開演と同時に、スクリーンには銀杏のライブで真剣に歌い、真剣に暴れ、真剣に頭がおかしくなっているファンたちの顔と声が溢れ返る。何しろ公演タイトルは「日本の銀杏好きの集まり」である。このステージに立つまでに物語があり過ぎるバンドなのだけれど、でもこうなのである。
「動画サイトで寝っ転がって観れる時代に、お金を払って、電車に乗ってタクシーに乗って、仕事を休んで来てくれるお客さんを前にして、俺に何が出来るでしょう。これしか出来ないんですよ。だから、やり続けますよ」。峯田はそんなふうに告げていた。
もちろん思い出は溢れてくるし、ゴイステや銀杏の元メンバー/元マネージャーらの名前を挙げて感謝の思いを口にしたりもした。オーディエンスは、メロディを強奪し自分だけの感情や記憶を勝手に上乗せするようにして、叫び歌う。でも、やっぱり今回のライブは、ドロドロのベタベタになりながら、未来を照らすライブだった。
峯田の熱量にがっちりと食らいつく一方で、豊かに丹念に歌を引き立てる時間を作り上げることもできるバンドメンバーがまた素晴らしい。一瞬で掻き消えてしまうはずのメロディと叫びが、終演後もずっと深い余韻を残している。
いろいろあったからこそ今を手に入れた銀杏の、超濃密な3時間だった。「今日のことは忘れないと思うよ。たぶんね」。峯田の言葉をそっくりそのまま、返してあげたい気持ちだ。(小池宏和)