【コラム:KEYTALK】最高傑作『PARADISE』の凄さを証明する3つの理由

『PARADISE』初回限定盤

全17曲という物量がオリジナルアルバムとして初めてなら、作詞・作曲を4人の完全分業体制で臨んだアルバムも初めて。結果、ものすごい曲だけがひたすら溢れ出すというKEYTALKのニューアルバム『PARADISE』。もう何度も繰り返して聴いているけれど、やっぱりこれは最高傑作だろう。ボリュームがボリュームということもあり、書きたいことは山ほどあるのだけれど、今回のコラムでは「『PARADISE』の凄さ=KEYTALKというバンドの凄さ」というテーマで進めてみたい。

①「現代のファブ・フォーであることの証明」
ロックを語る上で「ファブ・フォー(素晴らしい4人組)」と呼ばれたビートルズを引き合いに出すのは、偉大すぎてちょっとズルいところもあるのだけれど、あくまでもバンド表現の基準の置き所ということで受け止めてみてほしい。4人が4人ともソングライターとして実力を発揮できるということは、つまりそれ以前に、4人が4人とも人柄ごとリスナーとの間に信頼関係を築いていて、歌詞や曲を受け止めてもらう環境が整っているということだ。例えば、KEYTALKのライブで4人のキャラクターに接したことがある人なら、「全員ソングライター」と言われてもさほど驚きはしないのではないか。そういう活動をしてきた、という点がとても重要だ。

②「多様性を繋ぎ止めるコンビネーション」
ロマンと同じ分だけセンチメンタルな心情を引きずる義勝の歌詞とメロディ。笑顔の裏に潜むドライで批評的な視線が言葉として弾けまくる武正曲。バンドのダイナモとして爆発的な表現衝動をまっすぐに投げかけてくる八木。そして記憶の中の風景を呼び覚ましながら今このときのための情熱を掴み取ってくる巨匠。それぞれにソングライターとしてもキャラを確立している。リスナーとの信頼関係を築いてきたのと同様に、4人は互いの信頼関係の中でこのバランスが成立するのを待っていたのではないか。楽曲ごとに思いや表情は違えど、「この4人で演奏すればKEYTALKになる」という自信に満ち溢れているのだ。

③「無限の可能性を手にしてしまったKEYTALK」
今は1960年代ではなく2010年代だ。ビートルズと決定的に違う点はそこにある。KEYTALKは、「21世紀にこんなふうに楽しく、こんなふうに冒険的な作曲で、こんなふうにスリリングかつ高度な演奏のロックができる」という衝撃をもたらしたバンドだった。正しくロックバンドでありながら、誰よりも「ロックはこうでなければならない」という制約から自由だった。ソングライターとして刺激し合う4人は、これからもっともっと自由に、ロックバンドとしての表現を開拓し続けるだろう。『PARADISE』の17曲というボリュームは必然である。巨匠の“story”は今後のシングル曲としてストックしておかなくて大丈夫だったのか、とか、そんな外野(僕だけど)の余計な心配さえ吹き飛ばすエネルギーが、『PARADISE』には渦巻いている。(小池宏和)