HEY-SMITHが初テレビで“Not A TV Show”を「生」演奏――痛快でかっこよすぎた一部始終

番組冒頭のナレーションで「“まさかの”HEY-SMITHが登場」と紹介され、出演前には「これは衝撃の事件です!」の煽り。それもそのはず、徹底した現場主義、ライブハウス主義を貫き、年間150本以上ものライブで全国を駆け回るインディーズバンド・HEY-SMITHの地上波TV初出演だ。
予告された時点で、たしかに「まさか!」と思ったが、演奏曲が“Not A TV Show”と知った時、そのヘイスミらしさにニヤリとしたのは私だけではないはず。発売したばかりのニューアルバムからとはいえ、テレビでの音楽番組を皮肉るような楽曲を選んだ彼ら。そして、それを許可した『Love music』スタッフにも感謝したい。

そして《You are okay with lip sync songs/Then it’s okay with backing tracks/Just go away(口パクの音源で満足かい?/ならアテ振りでも大丈夫だろ?/どっかに行ってくれ(意訳)》という歌詞どおり、猪狩秀平は「ただ単にアテぶりとか口パクをやりたくなかっただけで。全部生でやらせてくれるって言ってもらえたから、出演することに決めました」と宣言。「こういうテレビでライブハウスの熱気を持ってこれて良かったかな」(イイカワケン)、「ありのままの私を受け止めてって感じで」(かなす)、「速さこそすべてですね、この曲に関しては」(Task-n)、「曲がイエイ!って感じなんで、イエイ!って感じで」(YUJI)と、メンバーそれぞれが思いを口にすると、ついに「生」演奏がスタート。
そこからテレビの中にいたのは、いつものヘイスミだった(もちろん満は上半身裸です)。なんと音源よりも速い遠慮なしのスピード感で、全身を使って全力で音を鳴らし、6人一体となって歌い叫ぶパンクロック。そこで《You call this“TV show”?》、《This is my rock show, yeah》と歌われる痛快さ。「go faraway!!」のシャウトもキレキレ。思わず、もう終わり? もっと見たい、もっと長い曲だったら……!と願ってしまうほどだったけれど、この潔さが彼らの魂だ。

テレビに出るために音楽を続けてきたわけではないし、テレビに出たからバンドが変わるわけではない。彼らにしてみれば、自分たちの主義・主張を曲げずに辿りついた、数多のステージのうちのひとつだっただろう。たった1分48秒のライブハウス。でもこの一瞬が、誰かの人生を変えたかもしれないと思うと胸が躍る。初めてHEY-SMITHの音楽、この衝動に触れた人がいたならば、この続きをぜひニューアルバム『Life In The Sun』で、そして「ライブ」で体験してほしい。(後藤寛子)