※これは4月11日(水)のライヴのレポートです。12日(木)の2日目終了を待って、アップしました。昨年10月の武道館2日間に始まった“KREVA CONCERT2011「GO」”、その追加にして最終公演となる国際フォーラム2日間、その1日目。ツアーの幕開けとなった武道館の模様は当「RO69」でもいち早くレポートされているとおりで(こちらです http://ro69.jp/live/detail/59631)、僕もその後全国18本を回ったホールサイズツアーを体験してるのだが、とにかく“貪欲”という言葉をそのまま絵に描いたような、燃えたぎる上昇指向の中に今の彼はいる。これまでもヒップホップ・ソロアーティストとして初の武道館ライヴとか、ヒップホップ・ソロ・アーティストとして初のアルバム・チャート1位とか、充分過ぎる成果を残している彼。しかし、もっともっと欲しがる気持ちは一向に収まる気配を見せない、そんな気持ちがそのまま形になっているのが今回のツアーで、ツアー・タイトルこそ最新アルバムと同じ『GO』を掲げてはいるものの、選曲は代表曲連発のゴージャス・メニュー、そして演出アイデアもスタート時の武道館のそれをそのままホールに持ち込んだ贅沢過ぎるそれになっており、それが最終公演となるここ東京国際フォーラムでは一層メリハリのついたものとして研磨されていた。ところで、すでに各方面で話題になっているKREVA自身のツイート、「最終公演のチケットが…売れてない。いや!全然売れてない!」という余りに赤裸々な表現による独白についてだが、確かに5000人収容の国際フォーラムの2階を使っていない状態ではあったものの、1階は満杯で場内の熱気や歓声は充分に濃いものだった。4月の年度始めで仕事や学校を早い時間にはなかなか切り上げにくい時期の平日というのも巡り合わせも悪かったが、そこを虚飾の無い言葉で自ら「来てください」とアピールし、特別ゲストや新曲披露まで公約するなど、出来ることはすべてトライした彼の姿勢は、なあなあで済ますことを許さない戦う男の本位だったと思う。ちなみに彼のMCによると、今日のオーディエンス数は3000人で、当日券で駆けつけてくれた人は200人もいたという。そんな経緯を知る場内は、ちゃんと絵になっている客席になんとも言えない安堵感が漂っていて、加えて開演前の注意事項アナウンスがやたら丁寧な口調で「本日はご来場いただき、大変感謝しております」と語り始めるくだりに一斉に笑いがこぼれるなど妙な一致団結感があるのも今日らしい空気。そんなムードの中、すっと場内が暗くなると、いきなりスクリーンに現れたのは「Twitter 始めました」の文字。そこから毎日のツイッターが順を追って繰り返されるという半ば自虐的な作戦が始まるのだが、逃げも隠れもしない姿勢もここまでくると立派というもの。そして最新のツイート“さぁ、始めるか!”の文字とともにオープニング曲が始まるや、大量のスモ-クがステージ上を覆い、ステージ後方の一段高くなった場所に全身ギラギラの銀スーツに身を包み、黒のサングラスも大仰な彼が神の降臨のごとき威圧感で現れる。大歓声の中、のっしのっしと階段を降りステージ前方まで歩み寄ってくるのだが、次にはそこで宙を見つめながら微動だにせず悠然とイントロをやり過ごすという威風堂々の作戦が展開される。実はこれ、このツアーではレギュラーの流れなのだが、ツアー前半時に比べ歩みの悠然ぶり、そして静止時間(というか、もったいぶり時間)の長さ&オ―ラ感において格段のスケールアップを果たしており(1分以上はあったと思う)、この“何もしないことでスター感を漂わせる”という大胆技をここまで絵にしてしまったことに、まずは笑いながらも大きく頷いてしまう。そこから場を引き裂くような入魂シャウトの“ふざけんじゃねぇ!”という一節で入る「基準」からは一気に躍動感が爆発するステージに。そのまま「ストロングスタイル」~「ACE」という彼の代表的所信表明ソング3連発でまずはこのツアーに向けての強気モードを見せていくのだが、この場合の強気というのは必ずしもラッパーとしてのアグレッシヴな姿勢だけを指しているのではないところがミソ。パフォーマーとしてだけでなく、クリエイターとしてのアイデアについても同様であることが曲が進むにつれて分かってくる、実はなかなかに考え抜かれた曲順、そしてシークエンスなのだ。このツアーはMCをほとんど入れずに、曲の力や言葉の力できちんとオーディエンスを納得させる、という大きな課題を彼は設定していて、全体に言えることは曲のフェイドアウト~フェイドインのタイミングやアレンジに実に手間暇がかかっているということ。これは彼のトラックメイカーとしての大きな自負でもある点で、それはツアー中に自身の曲のミックスCD(しかも全編インスト)をリリースしている点でも明らかだが、このツアーはパフォーマー力に加えスタジオ作業の手腕なども含む総合的な音楽力で勝負しようとする気宇壮大な思惑も含まれている。だからこそ、最新アルバムのツアーながら選曲はベストヒット・メニューだし、演出も一層凝ったものになるわけで、もっと言うと大胆さも丁寧さもどちらも付きつめた、彼の貪欲さが彼自身をまたひとつ新たな次元にトライさせているツアーだということが出来ると思う。なので、冒頭3曲は楽曲のアグレッシブさの裏をかくように、綿密なトリートメントで美しいメドレー展開に仕立て上げる周到さも光れば、「瞬間speechless」のフェイドアウトからアカペラ状態で「スタート」にスライドさせていく間の巧みさも味わい深い、エキサイトメントとストイシズムの重ね技で聴かせる、多くを求める男ならではの濃密な時間が繰り広げられていく。という贅沢な時間にすでに中盤くらいで満腹感は充分なのだが、この日はさらに予告通りとはいえ後半の盛り上げタイムにMCUとLITTLEまでもが登場してしまうのだから、ちょっと豪勢過ぎるくらいかも。登場した曲はアタックの効いたナンバー「挑め」で、1番をKREVAが歌い終えたタイミングで、まず上手からMCUがゆっくり歩いて登場。場内大騒ぎとなる中、この曲の肝である、トラックがブレイクしたところでの決め台詞“何度でも許す”の部分からは完全に彼が曲をリード。タフな中にもどこか老獪なユーモアが潜むラップで完全に自分のカラ―でワンコーラスを全うする姿は、貫録もたっぷりの凛々しさ。そして次のコーラスで2人がユニゾンするタイミングになると、今度は下手からLITTLE登場。続いて3番の“何度でも許す”からは彼が持ち前のハードなラップで噛みつくような性急さを披露するのだが、そこに2人がそれぞれの呼吸で加勢していく様子には、往年のコンビネーションをありありと思い出す瞬間も。現在活動休止中のKICK THE CAN CREWではあるが、例えば「ROCK IN JAPAN FES」や昨年の震災復興イベントなどではよく顔を合わせている経緯もあり、ジャパニーズ・ヒップホップ・シーンを牽引した往時の阿吽は今なおしっかりと生きているようだ。なにより今日はKREVAの助っ人として登場した両者だけに、その余裕綽々のたたずまいが一層頼もしいくも有難いものとして目に映ったのかもしれない。そんなフルコース・ライブを「KILA KILA」~「探究心」という、敢えてどちらかというとやさしい、耳当たりの柔らかいナンバーで本篇の締め括りとしたのは、まだまだ長い旅路を覚悟している男として、燃え尽き感よりも余韻を強調するメニューだったように感じる。もっとも、アンコールを受けて登場した時には「もう本編終わったから、ここからは2時間喋ります」と語り、すっかりカジュアルな別人と化してた彼ではありますが。しかしながらここで改めてオーディエンスに対し今日来てくれたことへの感謝の気持ちを述べ、動員実数を報告したところは彼らしい律義さ。最後の最後に登場した予告新曲「OH YEAH」はタイトル通りシンプルな掛け声が覚えやすいパーティーチューン。コール&レスポンスとか考えたことが無い、という彼がたまにはやってみようと思ったという曲で、まずはその部分をオーディエンスと練習し、お互い準備万端な中で初披露されることに。やや南国テイストの軽快なこの曲は、今回の濃密感重視のツアーとは少しく趣を変えたものではあるが、それはつまり、これまでに無かった新たな武器としてこの曲が考案されたであろうことは明白。今回のツアー成果について、彼自身「また同じところを回って、そして今度はここの2日間を満杯にしたい」と改めて語っており、まだまだ欲しがる男としての業は全然収まりそうにない、そんな感慨が深く残った一夜。それでも最後の最後、出演者全員が再びステージに集合した時、MCUとLITTLEが花束を抱えて登場しKREVAを激励する絵で幕となったのは美しかった。(小池清彦)【セットリスト】
1.基準
2.ストロングスタイル
3.ACE
4.パーティはIZUKO?
5.THE SHOW
6.成功
7.H.A.P.P.Y
8.ビコーズ
9.ひとりじゃないのよ feat.SONOMI
10.微炭酸シンドローム feat.SONOMI
11.瞬間speechless
12.スタート
13.かも
14.runnin’ runnin’
15.音色
16.EGAO
17.アグレッシ部
18.国民的行事
19.挑め~挑め Remix feat.MCU&LITTLE
20.Have a nice day!
21.最終回
22.C’mon , Let’s go
23.KILA KILA
24.探究心
アンコール1
23.ひかり
アンコール2
24.OH YEAH
KREVA@東京国際フォーラム・ホールA
2012.04.13 00:00