木村カエラ @ 日本武道館

木村カエラ @ 日本武道館 - pics by 三吉ツカサpics by 三吉ツカサ
木村カエラ @ 日本武道館
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木村カエラ @ 日本武道館
ちょっとビックリするぐらい眩しくて、凄まじいエネルギーに満ちたアクトだった。木村カエラの最新アルバム『8EIGHT8』を引っ提げた全国ツアーのファイナル=武道館3DAYの最終日。女性として母親として、さらにはシーンの先頭を走るポップ・アイコンとして「いま自分がすべきこと」と真正面から向き合ったカエラの覚悟が、光の洪水となって武道館全体を呑み込んでしまったような、そんなステージだった。かつて陽性エネルギーを無防備に振りまくヒマワリのような存在だった彼女が、地球上の隅々に光とぬくもりを届ける使命を帯びた太陽そのものになったー―そう思わせるほど、揺るぎない強さとスケールを持つ表現者へと成長した木村カエラの姿がそこにはあった。

「人の心のモンスターを食べ尽くすスパイダー」という意味が込められたアルバム・タイトル『8EIGHT8』。そのコンセプトよろしく、ライブは表題曲“8EIGHT8”でスタート。まずはクモをモチーフにした衣装を纏ったダンサーが現れ、ステージ中央から客席へ伸びる花道先端のせり上がりステージからカエラが登場! 黒いスパンコールのミニドレスに黒のレギンスをはいた
彼女は、細い手足を大きく動かしながらパワフルな歌声を放っていく。その様子は、まさしく獲物を捕らえるスパイダーみたい。ステージ上にはクモの目をイメージした8つの丸いビジョンが並び、アルバムの世界観をよりハッキリと打ち出していた。

ライブ前半は、そんな最新アルバムの楽曲が中心。「Let’s トーキョー!」というシャウトからフリーキーなロックンロールが弾けた“Make my day!”、挑発的なビートの上で赤黒いグルーヴがトグ
ロを巻いた“deep beep”、ヒリヒリとしたアコギサウンドから灼熱のアンサンブルへと突入した“KEKKO”と、聴き手の闘志に片っ端から火をつけていくようなアグレッシヴな楽曲が次々と鳴らされていく。渡邊忍=しのっぴ(G)、會田茂一=アイゴン(G)、村上洋一=ようちゃん(B)、中村圭作=テリー(Key)、柏倉隆史=キャッシー(Dr)ら豪華バンド陣の演奏は、とにかくダイナミックで隙がない。しかし何より目を奪われるのは、そんなバンドの前で超人的なパフォーマンスを見せる木村カエラその人だ。ステージを所狭しと駆け回り、キレのあるダンスを披露し、パワフルな歌声を届けていくカエラ。どんなに激しく動いても「疲れ」や「必死さ」を微塵も感じさせない彼女の身体能力の高さには圧倒されたし、何より「武道館にいる観客をひとり残らず元気にしたい」という強い意志が全身から漲っていることに驚いた。小さな身体をめいっぱい動かしながら伸びやかな歌声を届ける彼女の姿は、ちょっと尋常じゃないほどの気迫に満ちていた。

中盤のMCでは、「ちょっと真面目な話をしていいかしら」と口を開いたカエラ。最新アルバムに込めた3つの思いを、ひとつひとつ丁寧に語っていく。1つ目は、大切な人との関係が無限につながってほしいという願いを込めてアルバムタイトルに「8」=「∞」の文字を入れたこと。2つ目は、どんなときでも「ありがとう」の気持ちを素直に伝えられる強い人間でありたいということ。3つ目は、辛いときこそ「近くで見守ってくれる誰か」の存在を忘れてほしくないということ。そして「皆に感謝の気持ちを込めて」という言葉から、花道に設けられたアコースティック・セットで“チョコレート”を披露する。さらに「大切な人を思い浮かべながら聴いてください」と、“orange”へ。何気ない日常を慈しむような歌声から、彼女が日々の生活を通して導き出した地に足のついたメッセージが零れ落ちる。序盤の楽曲のような派手さや凄みはないけれど、彼女が本当の意味でポジティヴなメッセージを放つアーティストとしての自覚を手にしたことがよくわかる、凛とした強さに満ちたセクションだった。

“Ring a Ding Dong”でポップに弾けた後は、クライマックスへ向けてボルテージはMAXに! 無数の照明とレーザーが幻想的な風景が描いた“Circle”を経て、“Yellow”“TREE CLIMBERS”“BEAT”などオイ・コールとハイ・ジャンプを果敢に煽り立てる定番曲を畳み掛け、“喜怒哀楽 plus 愛”で本編フィニッシュ。

「ここからはハッピーな歌しか歌わないからね」とスタートしたアンコールでは、カラフルなショッキングピンクのチュニックに着替えたカエラを中心に、目映いほどの光と色に満ちた陽性な磁場が形成されていく。ここでもパワフルな歌声を響かせ、ダンサーとともに一糸乱れぬダンスを披露し、力強く拳を振りかざしながら観客に力いっぱいエネルギーを与えていくカエラの姿に脱帽。「幸せ」を伝播させるためなら自らを酷使することもいとわないとでも言うような、献身的な愛と気迫に満ちたパフォーマンスに、客席のあちこちから「カエラ、ありがとう!」という声が飛んでいた。

ダブル・アンコールは、初期の重要な曲“happiness!!!!”で大団円。演奏前、「ささやかな幸せを積み上げていくことで大きな幸せにつなげてほしい」「皆が幸せになってくれたら本当に嬉しいし、私はそのために歌っています」と改めて決意を口にするカエラの声が、少しだけ震えていたのが印象的だった。終始キラキラとした笑顔に満ちた2時間半のアクトの最後に訪れた、涙の1ページ。極まる想いをグッと堪えて歌声を響かせる彼女の笑顔は、これまで以上にピュアで凛とした輝きを放っていて本当に美しかった。(齋藤美穂)

セットリスト
1.8EIGHT8
2.Make my day!
3.リルラ リルハ
4.STARs
5.deep beep
6.L.drunk
7.KEKKO
8.うたうらら
9.ホシノタネ
10.lollipop
11.A winter fairy is melting a snowman
12.チョコレート
13.orange
14.Ring a Ding Dong
15.Moon Light
16.Circle
17.You bet!!
18.Yellow
19.TREE CLIMBERS
20.マスタッシュ
21.BEAT
22.喜怒哀楽 plus 愛
アンコール
23.Butterfly
24.BANZAI
25.Magic Music
アンコール 2
26.happiness!!!
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