いま聴くならこの6組! 2018年活躍が期待されるガールズ・ロックのニューカマーたち

ドリーム・ワイフ『ドリーム・ワイフ』
Goat Girl『Goat Girl』
Sorry『2 Down 2 Dance』
Whenyoung『Pretty Pure』
ペール・ウェーヴス『オール・ザ・シングス・アイ・ネヴァー・セッド』
Soccer Mommy『Clean』

今年2月のグラミー賞授賞式の結果を受けて、グラミーの会長(男)が「女性アーティストはもっと頑張らなくてはいけない」と放言して大炎上したことは記憶に新しい。ビヨンセは? アデルは? リアーナは? テイラーは? ガガは? カミラ・カベロSZAにケラーニにデュア・リパロードは? ビョークは??……と言い出すときりがないので止めておくけれど、女性アーティストが活躍しなかった年なんてないし、ましてや頑張ってなかったことなんて人類の歴史上ない。一体なにをもって女性アーティストは頑張っていない、活躍していないとこの人が思ったのかは、女性蔑視云々を通り越してもはや純粋に謎だったりする。


女性アーティストの活躍はヒップホップやR&B、狭義のポップ・ミュージックに留まらない。もちろんギター・ロックにおいてもそうだ。この2018年も新年の幕開けをLAが生んだ破天荒ガレージ・パンクス、スタークローラーの鮮烈なデビューと共に飾ったのを皮切りに、コートニー・バーネットハインズの待望の新作も待機しているし、ウルフ・アリスやスタークローラーがリスペクトしてやまないザ・ブリーダーズが10年ぶりの新作『オール・ナーヴ』(懐メロ感皆無の傑作!)をリリースするなど、「ガールズ・ロックの当たり年」と呼ぶべき活況を呈している。


ここではそんな2018年の活躍が期待されるガールズ・ロックのニューカマーを6組ご紹介することにしよう。

DREAM WIFE


まずご紹介するのは先月デビュー・アルバムをリリースした英ブライトン出身、現在はロンドンで活動中の4人組、ドリーム・ワイフ。彼女たちの魅力はスリーター・キニービキニ・キルら90年代のライオット・ガール勢ともしばしば比較される思いっきりノイジーなガレージ&パンクでありながら、同時にブロンディや80年代のマドンナを彷彿させるような思いっきりキッチュでカラフルなガーリー・ポップでもあるところ。パンクやロックンロールをクリシェとしてではなく、自然体でかき鳴らしながら熱を放射している、その潔さがポップネスに繋がっているとも言える。

ここでは国際女性デーに合わせて公開された、まさにガールズ・パワー炸裂! な「女子プロレス」をモチーフにした“F.U.U.”のミュージック・ビデオをどうぞ。


GOAT GIRL


続いては新世代ガールズ・バンドの真打ちとでも呼ぶべきバンド、ゴート・ガール。スタークローラーを見出したラフ・トレードより、待望のデビュー・アルバム『ゴート・ガール』が4月6日にいよいよリリースされる。

ラフトレと言えばかのザ・ストロークスザ・リバティーンズも発掘したことで知られているが、この名門レーベルのロックンロールに対する嗅覚は今なお健在。そんなゴート・ガールのサウンドは、ごりっとハードなパンクをベースに、そこにゴス風のボーカルが乗り、かと思えばフォークやパブ・ロック、ボードビルまでごっちゃになったインタールードや、ダブやグライムの要素も含んだポエトリー・リーディング調のナンバーまで含む、極めてエクレクティックなシロモノ。彼女たち曰くデビュー・アルバムは自分たちの街「ロンドン」が大きなモチーフとなっているそうだが、まさにロンドンのようなマルチカルチュアルな都会の雑踏が強烈に似合うシティ・ミュージックなのだ。

ちなみに彼女たちはロンドンの中でも南部を拠点としているバンドで、現在サウス・ロンドンはこのゴート・ガールやファット・ホワイト・ファミリー、シェイムらを筆頭に、アンダーグラウンドなパンク・シーンが再び熱く盛り上がっていることでも話題だ。


SORRY


そんなサウス・ロンドン・シーンにノース・ロンドンから進出し、頭角を現しつつあるバンドがSorryだ。紅一点のシンガーAsha Lorenz率いる4ピース編成、グランジからローファイまで90年代的USオルタナティヴを広く消化したそのサウンドは、現在ロンドンの「北」の代表格と呼ぶべきウルフ・アリスと共通したクールネスを感じさせる。

Sorryはかのアークティック・モンキーズを要するレーベル「Domino Records」と契約を結び、シングルをリリース中。現時点では未知数だけれども、今から注目しておいて間違いないバンドです。

ここでは現時点での最新シングル“2 Down 2 Dance”のミュージック・ビデオを。


WHENYOUNG


ウルフ・アリスのエリー・ロウゼルは「ロンドンの音楽シーンは今すごくいい感じで、お互いにライブを観に行ったり一緒に遊んだりしている」と言っていたが、前述のバンドたちも互いにリスペクトし合っている仲。そんなロンドンのバンド・シーンに夢を賭けてダブリンからやってきた3ピースがWhenyoungで、彼女たちはドリーム・ワイフがレコメンするニューカマーでもある。

スーパーフードとツアーを回っていたという経歴からも伺えるけれど、このバンドのサウンドはずばりポップ、もっと身も蓋もなく言えばブリットポップ! フロント・ウーマンAoife Powerの甘く舌っ足らずなファニー・ボーカルやリズミカルなギター・リフ、そして掛け合いのコーラスの隅々に至るまでフックの嵐、ギタポ・ラバーの急所を狙い撃ちすること請け合いです。


PALE WAVES


SorryにしろWhenyoungにしろまだまだこれからのバンドだけれど、そんな彼女たちとは対照的に既に大ブレイク中のニューカマーがマンチェスター出身の男女混合バンド、ペール・ウェーヴスだ。フロント・ウーマン、ヘザー・バロン・グレイシーのアイライナーで黒々と縁取られた瞳&真っ黒な唇もインパクト大で、そのいかにも暗黒ニヒリスティックなゴス・ロックをやっていそうな見た目とは裏腹に、彼女たちのサウンドはむしろ風通しがよく超絶キャッチーなニューウェイブ・ポップであるというのがすごい。でもそれも、デビュー・シングル“There's A Honey”のプロデューサーがThe 1975のマシューとジョージだったと聞けば納得だろう。

各種クリティック・ポールで有力新人候補に軒並み名を連ね、デビューEP『オール・ザ・シングス・アイ・ネヴァー・セッド』を2月にリリースしたのみで、サマーソニックへの出演も早くも決定。まさにThe 1975が切り開いた2010年代UKエレポップ・ロックの道をひた走り、成功を掴むことが約束されたバンドなのだ。


SOCCER MOMMY


さて、ここまではUKのガールズ・ロックにフォーカスしてきたが、最後はナッシュビル出身のSoccer Mommyをご紹介。

Soccer Mommyは弱冠20歳のシンガー・ソングライター、Sophie Allisonのソロ・プロジェクトで、これまたここまでバンドに特化して紹介してきた流れとは異質。それでもどうしても彼女をここでプッシュしたいのは、今月頭にリリースされたフル・デビュー・アルバム『Clean』があまりにも素晴らしかったから。ナッシュビルというルーツもあってか、そのサウンドの根底にあるのは飾り気のない素描的インディ・フォークなのだが、彼女の鼻歌レベルで無作為に生みだされた旋律が、次々とクリアなポップ・ソングとしての輪郭を獲得していくミラクル、『Clean』はそのドキュメントとなっている作品だ。このアルバムを聴けば、彼女が自身の二大アイドルとしてテイラー・スウィフトアヴリル・ラヴィーンの名前を挙げているのも(ここら辺がまさに90年代後半生まれのリアル!)納得できてしまう。


しかし、『Clean』は同時にアリエル・ピンクを彷彿させるローファイなドリーム・ポップ作でもあり、一度は獲得したはずのポップ・ソングの輪郭を徐々に歪めながら、淡いサイケの揺らぐベッドルームに引きこもっていくチルウェイヴ作でもあるという、二面性がさらに素晴らしい。そう、カントリー少女だったテイラーが辿ったような劇的メジャー・ポップスへの道も、インディ・ロックの高踏派としての道も、Soccer Mommyの前には等しく開けている、そんな途方も無い可能性を感じさせる20歳なのだ。(粉川しの)