星野源“Family Song”が”恋”の先を描く理由を『ANN』での本人のMV解説からひもとく

星野源が、8月16日(水)に発売する10thシングル“Family Song”のMVを公開、8月1日深夜の『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で解説した。


今回のMVは“SUN”、“時よ”、“恋”も手がけた関和亮が監督を務め、星野源がプロデュース。“Family Song”というタイトル通り、「どこかで見たことのある」家族が登場する。お母さん役の星野源に、お父さん役には“Family Song”が主題歌となっているドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ)で主演を務めている高畑充希、娘役に藤井隆、そこにバンドメンバーも加えた家族の姿が映されている。『サザエさん』的な世界観であるにも関わらず、年齢も性別もバラバラな一見違和感のある家族構成だ。しかし、ここに星野は「家族ってものがどんどん多様化していく中の曲のコンセプトっていうものをまず映像として示したかった」と語る。未来にこんな家族があったっておかしくなくて、「これからの家族像」を歌った歌詞の世界がこの賑やかな映像に表されている。

また、その『サザエさん』的な風貌をしている訳についても語られた。今回の曲は「60年代末~70年代頭のソウルミュージックっていうものを今に表現したい」という考えで制作されたもの。そして、1969年にアニメ放映が始まった国民的アニメ『サザエさん』のオープニング曲にはアレンジにソウルとモータウンの影響が感じられる。同時代性がそこにはあり、「俺達、日本人がそもそもモータウンの影響を日常として摂取してて、俺達の空間の中にすでにブラックミュージックがあるんだっていうことをすごく思ったんです」、と語られた。60年代~70年代のモータウンから影響を受けた“Family Song”のサウンドを映像で表すために『サザエさん』はうってつけのオマージュ作品だったわけだ。

「どこかで見たことのある家族」がまた見れて、それは歌詞で描かれているこの先の多様化した家族像をも表していて、サウンドのモチーフとなったモータウンを日本人の日常に同時代から溶け込ませていたアニメ。「すべて繋がるアイデア」を求めた結果が今回のMVになったということだ。単純に「奇をてらっている」わけでなく、理に適っているから信頼できる。

今回のシングルは5thシングル『ギャグ』からシングル曲やアルバムのリード曲で続いていたアップテンポなナンバーではなくゆったりとした曲調になっている。しかし、MVは多幸感溢れるダンサブルな作品になっている。ゆったりだからといってバラードではない、「楽しいミュージックビデオ」にしたかったため、星野自身の「リズムを感じるような体の動き」が映されている。

実際、今回のMVは以上のような繋がりの必然性を知らなくても何度も見たくなる作品になっている。イントロからくるりと浮かび上がるお母さんな星野源にはどうしても釘づけになってしまうし、「娘」の長岡亮介と共にギターを跳ね上げる間奏シーンやお下げを振り回し踊る藤井に音楽の楽しみ方を改めて思い起こさせられる。CDジャケット同様、アートディレクター吉田ユニの手によってピンクで染められた茶の間は、現実的でなくとも家族がそこに居る温かみが感じられ、とにかく幸せな夢を見ているような気持ちになる。知れば知るほど楽しめて、知らなくとも純粋に楽しめる。MV同様、星野源の曲にも通じる部分だ。

「過去をリスペクトした今」、決して真似事ではなく必ず未来に目を向けた作品を作り続けた結果、今作は“恋”のその先に進んだことを決定づけるMVとなっている。(菊智太亮)
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