アルカラ @ Zepp DiverCity

アルカラ @ Zepp DiverCity - all pics by AZUMA Tatsuyaall pics by AZUMA Tatsuya
9月から全国25公演のスケジュールで敢行されてきた、アルカラ6作目のアルバム『むにむにの樹』を携えた『むにむになるままにJAPAN TOUR』。対バン・シリーズを経て、名古屋・大阪・東京のファイナル・シリーズは特別編という設定になっている。東京・Zepp DiverCity公演は『特別編 最終話 謎解きはbarのあとでのおはなし』である。すべての公演においてそれぞれにユーモラスなサブ・タイトルが付与されているという、悪ノリなのか愛が深いのか、たぶんその両方であるという点においても、過剰で獰猛なアルカラらしさが思い切り噴出するツアーの最終日になった。

アルカラ @ Zepp DiverCity
会場を見事ソールド・アウトさせたオーディエンスを前に、『名探偵コナン』のテーマ曲に乗って登場したアルカラの4人。稲村太佑(G./Vo.)はさっそく、履いてもいないストッキングをお色気たっぷりに脱ぎ捨てる素振りをみせたり、シャツの中に仕込んであったティッシュペーパーを一枚ずつ放り投げたりといった奇行を見せている。そして「DiverCity——!!」のシャウトと鮮烈な音出し一閃、繰り出されるのは新作から“名探偵ミスタ相棒はジョニー”だ。ハードボイルドな物語とハイ・ヴォルテージな音楽が手を取り合って笑いを誘うという、アルカラの最新パフォーマンスが牙を剥く。続く“藤壷のキミ”で稲村は、首からぶらさげたタンバリンを殴りつけるようにしながらエモーショナルな歌を届け、“おうさまと機関車”においても、コミカルなフレーズを散りばめながらストーリーテラーとしての本領を発揮していった。

アルカラ @ Zepp DiverCity
そして意外や意外、新作の中でも根幹を成していると思われたナンバー“むにむにの樹のおはなし”が、この序盤のうちに披露されてしまう。現れたバックドロップには異様な配色で彩られた巨木が佇み、奇想天外な楽曲展開でその物語が綴られる。歌詞に合わせて、バックドロップの木に花が咲き乱れる(照明効果によるサイケデリックな演出)も素晴らしかった。まさにアルカラ唯一無比の世界観。何とも奇妙な『むにむにの樹』は、無二無二の樹でもある。こんなハイライトを序盤に配置して、この後は一体どうするのだろうかと思った。

アルカラ @ Zepp DiverCity
でも、アルカラが抱えた膨大なアイデアに驚かされるのはこの後だったのだ。硬質な音響をたなびかせ、トリッキーな演奏の向こうに悩ましさが立ち上る“いびつな愛”に続いては、急転直下の情熱的ラテン・ロック“踊れやフリーダ”で4人のバイラオーラ(フラメンコ・ダンサー)が登場し艶やかに舞い踊る。アルカラの鋭利なコンビネーションに合わせてビシッとポーズも決めてくれた。そして下上貴弘(Ba.)がグルーヴィにアップライト・ベースを奏でる“夕暮れちゃちゃちゃ”では、なんとシークレット・ゲストとしてBIGMAMAの東出真緒が登場。稲村はギターをサポート・プレイヤーに任せ、東出とヴァイオリンの共演を披露する。更に“はとのさんぽ”では、ヴァイオリンのサポートとしてジェニも加わり、3人で弓を振りかざしながら華やかなハーモニーを放つのだった。

アルカラ @ Zepp DiverCity
「レディース&ジェントルメン! ボンジュール、ムッシュウ&セニョリータ! オブリガード、ありがとうございます!!」と滅茶苦茶に無国籍な挨拶が親切なのか面倒くさがりなのか稲村、「フレディー・マーキュリーの名言に、音楽は女性のようだ。理解しようとするだけ楽しくないだろ。というのがあります。Don't think. Don't think.楽しくいきましょう!!」と触れる者の思考を掻き回すだけ掻き回して、スウィンギン・グルーヴでかっ飛ばすパーティー・チューン“踊れや吸血鬼”へと向かっていった。そして“癇癪玉のお宮ちゃん”では、稲村や下上が田原和憲(G.)に接近したり離れたりするたびにギターの音量が上がったり下がったりするという遊び心を持ち込み、揉みくちゃの熱狂をフロアにもたらす“チクショー”に続いては、可愛い猫面魚キャラが一瞬ステージを横切ってからの“ネコとおさかな”である。音楽面もヴィジュアル面も、目が回るような情報量が注ぎ込まれる。で、これが楽しくて仕方ないのだ。

「どうしたんだいベイビー。そのため息の行く先は、空の上かい?……あ、これ、みんなが大好きな『ちびまる子ちゃん』の花輪くんの名言です。いかがお過ごしでしょうか、ロック界の奇行師アルカラです」と、ここから奔放極まりないトークを繰り広げまくる稲村。「ここまではゲストが女性ばっかりだったでしょ。ということはここからが男性が……」と、ジャニーズ系のグループ(とうの昔に解散したグループ多し)や御大・北島三郎の名を挙げ連ねる。

アルカラ @ Zepp DiverCity
そして“キャッチーを科学する”以降の終盤戦は、必殺ナンバーを数多く配した激流のような展開だ。その中でも“お花売りの少女”や“部屋のない鍵”といった、ヘヴィでエモーショナルな歌心をしっかり残してゆく。そして、“夢見る少女でいたい”では疋田武史(Dr.)による突き刺さるようなビートに追い立てられ、フラッシュライトが視界を奪う“半径30cmの中を知らない”で熱狂のピークに到達してみせる。確かに、意味ばかりを追っていては音楽の中の大切なものを見落としてしまうけれど、アルカラの歌によって描き出される情景には、確かな意味がある。『むにむにの樹』はそのためのおはなしだった。「25か所のツアーが、ほんま一瞬やったわ! みんなのお陰や、ありがとう!!」と繰り出される“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”への大歓声は、アルカラがもたらすそんな物語への歓声だったはずだ。まあ、稲村はこのときの自分の言葉が恥ずかしくなって、ステージ袖に引っ込んでから一人でウケていたらしいが。

アルカラ @ Zepp DiverCity
アンコールに至っても、ブルーのウィッグとワンピース姿になった稲村が喋りまくる。「最近、寝不足なんですよ」とドラマ『ウォーキング・デッド』を熱心に宣伝し、「ツアー初日になぞなぞを出したんですけど、その答えを言おうかどうか迷ってるんですよ。奥さんは奥さんでも、納得できない奥さんは?っていうなぞなぞやったんですけど」「やっぱり5年後に言います、っていう、リ・フジンでした!」といったマイペースぶりである。オーディエンスは「?????……!!!!!」みたいな、一瞬間を置くレスポンスだったので「2ヶ月あっためてきたんやぞ!」と煽っていた。「ドームでも武道館でも、順番逆やった……どんどん内輪ノリで行って、俺らの世界を作ろうよ!」という言葉には思わずグッとさせられる。

アルカラ @ Zepp DiverCity
そして、対バンしてきたバンドたちを、ツアー中のエピソードや悪態混じりに次々コールし、最後に披露されるナンバーは『むにむにの樹』のボーナス・トラックだ。TVゲームをテーマに歌った曲なので、演奏後にアルカラのマスコットキャラ=くだけねことメンバーが戦闘の寸劇を繰り広げ、4人が生き返ったところで今回のステージは幕となった。エンド・ロール風に今回のツアーの各地の模様がダイジェストで映し出されると、最後にはどどんと、この日の模様のDVD化が告知される。また、DVDリリースに際しての東名阪ツアー開催も発表されたので、詳しくはこちらのニュース記事(http://ro69.jp/news/detail/92705)をご覧ください。(小池宏和)

01 名探偵ミスタ相棒はジョニー
02 藤壷のキミ
03 おうさまと機関車
04 むにむにの樹のおはなし
05 いびつな愛
06 踊れやフリーダ
07 夕暮れちゃちゃちゃ
08 はとのさんぽ
09 踊れや吸血鬼
10 癇癪玉のお宮ちゃん
11 チクショー
12 ネコとおさかな
13 キャッチーを科学する
14 デカダントタウン
15 お花売りの少女
16 部屋のない鍵
17 涙腺
18 夢見る少女でいたい
19 半径30cmの中を知らない
20 ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
EN. 今日からあなたは市長さん(『むにむにの樹』ボーナストラック)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする