カサビアン @ 横浜BLITZ

カサビアン @ 横浜BLITZ - pics by Ryota Moripics by Ryota Mori
カサビアン @ 横浜BLITZ
圧巻のライヴだった。しかもカサビアンのそれは、「演奏力が格段に向上した」とか「あの曲のグルーヴが」とか腕組んで唸るタイプの圧巻ではなかった。理屈をすっ飛ばして思いっきりブッ飛べて、本能を揺さぶられる楽しさで、格好良いだけじゃなくてどこかファニーで爆笑する瞬間もちょこちょこあって、骨太ロックの音圧及びシンガロングを受け止める度量もさすが全英1位常連バンドのそれで、そしてなにより圧倒的にエンターテイメントであるという、どこまでもオープンな素晴らしさ。カサビアンがいつのまにかそんな、UKロック・バンドとしては破格の分かりやすさとダイナミズムを兼ね備えた最強のバンドになっていたことを証明する、あまりにも濃密な1時間半だったと言っていい。

最新作『ヴェロキラプトル!』を引っ提げてのジャパン・ツアー、昨夜の横浜ブリッツ公演はその初日である。来週の新木場スタジオコーストまで彼らの転戦は続くので詳しいセットリストを記すことは控えるが、とにかく今のカサビアンを見逃すことはもったいなさすぎる、彼らの音楽に少しでもアクセスしたことがある人なら120%楽しめる内容になっていることを保証するので、予定があう人は今後の公演にぜひ足を運んでみてほしい。本国では既に1万人以上のアリーナでの公演が当然となっているカサビアン、そのアリーナ・ロックのスケール感をヴェニューのサイズによって調整したりするわけがないカサビアンの底抜けのダイナミック・パフォーマンスを二千人そこそこのライヴハウスで目撃できる幸運は今の日本にしかないものだ。

前回来日時はトビー・マグワイアそっくりの七三分けでファンの度肝を抜いたトムだったが、今回はまさかのオールバックに『ターミネイター』のシュワルツネガーみたいなサングラス、というこれまた出オチのようなニュールックでの登場である。ここでとりあえず爆笑しておくのがもはやカサビアンのライヴにおけるマナーみたいなものだろう。そんな自他ともに認めるフロントマンであるトムの左横ではひっそりとサージが、あの英国のバンド・マン中で一、二を争うスーパー・イケメンである彼がスポットライトを浴びることも無くもくもくとギターを弾いている、それがカサビアンの基本フォーメーションである。

カサビアンとは、自分達に対する絶対の自信と確信をベースに成り立っているバンドである。ゆえに、その時々の彼らのモードがその時々の彼らの迷い無き100%の正義となるから、彼らのライヴは来日の度にパフォーマンスの質、音の感触が時々の最新アルバムの傾向を見事に反映したものになる。ファーストの時はアンダーグラウンドの危険臭をぷんぷん漂わせたアナーキーなショウだったし、セカンドの時はいきなり筋力アップしたヘヴィ・グルーヴがブン回されるハードなショウだったし、サードの時はヒプノティック&サイケデリックな60年代のストーンズみたいな色気を漂わせたロックンロール・バンドのショウになっていた。

そして今回もまた、最新作『ヴェロキラプトル!』のモードをまんま反映させたパフォーマンスとなっていた。それはつまりクリアで明瞭、ポップ・ソングとしての強度を余すことなく鍛え上げたカサビアンのカサビアンによるザッツ・エンターテイメント・ライヴということだ。過去のアルバムからの楽曲もそんな彼らの最新モードに合わせてアップデートされているので、曲によって変な落差を感じることもない。オープニングからの数曲はそんな最新モードを一瞬でオーディエンスに理解させるアッパーでゴージャスなナンバーが立て続けに連打される。特に凄まじかったのが“ヴェロキラプトル”で、ほとんどドラムンベースみたいなことになってる高速リズム隊に煽られて中近東のメロがド昂揚感と共に舞い上がり、トムの軸がブレブレな駒みたいな珍妙ダンスといいサージのコーラスとの掛け合いといいこれはもう楽しすぎる!!

彼らは今尚アングラ&エッジーな音を試し続けているバンドなのに、それがいったんカサビアンという「キャラクター」を通過すると極端にポップな楽曲へと化けてしまう、カサビアン自体がもはやそういうポップ化装置と化していることを確認できた瞬間だった。中盤で披露された“クラブフット”も、ここまで明るく、力強く、そしてポップなバージョンは初めて聴いた気がする。かつて、ふてくされた悪ガキのメインストリーム転覆のアンセムだったはずの“クラブフット”が、メインストリームのど真ん中をのし歩く万人のアンセムへと転じたような興奮。超異色のエレクトロ・ナンバー“アイ・ヒア・ヴォイシズ”、超異色のビートルズ・ライクな“グッバイ・キス”といったこれまでのカサビアンでは考えられなかった種類の新曲が当然のようにセットリストに馴染んでいる様も圧巻だった。むしろなぜ今まで彼らがコレをやらなかったのか不思議に感じるくらい異物を余裕で内包するポップネス、それが今のカサビアンが立っている場所だ。

カサビアン @ 横浜BLITZ
振り返ってみれば『ヴェロキラプトル!』からのナンバーはもちろん、旧曲も要所要所でしっかり押さえられた鉄板のセットリストだったと思う。そう、鉄板のセットリストではあるけれど、予定調和とは程遠い2012年のカサビアンの必然に満ちたパフォーマンスだった。アンコールではオーディエンス全面参加型(?)の最大クライマックスも待ち構えているので、これから参戦される方は全力でそれに挑んで欲しい。ちなみに昨夜はトムの誕生日で、本編終了直前にサージの「みんなでトムを祝ってくれないか」の掛け声を合図に彼らとファン全員でハッピー・バースディの大合唱になったりもした。「ロック・スターのオレが照れるわけないだろ?」みたいな顔をしながら全力で照れて全力で喜んでいたトムにとっても、サージ達にとっても、そして日本のファンにとっても思い出深い一夜になったのではないか。

カサビアン @ 横浜BLITZ
私は全身全霊でロック・バンドをやっていているカサビアンのわき目も振らぬ猛進姿勢と、そんな彼らの全身全霊の情熱が100%報われている奇跡にいつも恐ろしく感動してしまう者でもある。ロック・バンドをやることに当たり前のようにエクスキューズやクリシェが付きまとうことになったこの時代のニヒルをぶち破って、彼らがロックを愛し、彼らのロックが愛され続ける限り、まだまだ「大丈夫だ」と思えるのだ。(粉川しの)
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