アリーナ・クラスの会場に織り交ぜて、小規模な劇場クラスの会場も回る「クンタズ・グルーヴ・セッションズ・ツアー」を終えたばかりのケンドリック・ラマーだが、ステージでのMCでは歴史的な名作とも絶賛された最新作『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の制作に至った経緯などを吐露することにもなった。
先週行われたニューヨークでのライヴはかなり観客との距離も近いものになり、ケンドリックは自身を一躍次世代の旗手へと引き上げた2012年の『グッド・キッド、マッド・シティー』がもたらした弊害について振り返ってみせている。ケンドリックは『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』はいろんな形で高く評価されて、それは嬉しいと表明しながら「でも、実際のところは、このアルバムを作っていくことはひとつのセラピーだったんだ」と明かしている。
「みんなにとってもそうかもしれないけど、俺にとってもね。というのも、『グッド・キッド、マッド・シティー』をリリースして半年も経たないうちに、俺の知っていた生活や俺の知っていた俺自身のあり方や自分の知っているつもりになっていたものすべてが変わってしまったんだ。その間中、世界中のハゲタカが自分の周りに群がってきて、俺がいかにすごいかって話を持ちかけてくるんだよ。俺はいわれたことを必死に信じようとするんだけど、俺は自分が育ったような地域での考え方が染み付いちゃってるから、これがなかなかできないんだな。いろいろ身軽に動き回れて、自分の好きなようなままでいたかったし。そもそも俺は地味なやつなんだよ」
その一方でオーディエンスへの感謝を次のように語っている。
「この盛り上がりは永遠に続けられるんじゃないかって思うね。みんなの顔をこうして見てるとさ。俺のファンのみんなは世界でも最も献身的なファンで、ニューヨークもそんなファンの代表例のひとつだよね。悪いけど、このまんま1日中でもこういう話は続けられるよ。たとえば、『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』。神様はさ、こんなとんでもないアルバムをわざわざチャート1位にまで引き上げてくれたんだよね、売れそうな仕掛けなんかまるでなかったのに。ラジオ向けのシングルもなにもなかったのに、このアルバムを最上段まで持って来てくれたんだよ」