12年を迎えたというのに、なぜNirehara Masahiro(B.)のMCは今でもこんなに肩に力が入ってしまうのだろうか。そして「じゃあ前半は新しい曲をやってきたけど、ここらへんで古い曲もやるから。覚悟しとけよ?」というOhyamaの宣言に続いて、怒濤の侍JAZZメドレー開始である。“Akatsuki”や“Hale no sola sita~LA YELLOW SAMBA~”、それに“春疾風~ハルハヤテ~”など、こなれまくった百戦錬磨のナンバーが畳み掛けられる。さらに終盤戦に向けては、音源化もされていない楽曲群が投下される。「アップテンポな曲だけではないよ」と自信満々のOhyamaである。ハッピーでカラフルな“Bye-Bye Yesteday”、長く続く道程を覚悟するような重厚なバラード“Answer”へ。「今までも、本編で燃え尽きようってことでアンコールはやってこなかったんで、今回もあと2曲で終わりです。ありがとうございました」。そしてユーモラスに弾けるのだが経験値の分だけ味わい深い“トロピカルマンゴーダンス”、最後はスパニッシュ風に情熱と狂騒が渦を巻く“とんずらドップラー”(かっこいい曲なのにこのタイトルである。誰がつけたかは概ね想像できるが)でフィニッシュ。ところがOhyama、「ごめん、さっきは燃え尽きて終わりとか言ったけど、おれまだ燃え尽きてないからもう1曲やっていい?」と大歓声を誘う。「え? なにやるの!?」という感じで慌てた表情のNireharaが可笑しい。この日2度目の“陽ノムクホウヘ”が華々しくプレイされ、今回のライブ・レコーディングは幕を閉じた。終演後の夜の渋谷に散っていった向日葵軍団は、傍目にもちょっといい感じだったのではないかと思う。PE’Zは自他ともに認めるライブ・バンドだ。しかしスタジオ・レコーディング作品を軽んじているわけではないし、そのために『向日葵-Himawari-』をフリー・ダウンロードで発表したわけでもないだろう。彼らは新たな出会いのきっかけを求めて、そしてより大きなアクションを起こすために、『向日葵-Himawari-』を発表したのだ。だから、「PE’Zはライブだけ楽しめばいい」というような解釈はナンセンスだと僕は思う。『向日葵-Himawari-』は改めて、2012年の元旦に、ダウンロード版では未収録だった楽曲を含めてのスタジオ盤と、今回収録されたライブ盤、それにドキュメンタリーDVDのセットという形で発売される。また、12/23、24、25のクリスマス直撃3日間には、恒例の年末ライブ・シリーズ『EN-MUSUBI 2011 ~祭と、夢と、男と女~』が東京・下北沢GARDENにて開催される予定だ。(小池宏和)
セット・リスト1:果てしなき世界
2:陽ノムクホウヘ
3:Everybody wants to be like you
4:Go Ahead!
5:Clumsy Clumsy
6:BIG SUSHI
7:Bus street
8:Jungle planet
9:斜陽
10:I remember jazz
11:sola no tameni
12:NEXT!
13:メドレー
14:Bye-Bye Yesteday
15:Answer
16:トロピカルマンゴーダンス
17:とんずらドップラー
18:陽ノムクホウヘ (2回目)
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